コンビニ
初投稿です。温かい目で見ていただければ幸いです。
今日も残業して、いつも通りコンビニ飯を買って帰る。外食でもいいが高くついてしまう。残業代がもらえれば気にしない程度に金が貯まっているだろうが、生憎サービス残業だ。金はない。
もう店員の顔をそこそこ覚えるくらいにはこのコンビニに来ている。我ながら情けない・・・。自炊はしたいが、そんな体力はないし買う方が効率的だ。コンビニだからやや高いが、近くのスーパーはこんな時間までやってはいないから致し方なし。
今日もおにぎりかコンビニ弁当を買うことにする。コンビニおにぎりの米には食欲を無くすほど保存料がかけられていて体に良くないと聞くが、こんな生活をしているんだ。今更健康なんて知ったことではない。毎食カップラーメンを食べていないだけましだ。
そう考えながらふとカップラーメンの陳列棚を見ると、女子高生がしゃがんでいるのが見えた。よく見るとその格好は、ブレザーにカーディガンという暑苦しい格好だ。だというのにスカートは少し短くしているように見える。あの格好が女子高生であるというステータスを全身から醸し出しているようだ。
見たところどのカップ麺を選ぶか悩んでいるようだ。フン、若い奴はうらやましい。体の事なんざ何も気にせず食っているんだろう、なんて自分のことを棚に上げて考える。
そんな嫌味のこもった目で見てしまっていると、こちらにふり返ってきたので危うく目をそらした。何を言われるか分かったものではないからな。早く退散しよう。目の前にあった適当な弁当とお茶を買ってレジに向かう。
店長の親父さんが対応してくれた。相変わらず頭が薄いな、なんて考えて見ていたら、目が合ってしまった。さっさと会計して出ていこう。我ながら、人の事を気にし過ぎているな。逆に人の目を気にし過ぎてもいるが。良くない癖だ。弁当を温めてもらえば良かったが、まあ構わないだろう。
会計の際、釣銭が多くていくつかこぼしてしまう。店長の頭を見ていたのがバレていたのか、釣銭をやや雑に渡されてしまった。1枚2枚と拾っていくが、自分が落としたものではない100円を見つけた。レジ前の商品棚の下に隠れるように落ちていたようだ。
少し悩んだがレジ横の募金箱の横に100円を置いておくことにした。気づいたうえでそのままにするには野暮な気がするが、自分の懐に入れるのも気が引けたからだ。釣銭を財布にしまい、商品を受け取って店を出ていく。
コンビニを出てから少ししたところで、買うつもりだった酒を忘れていたのに気づく。仕方がない、買いに戻るか。店長にはまた会うだろうが女子高生はもういないだろう。
暑いが、背に腹は代えられない。酒は大事だ。
コンビニの灯りが見えたころ、あの女子高生が見えた。まだ帰っていなかったのか。あたりをきょろきょろしているが、見なかったことにして顔を合わせないようにコンビニに入ることにする。
「あ、おじさん」
俺か。いや俺じゃない。無視して入ろう。
「聞こえてるんでしょ、おじさん」
さっきの女子高生が目の前に立ちはだかってきた。・・・これは確実に俺の事だな、流石に。俺はまだ20前半なんだが。
「何の用ですか。」
警戒心や嫌悪感をむき出しにしながら話しかけた。用件を聞いてさっさと去ることにしよう。
「えっとね、私のご飯買ってよ。」
カップラーメンすら買えないのか。ならなんで店の中にいたんだ。
「なんでそんなこと俺がしなくちゃならん。親か友達にでも頼むんだな」
「そんなこと言わないでよ。今財布を持ってきてないんだ」
「断る」
追い抜いて店に入ろうとするが、またも立ちはだかってきた。何が何でもどかないつもりのようだ。なんて面倒な奴だ。これ以上関わっても仕方ないのでおごることにする。
「分かった、仕方がない。何が欲しいんだ」溜息まじりに、諦め半分で聞く
「ありがとうおじさん。買ってくるものは、おじさんに任せることにするよ」
食べたいものは何でもいいのにこんなに粘ったのかこいつは。
「そうか。ならカップ麺にするぞ。」
さっきそこにいたしそれでいいだろ、と思い提案した。
「えー、おじさんと同じお弁当がいい」
任せるんじゃなかったのか。前言撤回が早すぎる。
こうなればさっと店に入って買い物を済ませるとする。適当な弁当と、自宅に買い置きの少ない酒を選び、レジへ向かう。さっきの店長ではなくバイトらしき若い兄さんが会計した。
「ありがとう、おじさん」
店の外に待っていた女子高生が話しかけてきた。
「あれ、さっきは暗くて見えなかったけど、おじさんていうよりお兄さんなんだね」
分かってくれたようでいいが、俺は一体どう見えていたのだ。さっき顔を見て追いかけてきたんじゃないのか。
酒だけ取り出し、女子高生に残りを袋ごと差し出す。
「ありがとう。って、お兄さん箸ないよ。ちょっともらって来てよ」
差し出した袋の中身を今一度確認すると確かに箸がない。よく中身に気がついたな。
「なんでそこまでしなきやいけないんだ。文句があるなら自分でもらいに行け。セルフレジならさっととって来れるだろ」
じゃあな、とさっさと袋を渡しその場を去ろうとするが
「んー、まあいいや。お兄さんの家、レンジと箸くらいあるよね?」
「なにさらっとついてくる前提で話してるんだ。奢ってやったんだからさっさと帰れ」
なんてことを言っているんだこいつ。
「いいじゃんか。私の家、遠い所にあるしさ。だから親も友達もいなくて頼れる人いないし。だから、今日は泊めてよ」
「断る。なんで俺に頼るんだ。あてがないなら警察にでも行け」
またも足早に女子高生を追い抜いて行こうとしたら、またも素早く動いた女子高生が目の前に立ちふさがってきた。
「お兄さんが連れてってくれなきゃ、明日には熱中症か脱水症状で倒れた女子高生が発見されることになるよ」
なかなか、面倒なことになってしまった。
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