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「良く判んね〜んだけどさ……」
魔法少女オタク仲間である中島と一緒に下校している途中、中島がそう言い出した。
「俺達と同じ学年の府川さんと土屋さんがサンシャイン&マリンの正体なのは、いいとしてだ……」
「お前、迂闊に口にするな……」
「見りゃ判るだろ。最初からバレバレだよ」
「でも、認識阻害魔法が……」
「無い。少なくとも、あの2人には使えない。最大限譲歩しても、魔法少女モノのエロゲーみたいに、あの2人が認識阻害魔法を使えたとしても、俺達には効いてない」
「フリぐらいしろよッ‼」
「お前は、女のアイドルは男と付き合ったりしないし、男のアイドルは女のファンをレ○プしたりしない、と思い込んでるアイドル・オタクかッ⁉」
「1つ目はともかく、2つ目は、この時代、絶対とは言えんが、ほとんど無い。最近のエロゲーの定番なだけで」
「あ……そうだったな……」
俺達が生まれる遥か前の二〇〇一年。まだアメリカ合衆国と呼ばれていた北米連邦のニューヨークで起きたテロ……それで「異能力者」の存在が一般人の知る所となった。
中でも、一番驚いたのは……当の異能力者達だったらしい。
「魔法使い」系の総人口は、当の「魔法使い」達が思っていたより、下手したら2〜3桁多く……日本では「妖怪系」と呼ばれる事が多い「古代種族系」も同じような状態で、獣化能力者に超能力者に……以下同文だ。未だに都市伝説なのは、「魔法に似ているが、通常の魔法より遥かに強力な力が使える」と言われてる「神様系」ぐらいだ。
その結果起きた事は……例えば、電車の中で中年男が女子高生に痴漢をしたとする……では、その女子高生が中年男を科学的な証拠を何1つ残す事なく殺す事が出来る「異能力」を持っていたとしたら……?
「じゃあ、プロレスに台本が無いと思ってるプロレス・ファン……」
「プロレスなんて、ネット上に転がってる昔の話しか知らない。プロレス団体って、今でも何か残ってんのか?」
「えっと……アマチュア・プロレス団体が……日本中に……あれ? Wikiで調べたら、変な事書いてある」
「何だ?」
「今、日本で活動してるプロレス団体が一〇個ぐらいなのに……選手は三〇人居ない」
「えっ? 1つの団体に所属してる選手が……平均3人? 何だ、そりゃ? あと『アマチュア・プロレス』って何だよ?……おい携帯電話見せてみ……何だよ、この一番上の『編集合戦により更新はロックされています』って?」
「さ……さあ? 何の話だったっけ?」
「いや、俺が話した昨日の事について、お前が何か変だとか言い出して……」
「ああ、そうだ。何で、怪人フッ飛すのに、怪人のコスチュームに火薬仕込む必要が有るんだ?」
「だからさ、本当の魔法を使って攻撃すると危険……」
「怪人と魔法少女が馴れ合いのショーをやってる事ぐらい俺だって知ってるよ。でも、攻撃魔法を使うと危険だつ〜けど……代りに火薬使って人が死んでんだろ」
「獣人だよ」
「でも、その獣人の戸籍と住民票は有る可能性が高い。下手したら税金や社会保険料だって、ちゃんと納めてるかも知れね〜んだぞ。日本の法律では、れっきとした人権が有る人間だ」
「おい、補修にちゃんと出てるお前が何言ってるんだ?」
「はぁ?」
「社会の授業で習っただろ。戸籍制度は廃止されたって。ほら、一〇年前の富士の噴火で失なわれた分が、ほんの一部しか復元出来なかったせいで、なし崩し的に新制度に移行したって……」
「代りの制度も『戸籍』って呼ばれてんだよ」
「誰が呼んでる?」
「ネット上のインフルエンサー」
「なら仕方ないか……で、火薬使ってた事の何が変なんだ?」
「あのさ……プロレスだったら、八百長だろうが台本が有ろうが……それでも、俺達がプロレスラーに敵わないのは明らかだろ」
「それがどうした?」
「魔法少女って本当に魔法が使えるのか?」




