回復
『・・・』
無言だが、その祖父が静子の問いに静かに頷いた。
ただ、祖父が目の前・・・いや、夢の中で佇んでいると思っただけで、
沈殿してくすぶっていたものが押し寄せる清流に洗い流され澄み渡るがごとく、
見る見るうちに心に活気が戻り、優しく、穏やかになっていくのがわかった。
ふと、私を育ててくれたおばあちゃんは元気かな、と静子は思った。
祖父がその心の問いかけに即答した。
『・・・心配しなくていい。おばあちゃんも一緒に元気に天国で暮らしているよ。
そして、私と共に、いつもお前を見守っている』
『・・うん・・・。ありがとう、おじいちゃん、おばあちゃん・・・』
『・・・』
しばらく、そのあまりに美しすぎる至福の波動に心を寄せていたが、
静子はふと我に返ると祖父に尋ねてみた。
『おじいちゃん。・・・どうして、彼・・・悟空の姿なの?』
ふと、この目の前にいる彼の姿は、
その本来の、本物の彼よりも比べ物にならないほど神々しくて、
そしてとても穏やかで優しいけど、
どうして彼の姿なんだろう。と
夢の中で思いながら彼女が尋ねた。
祖父が優しく微笑みながら答えた。
『その彼が先日、私のもとを’訪ねて’きてね。
’この自分のような、何百年と彷徨い続ける醜いまやかしが出るより、
あなたが夢に出てほしい、
そして、今の彼女に一言だけアドバイスしてほしい。
そしてその後を決めるのは彼女の自由選択になるが、
そのことが死後の生活も含め、今後の一番の静子の為になる’と、
彼の、
心の底の、底の底の底からの願いかけを受け入れたから・・・か、
それとも、
私はもう、形を有さない光の存在だから、
それをみている静子の心が、無意識にも、
いつも彼を気にしているから・・・か。
どちらかか・・・どちらもかな』
続く




