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甘い人生

だが、2人が犯した最も重い罪を罰する事は出来なかった。

その罪とは「馬鹿だった事」だ。

とは言え、陪審員が死刑の評決を出すまでに必要だった時間は、たった一四分だけだった。

マイケル・ベイ監督「ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金」より


 多分、これは、プロレス好きを怒らせるようなニュアンスでの「プロレス」なんだろう。

 それでも、俺達に夢を与えてくれる。

 ほら……近くて見てる小さい女の子も……。

「パパ〜、ママ〜、つまんないよ〜。もう行こう」

「あ……あ……ああ……えっと……」

「あんまり、こういうの好きじゃないの?」

「好きじゃない。あたし、大きくなったら『魔法少女』じゃなくて『正義の味方』になりたぁ〜い」

 な……何だと、この糞メスガキっ‼「正義の味方」って、法律も警察も権力もガン無視する「正義の暴走」をやらかす暴徒どもじゃないかッ‼

 つい、1ヶ月前ぐらいにも……久留米と大牟田の警察署が、あいつらのせいで、続けて爆破されただろッ‼

「困ったもんだな……」

()な時代になったな……」

「その齢で、んなセリフ、口にするか?」

 糞メスガキの暴言に、そうコメントしたのは……俺と、同じか少し下ぐらいの女の子と、二〇後半から三〇前半ぐらいに見える女。

 母娘(おやこ)にしては齢が近過ぎ、姉妹にしては、齢が離れ過ぎてる……どういう関係なのか、よく判らない2人連れ……。

「サンシャイン・ブラストっ‼」

 俺の推し魔法少女であるスカーレット・サンシャインが、そう叫んで、魔法のステッキを獣人系の怪人に向けると……。

 ブ〜……。

 よりにもよって、その時、携帯電話(ブンコPhone)に着信音。

 クラスメイトの中島(なかじま)からMaeve(メッセージ・アプリ)に連絡が来てた。

『ごめん、補修で行けないんで、写真撮っといて』

『あと、担任の福田センセが「補修への参加が任意だってのは表向きだからな」って、お前に伝えとけってさ』

 おい、ここ写真や動画の撮影NGなんだよ。

 ……と返信しようとした時……。

 キ〜ン……。

 えっ?

 何?

 何が起きた?

 とんでもない轟音で……耳が聞こえな……えっ?

 居ない……。

 俺が混乱してたのは、ほんの三〇秒足らずの間だったのに……スカーレット・サンシャインも、その相棒のコバルト・マリンも……怪人達も……どこかに……。

 あ……。

 ぶすぶすぶす……。

 さっきの獣人系の怪人は……このイベントが行なわれてた公園の木の根本に横たわり……その胸から黒い煙が立ち上っていた。

 少し前まで、怪人が居た場所から……4〜5mは離れてる。

 どぉんッ‼

 木が倒れる轟音で……俺は自分の聴力が回復した事を……えっ? でも、何が……どうなってんの……?

 あの、そこそこの太さの木を、へし折るぐらいのスピードで、あの獣人は木に激突した……えっ? えっ? えっ?

「おい、このイベントの運営誰だ? すぐに責任者を呼んでこい」

 ブッ倒れてる獣人の周囲には、2人の魔法少女と、そして、他の怪人達、ついでに、さっきの女2人連れが駆け寄っていた。

 そして、女2人連れの齢下の方が首筋に手を当て、齢上の方が手首に指を当て……続いて、目を指で開いて、俺が幼稚園ぐらいの頃にTVで放送されてた子供向けアニメに出て来た恐竜のキーホルダーを取り出す。

 その小さな恐竜の口がパカッと開くと、口の中にLEDライトが有るらしく、光が放たれる。その光を獣人の目に当て……そして、数秒後……。

「目に光を当てても反応なし」

「あと、瞳孔の散大を確認」

 そう言って、同時に首を横に振った。

「いくら何でも火薬の使い過ぎだろ、これ? ちゃんと事前にテストしたのか?」

 何故か……何の感情も感じられない口調だった。

「おい、何の嫌味だ?」

「姉さん……自意識過剰過ぎだ」

「あ……あの……村山さん、大丈夫なんですか?」

(あん)、本名、言っちゃ駄目ッ‼」

愛莉(あいり)ちゃんも、今、あたしの本名言ったッ‼」

「救急車は急ぎじゃなくていいぞ。その代り、警察はすぐに呼んだ方がいいな。あと、こいつの家族の連絡先を知ってるなら、すぐに連絡すべきだな。ついでに、業務上過失致死に強い弁護士事務所にも」

「えっ?」

「えっ? 本気で言ってんのか?『魔法使い』系って、『気配を探る』系の魔法で、その手の事は、すぐ判るんじゃないのか?」

「え? え? え? な……何の事?」

「……だから……もう()()()だよ……」

 魔法少女や怪人達の慌てぶりとは対照的な……淡々とした口調だった。

「いや、ここが日本で良かったな。過失致死で済む。北米連邦(アメリカ)UK(イギリス)あたりだったら重過失で2級殺人だ」

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