小さく
「・・・」
静子は目をこすると、もう一度渡された名刺を確認した。
きちんと社長 斉天大聖・孫悟空と、あった。
「まさかS.S社長さん?」
「ああ、そうだ。・・・その紙、
・・・何万年おきにたったの1回しか渡さねえやつだから、無くすなよ」
しかし、この今の格好では、この世界では社長に見えないだろうな、
と悟空が真面目に返した。
「・・・」
静子自身は休日含め毎日が会社と自宅の往復で、
他に娯楽というか何もみる時間がなく、この社長の顔を全く知らなかったが、
最近何か社会に貢献し始めている企業があることだけは情報として知っていた。
確か世間ではその企業の社長はS.Sで通っていた気がする。
静子の会社内でも、
この社長、名前謎過ぎるけど経営理念とか手腕とか?、あと一番顔がかっこいい、
とかいう話で他人同士が盛り上がっていたのを普通に聞いた。
「・・・何度かマスメディアに出ていました?」
「・・・」
そんな悟空の代わりに悟浄が静子に、小さく言った。
「もうご存じと思いますが、兄貴は、もうだいぶ前から
人間が必要とするところのエネルギーを、
自然に優しいかたちで提供するしくみを開発していて、最近になって
やっとこの世界に貢献することができたのです。
ただそれだけのことと言えばそうなのですが、
そのことを最近になって何度か人間のマスメディアが取り上げてきましたし、
兄貴はそのインタビューにも何度か対応しているみたいですね」
彼は、それ、本人はあまり好きではないみたいですから小さく言ってみました、
と後置きするのを忘れなかった。
続く




