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「仕方ないな。あたしが送ってくから、今日は帰って」

 2人のマネージャーらしいデブの女が、1階まで下りてきて、そう言い出した。

「すいません……じゃあ……小倉駅まで……」

 気の弱そうな大学院生が、そう言った。

「小倉駅? 門司駅じゃ駄目?」

「すいません、小倉からの電車の方が多いんで」

「どこまで帰る気?」

「博多方面なので……」

「ああ……そう……。君達は?」

「あ……あの……自転車で……」

「自転車1台ぐらいなら積める。あ、山口さんさ、この高校生、どっちか片方、軽トラで送ってもらえる?」

「は……はい……。じゃあ、ちょっと着替えてきます」

 そう言って、ガタイのいいスキンヘッドは自分の部屋に入って行った。

「じゃ、あたし、車取って来る」

 デブの女が、そう言って、どっかに行って数分後……。

 ああ……たしかに……自転車1台ぐらいなら、積める……そんな感じの黒塗りのSUVがやって来た。

「じゃ、自転車は、後ろに積んで。誰か、自転車、積むの手伝ってあげて」

「は〜い」

「は〜い」

 アパートから出て来た男の残り2人が、そう返事。

 とりあえず、俺と大学院生は、そのSUVに乗り込み……。

「家、どこ?」

「え……えっと……その……」

 あれ?

 何だ?

 何で、俺が住所を告げた途端に、この大学院生、「あ、マズい」って表情(かお)になったんだ?

「あのさ……君、あの2人が『魔法少女』だって、知ってるんだよね?」

 デブの女は、車を運転しながら、そう訊いてきた。

「は……はい……」

「『魔法少女』ってのが、あくまで、芸能興業だってのも知ってるよね?」

「え……え……ええ……」

「あのさ……ウチは違うよ。あくまで、同業他社さんの話だけど……気を付けてね」

「な……何を……ですか?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「えっ?」

 えっ?

 えっ? えっ? えっ? えっ?

 えええええッ?

「『魔法少女』のファンが、『魔法少女』の自宅を突き止めて、そこまで押し掛けたりしたら……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 あ……あ……そ……そんな……まさか……。

 そして、横に居た大学院生が……携帯電話(ブンコPhone)を見せる。

 画面にはメモ帳アプリが表示されてて……。

『何で、自分の家の住所教えたの? 絶対にマズいよ』

 いや……今さら、言われても。

「あ、そうだ……杏ちゃんが、彼女のお父さんの消息を知ってたら、僕の方に報せてもらえませんか? えっと、大学のメアドの方に……」

 大学院生は、そんな事をデブ女に言った。う……こいつ、結構、芝居が巧いのかも……。

「杏じゃなくて、あの子のお父さん? どう云う事?」

「あの……僕の父が癌で……持ってあと1〜2年みたいで……その……弟が……って、杏ちゃんの父親なんですけど、もし生きてたら会いたがってるんです。……若い頃に、酷い兄弟喧嘩して、それ以来、音信不通になったんで、死ぬ前に謝りたいって」

 おい、結構、ヘビーな理由が有ったのかよ。

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