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ひらがなディストピア

作者: 凪常サツキ



0-0

Kios 5.2.3(48:5-K4 Dec 22 20**, 16:30:21) on Akari V[/UQuser:Yuzuriha miki]

set up fnc[/H556] startrun ...  

>>hello word!

「ではユズリハさん、これでパーソナルセッティングがカンリョウとなるます」

「はい、ありがとうございますた」

 このまえまでつこうているたAkari Ⅲから、キョウ、ようやくニューモデルへとかいかえることができるた。11ガツ22ニチのことだった。



14-0

レポ15:わたしたちのあつこうツールのなかでも、とくにITキキにまつわるものをしめすカンジは、ないか、きょくたんにすくないかもしるない。しかし、カンジはモジやてまのリムーブと、イミをクリアにするファンクションをそなえるだろうから、なぜこんなにもみじかなITキキのカンジがみあたるないのかがわからない。


〈>>: +ではない。これもカンジだ。10である〉

 そんなことをひがないちにちソフトにおしえるシゴトが、わたしのいきるすべだった。

 いつほろぶたのか、それすらわからないモジについて、わかるのは、

・いちもじいちもじがそのまま「いちもじ」としてカンゼンにドクリツするていること

・いちもじがひとついじょうのいみをもつこと

・チョウフクこそあるが、こゆうのよみかたがあること

・キョウユウされるいくつかのパーツがそんざいするていること。

 やまや、そら、みず、ほのおなど、あらゆるものごとにはそれをしめすカンジがあるたとおもおれる。まだみつかるてはいるないが、このちょうしだとPCやクラウドサービスをイミするモジもあるのだろうかとほんきでヨソクするてしもうほど、そのかずはおおい。

〈ユズリハ、メッセージをおくるたから、よむてくれるかい〉

 アラームがなる。ジョウシである、ハカセからのれんらくだった。ないようは、きのうからかくちでカンジがいみふめいのラクガキとしてはっけんするれるている、というものだった。

 カンジがかくちで? しんじるれるないけど、ハカセからおくるれるてくるたイメージは、たしかにどれもみたことのないソースだった。

・ビール1ジョッキ¥500**(ちしき)(やかた)***(ちしきじん)****(おんこちしん)やきとりたべホーダイ

・このさきKEEPOUT****(しぶはちご)KEEPOUT****(しぶいりぐち)KEEPOUT*****(きたきみなみこや)KEEPOUT

****(かんぶんもつもの) ***(ようれんらく)***(れいはちれい)(あいだ)***(ごよんきゅう)(あいだ)***(ろくよんいち)

 しかもこのように、ごくふつうのカンバンやミンカのカベにカンジがかくれるている。

「ユズさん」

 となりのショクインが、それをプリントアウトするたものをもつながらとなりにいるた。すっとんきょうなこえをあげておどろくから、たぶんタイミングがグウゼンいっしょでめんくろうたのだろう。

「これからずいぶんいそがしいなるね」

 きをひきしめるないと。



14-1

〈ぼくたちがいつもつこうモジはふたつ。ひらがなとカタカナだね。でも、ぼくはみっつめのモジがあるのではないかとかんがえるている〉

 はじめておうたとき、ハカセはそうゆうと、たちまちわたしをジョシュとしてやとうてくれるた。どんなジョウホウもどこにもながすないことをジョウケンに、セイフキカンであるキズナラインの、「マナビ」モン「ブンショ」コウ「カイセキ」モクの「カンジ」カのトビラがひらくた。

 そんなハカセが、きょういきなりすがたをけすているた。

「はあ」

 キノウまでおせわになるていたのに。カイセンをつうじるてではあるけど、ことばもかわすたのに。やっぱりあのひとはヘンジンで、いつもカンジとひといちばいにらめっこするてたから、とうとうくるうてしもうたんだろうか。

 とりあえずブショにアナウンスをするて、オフィスにすわる。うえからすればもっともコウセキをあげているたハカセがシッソウしたことになやむているだろうけど、ワーカーのわたしたちからすれば――

〈ふつかまえほどからとてもおおくみるられるようになるているフクザツなラクガキが、きょうもまたたくさんのチイキでハッケンするれるています〉

 くだんのカンジのラクガキが、ミンカンデンパにのるほどにオオゴトになるてしもうたことのほうがキツい。ハカセだけがジョウホウコントロールをとくいをしているたから、そのノウハウをしるないわたしたちにどうもみけしをするれというのか。

 とりあえずはうえのあやふやなシジにしたごうてネットのカンジガゾウをサクジョすることに。SNSからケイジバンまでのおおそうじ。

 ダウンロード、デリート、ダウンロード、デリート、ダウンロード、デリート、ダウンロード、デリート、ダウンロード、ダウンロード……。

 うえからのシジはいつまでもあやふやだ。なぜなら

〈キョウゴゼン、ケンイチノウのキズナが、ダウンロードにかんするアクティブなホウリツにあらたなブンをキサイしました〉

 セイフやセイジはケンイチノウのものだから。ケンイチノウはニンゲンではないから。

「ユズさん、そういえばこれはけすだけですか。ほぞんするておくますか?」

「まあ、どちらでも」

 ダウンロード。わたしたちがけすても、キズナがすでにあつめるているはず。



17-0

レポ55:ちょうほうけいをふたつにくぎるたものだとか、あるいはひだりがわによくあるたてせんにいくらかつけくわえるたものだとか、カンジにはよくつこうれるパーツがある。ユーザーはそうしたルールとはいうないようなルールをきおくのホジョにするたのだろうか。

 しかしそうすると、(つぼ)(うら)(まんじ)などのユニークなカンジはどうなるのだろうか。もしかすると、(まんじ)などをもちいるたカンジもあるのだが、まだみつかるてないだけだろうか。


 ハカセがシッソウして、ふつか、みっか、いくにちかたつているた。わたしたちのどりょくはむくうれるないて、けっきょくいまでもカンジのラクガキについてはわだいがたえるない。ただ、うえのチカラをかりるてデンパキセイはおこなうことができるた。

〈ユズさん、さんじゅっぷんごにリサとカフェするToDoがあります〉

「へえそう」

 ベンリなマイAI(マイアイ)〈アカリ〉が、「そういえばそんなこともあるた」というリマインドをよびおこす。あまりのりきではないのは、

「ユズちゃんはなにのむ?」

「ん、ホットコーヒー」

「うへー、マズいくない? わたしはライトアイスジャスミンクリームノンBフラペチーノギガ」

 こういうことになるから。ブレークをひとつといくたいのに、つかればかりがたまる。

 いつのまにか、ロイドがドリンクをはこぶてくるているた。

「ねね、きくてユズちゃん、ほんとマジおどしろであまのはしだてなんだけど――」

 リサはわたしにはなしかけるてるのか、それともじつはいるもするないさんにんめのトモダチにおはなしするているのか。わたしにはことばがくだけるすぎるてて、さっぱりわからない。

「どうおもお?」

「わからない。いみが」

「ちょっとそれジョーク? ダチのまえでうそるとかサムゲ」

〈キョウはセイジがヒトからケンイチノウにバトンタッチするれるてから、ジュウネンがたつますた〉

 テレビのアナウンサーのことばはきくやすい。

「ならたとえば、ほらあのテレビみたいに、もうすこしだけアナウンサーのはなしをマネできるないかな」

「いやむりしろ」

 このシャカイでただひとり、わたしにつきおうてくれるトモダチだから、もうすこしやさしくタイオウするたいけど、やっぱりムリそうなのがわかるた。マイAIにトランスレーションしてもらうたいけど、トランスレーションのデフォルトがリサのようなことばだからどうにもいくない。

「《《おにゅー》》のマイアイこうたはなし、きーてた?」

「いいや」

 リサはいつものことだというのにおこるまくる。さて、わたしはそんなノイズをBGMに、メールチェックをするますか。

〈キョウはメールが6、メッセージが1、スパムが30あります〉

 わたしだけのシュミかもしるないけど、スパムをみるのがたのしい。あたおかメールがやまほどみれるから、あきるない。

・おめでとう、あなたにマリンサーバーが3つあたるますた。

・あなたに3オクえんをゆずるたいというシャチョウがいるます。

・AIとしてフッカツしました、ノグチヒデヨです。

・ユズリハへ。ハカセより

「え、ちょっと!」

「なに! おどしろ」

 ムイシキにくちがひらくてしもうた。おどろくほどおかしいてくだらないゴミのなかに、ハカセからのメールがある。そのコンテンツはテキストとしてではないくて、いちまいのガゾウ。

〈わたしのいえへいくて、にわでもっともおおきなウエキバチのしたをほるれ〉

 それだけがてがきするれるているた。ホンブンがないからスパムとしてふりわけるれるたのだろう。

「ごめ、キョウはこれくらいで! キュウヨウができるたから」

「えちょっとエグ」

 わたしはリサとジブンのぶんのキャッシュをデスクのうえに置くて、さっそくカフェをあとにするた。



17-1

(1)

「+カンジ:ひらがなやカタカナ、きごうとおなじもの。(じゅう)(ゆう)

「Aカンジ:そのままことばのいちぶをおきかえるもじ。(はたら)く」

「Bカンジ:ことばのすべてをおきかえるもじ。(ほん)

「ABカンジ:AもじとBもじのふたつのはたらきをするもじ。(あた)える、**(かんよ)

「Cカンジ:もじどうしのいみがからみあってとくしゅもじだけのこうせいがかのうなもじ。****(せいさつよだつ)


(2)

 *****(ちしきじんどうめい)***(しぶご)-(ろく)は、すぐ(そば)に。***(まんはしゅう)()るれ。


(3)

 ****(にほんこくみん)は、**(せいとう)**(せんきょ)された**(こっかい)における***(だいひょうしゃ)(つう)じて**(こうどう)し、われらとわれらの**(しそん)のために、***(しょこくみん)との**(きょうわ)による**(せいか)と、わが(くに)**(ぜんど)にわたつて**[[[[//error code 1-70のもたらす**(けいたく)**(かくほ)し、**(せいふ)**(こうい)によつて(ふたた)**(せんそう)**(さんか)(おこ)ることのないやうにすることを**(けつい)し、ここに**[[[[//error code 1-70が**[[[[//error code 1-70に(ぞん)することを**(せんげん)し、この[[[[//error code 1-70を**(かくてい)する。そもそも**(こくせい)は、**[[[[//error code 1-70の**(げんしゅく)**(しんたく)によるものであつて、その**(けんい)**(こくみん)**(ゆらい)し、その**(けんりょく)は**[[[[//error code 1-70の***(だいひょうしゃ)がこれを**(こうし)し、その**(ふくり)は**[[[[//error code 1-70がこれを**(きょうじゅ)する。⤵⤴……


(4)

 [[[[//error code A-02


(5)

 [[[[//error code A-02  パスワード:**(ごいち)A(てん)Hio?d


 これが、メールにしたごうてほりだすれるたあわせていつつのカンジブンショである。わたしはカンジをしるない。これをカイドクするれというのか。

 でも、ひとつめのブンショはどうもきになる。+はプラスをイミするキゴウのはずだし、タはカタカナのはずなのに、それがカンジとはなにごとか。もしかして、これはイチダイハッケンなのか。よくみるてみるれば、そのほかのセツメイもわたしたちのチシキにはないものだ。サクランなのだろうか。

 とりあえずキズナラインから「マナビ」にはいるて、ガゾウアナリシスをおこのうた。

 マナビはアドミンであるキズナがカンリするチノウたち(キズナライン)のうち、キョウイクやデータショリのサービスをおこのうている。いまやすべてがマイAIにはじまるて、マイAIにおわるジダイだけど、さすがにそれではたりるないことがある。こうしたハイレベルなショリやヨウキュウは、だいたいキズナラインにたよるしかない。メディカルの「イヤシ」やケイザイの「クラシ」、コウツウの「ウゴキ」などはかなりつこうれるが、マナビがつこうれるのはコウコウくらいだった。

 だからかもしれない。これほどまでにキズナラインをつこうておどろくたのは。ディスプレイはたんたんとエラーのさんもじをうつすだけ。わたしはめをうたごうた。そしてつぎに、じぶんのそうさと、そもそもディスプレイをうたごう。キズナラインのエラーなど、きくたこともみるたこともない。ぜったいにないはず。

 いや……、これは。

 キズナによってジョウホウソウサするれるたブラックブンショなのだ。シゴトがら、いくつかあることはしるている。けれどそれをみることはフカノウだった。それがおくるれるてきた。

 つぎのシュンカンに、チョッカンでこのなかにはハカセのバショをしめすジョウホウがあるとわかる。おそらくふたつめがアドレスで、あとののこりがそのカイドクのためのシリョウだ。これはゲームなんだ。

 ハカセ、ですよね?



17-2

  *****(ちしきじんどうめい)***(しぶご)-(ろく)は、すぐ(そば)に。***(まんはしゅう)()るれ。

「チシキジン、ドウ……、メイシブ、ゴ、ロク」

 キョウでみっかめ、これでシコウカイスウは300をこえるているはずだった。

 チシキジンドウメイというのが、どうやらハカセのいるヘヤとか、バショのなまえだろう。そんなところまでカイドクがセイコウしていた。わたしはパスワードをすぐにカイドクできるたから、いまは(カギをあけはなしにしているたハカセのイエで)ハカセのPCをかりるてほんまるのカイドクをすすめるている。

「チシキジン、ドウ……、メイシブ、ゴ、ロクは、すぐ――に。マンーーシュウをみるれ」

 あとふたつ。あとにもじだけだった。カンジがわかるない。そもそもハカセのセオリーがただしいのなら、わたしやキズナのもつチシキすらおうているかあやしい。だが、そんなことをなやむてもしかたない。

 ジッコウ。

「すぐそばに。マンハシュウをみるれ?」

 ボウダイなエンザンケッカのなかから、それらしいものがみつかる。ああ、そば。そこらへんにいりぐちがあるとでもいうのだろうか。マンハシュウとはなんだろう。マンはタンイで、はっぱと、あつまるということ。おおくのはっぱがあつまるということ? にわのうえき? まさか。

 そのまさかだった。

 なにもかもほっぽりだすてアンゴウをといたら、ハカセのにわにチカツウロへのいりぐちがあることをしるてしもうた。わたしのくちは、いままでにないくらいおおきいひらくている。そのショウゲキもそうだが、ツウロのあまりのかびくささ(シュウゲキ)に。

 ほらあなのなかは、どんなAIがみてもおおむかしのダツゴクトンネルだとこたえるだろう。それくらい、しぜんにちかいものだった。だってほらムカデみたいなのがいる。アカリもこういうときにはなんのやくにたつてくれるないから、やっぱりフカンゼン。しかもじつは、キョウはすこしタイチョウがわるい。ああアシタにしようかな、スニーカーをはくてくればよいかったななんておもおてしまう。

 そんなにおいやシッケ、きみのわるいムシなんかにもなれはじめるてくるたそんななかで、いきどまりがみえるた。どうやらてつでできるたおおきなとびららしい。これでもかというほどさびつくている。よくみると***(しぶご)-(ろく)とある。ああここだ。

「すみません」

 しめるたくうきにこえがこだまするた。



18-0

レポ165:「()」とは、おそらくスウガクにもちいるれるカンジなのだろう。なんとなれば、πがしるすれるているからである。うえには「やま」をイミするカンジがあるため、きぼのおおきいケイサンといういみがあるかもしるない。


「ハカセ、やっぱり!」

 そこは、ケンキュウジョとしてはとてもカンソではあるたものの、アジトとかかくれがとしてはとてもできのいいブルイにはいるとおもお。これまたおおむかしの、ヒーローコンテンツにありそうなオーラがたのしいげだった。

「くるれるたんだね、ユズリハ。ようこそ」

「やっぱり、あれは……。その、ここが、チシキジンですか」

「そうだとも」

 あるくながら、ハカセはこたえる。わたしもそれにつくていく。

「チシキジンは、わたしたちのソセンたちがはなしているたことばをケンキュウするチーム」

 ギモンがたくさんある。ハカセはまえからいつもむかしのことばにキョウミをもつているた。むかしのことばをしらべるて、どんなメリットがあるのか。

「たとえば、ぼくたちがあまりにむかしのことばをしらないすぎることなんかもひとつのこわいところだよ。カンジもよむない、そしてカツヨウもしるない」

「カツヨウ?」

 ハカセのあしが、そのおおきなディスプレイのまえでとまるた。そういえば、このシセツにはハカセとわたししかいない。

「キョウはシゴトにいくてたから、もうつかれるた。あすははやくかえるてくるれるといいな」

〈キョウはシゴトにいってたから、もうつかれた。あすははやくかえってこられるといいな〉

 ハカセがはなすたことばが、ディスプレイにうつすれる。するとすぐに、スピーカーからこえがでる。ハカセのことばのしたには、なんだかおかしいブンショウがならぶ。そういえばハカセからのブンショにあるたような。

「これがカツヨウだよ。ぼくたちはもううしのうてしもうた。うしろにつくことばによるて、ドウシはかたちをかえる……」

「でもそんなの、カンジみたいにおおむかしのゲンゴキソクなんじゃないですか」

「そもそもカンジが、おおむかしとはかぎるないんだ」

 いつになくおおきいこえをあげるハカセ。そのめはゲンカイまでみひらくているた。おどろくていると、ハカセはロイドをよぶた。よぶれるたロイドは、カンジがかくれるたかみをふたつもつている。

「みぎのシリョウは、ラジオカーボンソクテイのケッカ、およそセンネンまえのものだった」

 それはかみのいろや、てがきするれるたであろうモジのかたちからいかにもオールドなインショウをうけるた。

「ひだりのシリョウは、まだゴジュウネンもたつているないかった」

「おど――ゴジュウネンですか」

 おもわず《《リサみたいなことば》》がでかかる。ここいちねんでいちばんおどろくたかもしるない。カンジが、たったゴジュウネンまえにつこうれるているた?

「たしかなエビデンスだよ。だから、カツヨウもおおむかしのことじゃないかもしるれない」

 そこから、ハカセはわたしにいすにすわるよういうた。ハカセはかたる。いかにしてこのチシキジンをしるて、ここにわたしをいざのうたのかを。



18-1

 ハカセがキズナラインにおとずれるたきっかけは、もともとカンジがすきでシュミがカンジカイドクだったからだった。そのウデをかうれるて、キズナラインからダイレクトにさそいがくるたという。

 だが、ハカセはさいしょから、ジブンのケンキュウやレポートをすべてキズナラインにアップロードすることはなかった。ただしいケッカをハンブンアップロードするて、のこりのハンブンはうそのデータであるた。

 そうこうするているうちにわたしがハカセにスカウトされる。それからレイの、カンジラクガキがタスウハッケンするれるということがおきるた。

「そのひとつひとつが、じつはすべてチシキジンにかんするジョウホウだったんだ」

「でも、ということはほかにもひとがいるということですよね。どこに?」

「チシキジンはジッタイをもつない。メンバーはおのおののかくれがにいる。しかしたがいは、ネットワークによるてつながるている」

 らしい。まとめるとハカセはそのラクガキでチシキジンのソンザイをしるた。そしてわたしを、あらたなメンバーとしてスカウトするたいとのことだった。

「ゴジュウネンのあいだにモジとカツヨウをうしのうなど、あきらかにフシゼンだ。ユズリハ、わたしたちはキズナにことばをうばうれるた。わかるかい!」

 それからハカセは、キズナのカンジをカイセツしはじめる。 

「キズナは、カンジでは(きずな)とかく。ひだりがわのモジはいとというイミだ。だから、ほんらいはいろんなものをしばるというイミだ。たくさんはなすたが、とにかくキズナは、ひとびとをしばるてシハイするためにことばをうばうたんだ」

 ハカセのことばはどれもなっとくのいくものだった。「どうだ」ときくれるた。もちろん「ついていくます」ということばしかでるない。べつに、チシキジンにはるたからというて、いまのくらしをぜんぶすてることではないようだから。

「よくいうてくれた。ぼくは、(つかさ)だ。そしてきみは(ゆずりは)だ」

 カンジのかかれたネームプレートだ。これがわたしのナマエのカンジらしい。ふしぎと、みるているとなんだかうれしいかった。

 これがニホンのこころ……。これが、「なつかしさ」というものなのかな……。



20-0

レポ421:カンジユーザーたちがほんとうにカンジをつこうていたのかすら、ギモンである。いまでもイミのかいしゃくはかずをますているて、さらにカンジじたいもかずをふやすている。これらすべてをワシャがシュンジにショリするているたとはかんがえずらい。ウェアラブルのホジョソウチをつけるていたとかんがえたいが、ではなぜむすうのモジをソウチをつこうてまでよみかきしたのかというナゾがでる。


「ハカセ、いよいよです」

「そうだね」

 わたしたちチシキジンは、ちょうど7にちまえにあるブンショをネットにばらまくた。『うしなわれたチシキをもとめて』とよぶれるそのデータは4まいのガゾウとしてアングラサイトジュウにカクサンされている。そのさいごには、こうかくれるているた。

〈7にちごの12:00 いっせいにネットでカクサンするれ〉

「これで、かわるのですか」

「わからない。でも、キズナにひとつのやをいることはできるたはずだ」

 11:58――11:59――

 12:00

 そのひ、そのときより、ニホンは、**(にほん)になるた。



26-0

〈アラートアラームがイッケンあるます〉

「ショウサイ」

〈オートノベルキノウのアップロードリミットがちかづいているます〉

「え?」

 アカリのターミナルをのぞくと、たしかにオートノベルキノウというものがある。

「はあ、そのキノウきるておいて」 

Kios 5.2.3(48:5-K4 Apr 16 20**, 10:46:03) on Akari V[/UQuser:Yuzuriha miki]

set up fnc[/H556] unstartrun ...  

>>goodbye word!






――――――――――――


 第12回ロンドン世界会議により、各国は科学の暴走による人類の危機を回避するため、権威知能が規制支配することに決まった。そのうち日本は「BB_JPNV11キズナ」が統制し、政治行為や「言語規制」が行われた。「言語規制」は現在第二段階まで完了しており、第三段階は半ばまで行われている。状況によって段階を飛ばすことも可能とする。


・第一段階:漢字の廃止を行い、文字言語をひらがな、カタカナの二通りにする。

 *ひらがなとカタカナのどちらかをつかうかの基本的ルールについて、

①外来語はカタカナとする。

②熟語だったものはカタカナとする。

③和語や付属語、また浸透している漢語(何故など)はひらがなとする。

④和漢複合語については、すべてカタカナとする。


・第二段階:動詞・形容詞・形容動詞・助動詞の活用を無くす。


・第三段階:語彙を減らす。また品詞という枠組みを超えるような働きを付与することで、法則を乱す。

①名詞:同じ意味の言葉は一つになるように、多くの言葉を消す。残される名詞はどれも大和言葉か、動詞を名詞化したものである。名詞化成分「i」

②動詞:活用をなくす。但し、複合動詞「ひきつける・とびこむ」などの前半部分は活用したままでよい。また、名詞や形容詞を動詞化する際には、「る」を接尾辞とする。

また、連用中止形に相当する意味を持たせるには、接続詞「て」の挿入が必須となる。命令形は終止形のあと「れ」を付与する。

 *動詞の活用をなくした結果二重母音になるなどしたときは長母音化・則音便化する。ただし、「いう」は例外的に長母音化することはない。

③形容詞・形容動詞:意味が対立する形容詞たちは、どちらかに「ない」をつけて語彙を減らす。形容詞化接尾辞は「い」。

④副詞:副詞化接尾辞は「に」とする。

⑤連体詞:③に同じ。

⑥接続詞:それぞれの意味に対して、一つだけ残す。

順接:それで 並列:また 追加:後 限定:しか 確認:ただ 時間:間もなく 経過:それから 逆接:でも 展開:やがて 仮定:もし 収束:だから 原因:なぜなら 


・第四段階:汎用語を浸透させる。汎用語は意味ではなく、その状況に則して用いられる語であり、用法は名詞的・動詞的・形容詞的・副詞的・感動詞的の計五つある。品詞という垣根を越える働きをする。汎用語は形容詞の語感に接尾辞「しろ」を付けることで容易に作成可能とする。


・第五段階:汎用語と同じく意味の範囲が広い外来語の積極的な仕様を促す。


・第六段階として、言葉の誤用意識を増幅させる。本来の用法から外れ、尚且つ意味の明瞭化や合理化がなされる言葉が出現した場合、それを「誤用」として報道し、意識を正す。

 *四つが名はすべて「ず」「じ」に統一する。

 *いわゆるら抜き言葉やマニュアル敬語を正しい表現とする。



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