015 もう1人のユニークスキル持ち
Cランクダンジョン【蜥蜴の巣穴】。
交易都市トレードヘブンから程近くにあるその場所に、ギルドからの指名依頼を受けた一組の冒険者パーティー【黎明の守護者】が存在していた。
先頭を歩くのは、リーダーである剣士のアルト。
そこに続くのが戦士のガレン、聖女のシエラ、賢者のセドリック。
そして最後にもう1人――彼らの最後尾には、血のような深紅の髪と翡翠の瞳を持つ少女がいた。
「クリム、ついてこれているか?」
アルトの問いに、クリムと呼ばれた少女はこくりと頷く。
「はい! 大丈夫です、アルトさん!」
「そうか、だったらいい。ただ本当に疲れた時は早く言えよ、お前は大切な仲間なんだから」
「分かりました!」
自分を気遣ってくれるアルトに対し、クリムは心から尊敬の念を抱く。
そこでふと、彼女は自分のステータスを確認した。
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クリム 16歳 レベル:94
称号:なし
HP:940/940 MP:286/286
攻撃力:200
防御力:200
知 力:220
敏捷性:170
幸 運:150
SP:0
ユニークスキル:【血紋操使】
通常スキル:なし
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【血紋操使】
・ユニークスキル
・MPを消費することで、自身の血液を自由自在に操ることができる。
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(こんなステータスの私が【黎明の守護者】に入れてもらえるなんて、ほとんど奇跡だよね)
そんなことを考えながら、クリムは今日に至るまでの出来事を振り返り始めた。
もともと、クリムは孤児だった。
身寄りのない彼女がこの世界で生きるための方法は限られている。
クリムが実力主義と言われる冒険者を志したのは、極めて自然な流れだった。
そして運命の2年前。
神からステータスが与えられる信託の日、クリムは奇跡的にユニークスキル【血紋操使】に目覚めた。
ユニークスキルの多くは通常のスキルに比べて非常に強力であり、クリム自身、冒険者としての将来が約束されたのだと歓喜した。
しかし、現実は非情だった。
ユニークスキル【血紋操使】はいわゆる外れスキルだったのだ。
自分の血液を操れるという文言だけ見れば、確かに強力なスキルに見えるかもしれない。
しかし実際は違った。僅かな血液を操るだけでも大量のMPを消費することに加え、自身の血液を使用していることからスキル発動後は貧血に襲われる。
さらにはこれだけのデメリットがありながら、威力もその辺りの初級魔法と大して変わりないという有様だった。
冒険者として成功の道が断たれ、クリムは絶望した。
――――しかし神は、そんな彼女を見捨ててはいなかった。
なんと、当時からトレードヘブンで名を轟かせていたパーティー【黎明の守護者】のリーダーであるアルトが、直々にクリムを勧誘してくれたからだ。
その瞬間、クリムの運命は大きく変わった。
有力パーティーの荷物持ちを務めることによって生活が保障されるばかりか、アルトたちはクリムのレベル上げにも付き合ってくれた。
そのおかげで、才能がない彼女でもたった2年で94レベルまで到達することができたのだ。
クリムは尋ねた。
どうしてこんな自分に対し、ここまで親切にしてくれるのか。
その問いに対し、アルトは笑みを浮かべて言った。
『昔、このパーティーには他にもユニークスキル持ちがいたんだ。残念ながら、彼はもう冒険者を辞めてしまったけれど……彼がいなくなった直後にクリムと出会えたのは、まさに運命――神の思し召しだと思ってね。君のような若い才能を育てることも、俺たち先輩冒険者の役目なんだ』
『第二章 復讐の時』編、本編開始となります。
【黎明の守護者】パートからの始まりにはなりますが、先の展開に期待しながらどうぞお楽しみください!
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