(20)
更に翌日の昼頃、Maeveに土屋からの伝言が入っていた。
補修授業の後に、話したい事が有るらしい。
「何だよ?」
待ち合わせの場所は……有りがちにも程が有る体育館裏。
「杏の親類が見付かってさ……事務所の方で、安全の為に、杏と私を、そこに預ける話が出たんだけどさ……」
えっ?
喜ぶべきか……泣くべきか……。
府川さんの安全は確保されるって事か……。ついでに、土屋の安全も……。
でも、府川さんとは当分会えない。
ああ……この間の……Q大の大学院生の家か……府川さんの従兄弟とか言う……。
「でも……問題が1つ。これ、見覚え有るでしょ……」
そう言いながら、土屋は携帯電話の画面を俺に見せ……。
えっ?
えっ? えっ? えっ?
おい、これッ‼
気が弱そうな恐竜の顔になってるフード。
フードのテッペンから尻尾にかけて……タテガミのような飾り。
コスは迷彩模様。
顔には目の部分が小型カメラになってる……「横からだと恐竜の顔に見えない事もない」って感じのマスク。ご丁寧に肉食恐竜の口に見えるように、両耳の辺りから顎にかけて牙みたいな飾りが何個も付いてる。
頬にはガスマスクらしい部品。
胸と手足には防具……。
「こ……これ……?」
「似てるよね。この前、現われた連中に……。こいつは、去年の終りに久留米に現われた新顔の『正義の味方』。技量はともかくパワーは無茶苦茶だって事以外は、ほとんど判ってない『魔法使い』系。そして、見付かった杏の親類が住んでるのも久留米」
ああああ……おい……まさか……。
「よりにもよって、逃げようとした先が、私達に喧嘩を売った連中の御膝下って可能性が高い訳。はい、逃亡先候補その1が、のっけからNG」
「ちょ……ちょっと待ってよ。『正義の味方』の久留米チームって確か……」
「最悪も最悪だよ……。下手したら……私達……日本各地の『正義の味方』の中でも九州最凶最悪の連中に喧嘩売られた可能性が有るんだよ……」
いや、日本最凶最悪って話も有るよ。少しも慰めになってないけど。
「そ……その割には……その……」
「ヤケになって、開き直るしかないでしょ、こんな状況ッ‼」
九州三大暴力団の1つ「安徳ホールディングス」……それを去年の一二月に叩き潰したばかりの奴ら……そんな無茶苦茶な連中が何で、同じ福岡県とは言え、遠く離れた北九州の「魔法少女」を狙ってんだよッ⁉




