できる
「・・あ、・・性懲りもなく来ましたよ」
「・・・ほんと、下の子いじめてよく平気で来れるよね」
朝、静子がオフィスに行くと、例のあの件が影響しているのか、
いつもより陰口がより過激になっているのがすぐわかった。
だけど、それは本当の事ではないし、例え一生この人たちにわかってくれなくても、
私は私の与えられた仕事を滞りなくやるだけだ。
いつもなら落ち込むはずだが、静子は不思議なぐらい動じなかった。
「・・ねえ、この〇〇の件、睦月さんだけできていないよね。
・・・あなたがしないと、
私の仕事が進まないから、困るんだけど!」
陰口に動じない彼女を無意識にもけしかけようとしたのか、
いつもなら全く話しかけてこない
同僚が、これでどうだと言わんばかりに、静子に文句を言ってきた。
「・・あ。ごめんね、昨日まで別用件やってて。・・今日すぐやるよ」
この文句言われてる仕事、文句言われるほどあまり重要度高い仕事内容じゃないけどなあ。
と思いながら、静子が普通にそれに返した。
「・・・」
しばらくバツが悪そうに黙った後、
その同僚の彼女が静子のその返事に答えた。
「・・・。すぐやってくださいよ!」
ああ。この人たち、自分自身でわざと言っているの、本人たちが一番
居心地が良くないんだ、と直感した。
そんなことにいちいち気を取られるより、別のことを考えよう。
(・・それにしても、私のおじいちゃんとはいえ、
既に神様になった存在を、雑念にとらわれず、
いつも、どんな時でも、心の底から思い続けるのは・・・。
いいや、できる・・・!
・・・だって、私、このような周りの人達みたいな気持ちを持って生活するような人間の末路を絶対辿りたくないし、
私の唯一の、大事なおじいちゃんだもの!)
続く




