14.雨上がりに会おう。
「支えて!」石井警官が大声で叫んだ。「魚の矢の数は限られている、もう少し耐えれば私たちは生き延びる!」
誰もが返事する間もなく、再び悲鳴が聞こえた。
振り返ると、なんと玲だった。
彼女は青木悦子ほど運が良くなく、貫通した魚の矢が彼女の手のひらを突き刺していた。
玲は一瞬力を失い、目の前の机も飛んできた魚の矢に押されてぐらぐらと揺れた。
「気をつけて!」
直樹健一は歯を食いしばり、玲の目の前の机を掴もうと伸ばした。
その瞬間、一本の魚の矢が隙間から飛び込み、市川秋人の肩を貫いた。
市川秋人は痛みのあまり悲鳴を上げたが、手は依然として机をしっかりと掴んでいた。
「慌てないで!」
石井警官は市川秋人を支え、その後両手を広げて彼の机の片側を支えた。
直樹健も即座に行動し、玲のために机を支えた。
幸いなことに、この二人は非常に力が強く、全体の陣形は再び安定してきた。
衝突音が次第に小さくなるにつれ、皆はこの陣形がどれほど合理的であるかを理解し始めた。
もし石井警官と中野医師が考えたように、机をずらして持つのであれば、机と魚の矢は垂直になり、非常に貫通されやすくなる。
今の「雨後の春筍」の形状は、五方向からの魚の矢と机の接触面を斜面に変え、魚の矢の貫通力を大幅に低下させた。
特に真上から飛んできた魚の矢は、現在その円錐形の特性によって進行方向が変わっていた。
しばらくして、机の外では完全に静かになった。
「終わったのか?」市川秋人は歯を食いしばりながら尋ねた。
「もう一分待って。」夏彦が答えた。
皆は再び机を持ち上げて静かに一分待った。外では本当に動きがなくなっていた。
直樹健一は慎重に一つの隙間を開けて外を覗いた。
「うわ……」彼は瞬時に目の前の光景に驚愕した。
皆もゆっくりと机を移動させ、地面や机の上に魚の矢がほぼ刺さっているのを見た。
地面には二体の遺体があり、見るに堪えない様子で、まるで二匹のハリネズミのように針で覆われていた。
すべての魚の矢には紐がつながっており、その紐の反対側は壁の穴に接続されていて、室内は無惨な状態だった。
中野医師は即座に袖をまくり上げ、市川秋人の側に駆け寄った。
彼の状況は深刻で、魚の矢が肩を貫いており、すぐに処置が必要だった。
市川秋人はゆっくりと座り込み、苦笑しながら言った。「さっき、自分がそんなに運が悪いとは思っていなかったのに、本当に当たるとは思わなかった……」
玲は非常に申し訳なく思い、急いで市川秋人に謝った。
しかし、皆はこれが玲の問題ではないことを知っていた。彼女も魚の矢で手のひらを刺されていたのだ。
「おい、かわいい子、こっちに来て。」直樹健一は手を振り、「包帯を巻いてあげるよ。」と言った。
「え?」玲は一瞬驚いた。「あなた、包帯が巻けるの?」
「ちょっとだけできるよ。」
直樹健一は死んだ山羊の頭から一条のスーツの布を引き裂き、それを二つに分けた。
一条が玲の腕にしっかりと巻かれて止血し、もう一条は傷口に丁寧に巻かれた。
「俺、昔は街でよく怪我をしたから、自分で包帯の巻き方を学んだんだ。」直樹健が言った。
玲は微かにうなずき、言葉はなかった。
ここに来てから、皆はめったにない静けさを得た。まるで死の影から一時的に逃れたかのようだった。
しかし、周囲にはまだドアが現れず、この忌まわしい部屋は彼らをここに閉じ込め続けていた。
ここは一体何の場所なのか?
部屋の外には何があるのか?
わずか一分ほどで、中野医師の方向からため息が聞こえた。
夏彦は振り返ると、市川秋人の傷の手当てをしている中野医師が困惑した表情を浮かべているのを見た。
「どうした?」石井警官が尋ねた。「怪我は重いのか?」
「怪我自体は重くはない。」中野医師は首を振った。「ただ、魚の矢を抜くことができないんだ。」
皆が前に寄り集まり、問題が確かに厄介であることに気づいた。
魚の矢の先端は返しになっていて、引き抜くと傷者に更なる損傷を与えてしまう。
さらに、魚の矢の尾部には紐がつながっていた。
今の市川秋人は、射られた魚のように、どこへ行こうとこの紐にしっかりと引かれていた。
「紐を切断して、前から魚の矢を抜くしかない。」中野医師が顔を上げて言った。「でも、手元には刃物がない。」
市川秋人は唇が少し白くなり、肩甲骨を貫通している魚の矢が彼を苦しめていた。
「他の魚の矢を使えばいい。」石井警官が即断した。「魚の矢は尖っているが、刃物として使える。」
「それしかないな。」中野医師も頷いた。「作家、最もリラックスできる姿勢で横になってくれ。君の背中の紐を切る必要があるから、急がずにゆっくりやろう。前の魚の矢に気を付けて、二次的な傷を負わないように。」
市川秋人は頷き、身体を難しく動かし始めた。
夏彦はこの光景に違和感を覚えていた。
ゆっくりやる?
本当にこの状況でそんな時間があるのか?
彼は床に散らばる紐を見て、不吉な予感が頭をよぎった。
もし推測が正しければ、彼らは依然として時間との闘いをしている。
「ゆっくりなんかできない!」夏彦は突然口を開いた。「すぐに魚の矢を抜いてやれ!」
彼は医者の隣に駆け寄り、一顔真剣に市川秋人に言った。「少し我慢して、今すぐに魚の矢を抜くから!」
市川秋人は少し戸惑ったが、拒むことはなかった。
「何をしているんだ?!」中野医師は不機嫌に夏彦を押しのけた。「君がそうすると、彼の傷が悪化するだろう!」
「時間がない!このままモタモタしていると、彼は本当に死んでしまう!」夏彦は中野医師を押しのけ、背中の魚の矢を一気に掴んだ。
悲鳴が上がった。
返しのついた魚の矢は貫通するのは容易だが、取り出すのは非常に難しい。
「おい!」石井警官も駆け寄り、夏彦を引き剥がして怒鳴った。「お前は人を殺すつもりか?」
夏彦は二度も妨げられ、顔色が悪くなった。
「彼を救いたい気持ちはわかるが、時間がないんだ!」
言い終わる前に、周囲で鎖の音が響き始め、何か巨大な仕掛けが再び作動したかのようだった。
続いて聞こえたのは、市川秋人の心の底からの悲鳴だった。
皆はようやく我に返り、全ての魚の矢が紐の引っ張りによってゆっくりと引き戻されているのを見た。
地面の市川秋人は、その巨大な力に引きずられていた。
夏彦はとっくにそれに気づいていた。魚の矢の紐は単なる飾りではなく、彼らはいずれ魚の矢を引き戻してしまうのだ。
皆は慌てて市川秋人の後を追い、石井警官は紐を引き止めようとしたが、その黒い穴の間の巨大な力には全く太刀打ちできなかった。
地面に刺さった魚の矢がいっぱいの机は次第に魚の矢に引き裂かれ、後退していった。
この木板を引き裂く力は、素手で対抗できるものではない。
市川秋人は痛みで苦しみながらも、もう一つの問題に気づいた。
もし自分が壁まで引きずられ、魚の矢から逃れられなかった場合、全身が壁に打ち付けられ、死を待つことになってしまう。
そう思った彼は、痛みに耐えながら立ち上がり、再び夏彦を掴み、一言一言をゆっくりと発音した。「魚の矢を今すぐに取ってくれ!今すぐだ!」




