沈黙
「・・・」
無言で促され、静子は彼女と対峙するように椅子に座った。
「・・・説明してくれる?」
「・・・?」
座るや否や唐突に言われ、何のことかわからず静子が戸惑っていると、上司が声を荒げた。
「あなたの大事な仕事があった?・・・それはうまくいったようね。
でも、どうして、その前にすぐ手伝ってあげなかったの?
・・・将来芽の出る子をいじめて楽しいかしら。あなた、人格的にも問題ね」
ああ、これは。
なぜか静子に与えられた仕事は、
本来なら平ではなく、本来なら上司が扱うような、
会社にとって重要案件ばかりだった。
もし先に言われるがままに「大量に失敗した」後輩の仕事を手伝っていたとしたら、
自分の仕事はできなかっただろう。
自分の大事な仕事を全力で優先してやっておいてよかった。と彼女は冷静に思った。
「・・・」
「・・・何黙っているの!人の質問にちゃんと答えなさい」
あなたとあの仕事のできない、また人にお願いする時の礼儀も知らない後輩とは
グルだったんですね、あとあなたはもうたぶん人としての心は捨て去っていて人ではないと思うので、答える気はありません。唯一の昼休憩時間に呼び出しといてこれ?と、
のど元から出そうになるのをぐっと我慢し、
他にもたくさん出てくるであろう「不可解」な待遇のことも考えないようにしながら、
あえて淡々とした無表情を造ったまま、静子はだんまりを決め込んだ。
ここでも、口だけでも謝ったら
丸く収まるのかもしれないと思ったが、
なぜか言いたくなかった。
「・・いいわ。
・・・またこんな問題を起こしてなお居続けたいだなんて、厚かましいにもほどがある。
このこと、あなたが後輩いびりをしたことを、上に伝えさせてもらうわ」
続く




