ひとつだけ
(・・・素直じゃないですね、兄貴は。
しかし、その問いかけに偽り、陰りは無し。
あまのじゃくな兄貴らしいといえばそうなるでしょう)
そんな悟空を見て
ふと悟浄が思ったが、そのまま黙っていた。
「ええー!さっきせっかく自己紹介したばかりなのに兄貴、どうしてそんなこと・・・」
「八戒、ここは兄貴と三蔵に任せて、我々は静観しましょう」
「悟浄・・・。悟浄がそういうなら。
・・・いい結果だといいけど」
「・・・あ、でもやはり、私から一言だけ言わせてください、兄貴」
「・・なんだ、悟浄」
すう、と深呼吸すると、悟浄が一言言った。
「兄貴は先程、『当てたら協力してやる』と三蔵に言われましたが、
『もし当てたら、どこまでも従順につき従う』の、云い間違いと思われます。
――兄貴、いや長い年月をさまよっている我らの
永遠のテーマでもある、その切実なる問いの答えを当てるのですから。
『もし当てたら、
今は未熟ながらもその高貴な美しい心でもってその魂を育もうと努める、
大勢の中の一人、この人間凡夫の、その心、魂に付き従いましょう』
・・・我らが斉天大聖・孫悟空の心の内は、
これでぴったり合っていると思いますがいかがでしょう、兄貴」
続く




