気がかり
ドーナツ。
静子の言葉を辿るように、遠い目をした彼がつぶやいた。
「・・ドーナツ・・・だと・・」
『・・・お父さん。どうなつ、食べたい』
「・・・っ!」
その悟空が思わず、頭を抱えた。
「・・頭が痛い!」
八戒が、深夜のアパートのドアを嬉しそうに開けると、小声でつぶやいた。
「・・ただいま!愛しの玉龍!待ったでしょ、
夜遅いから人間に気を使って小声だけど、今帰ったよ!」
「・・・おかえり。意外と早かったねえ。もっと悟空のところで勉強してくるかと思った」
「そ、そりゃあ、もう、君に会いたくて仕方なかったからね!
ねえ、玉龍が沸かしてくれたお風呂、入りたいな!
・・・雑魚ばかり相手してたから、浄化しなきゃ!」
「ねーえ、玉龍ー!」
八戒が風呂につかりながら、玉龍を呼ぶ。
「なに?・・・また何か気になっているんだね」
しょうがないな、といいながら、玉龍が風呂の入り口まで様子を見にやって来た。
「ねえ、玉龍、聞いてくれる?」
「いいよ」
じゃあいうね、と八戒がしゃべり始めた。
「あーあ。兄貴に化けてるあの雑魚、もうとっくに判ってるくせに。
僕が帰ろうとしていた時だって、てんで知らないふりして泳がせちゃって。
なーに考えてるんだろ、兄貴ったら。
・・ね、この事、君はどう思う、玉龍!」
続く




