第6話 魔女
「国民の半分は私が殺したんです。残り半分は、誰が『魔女』なのか分からないから、対人恐怖症になって、外出出来なくなっちゃった。それでみんなクル病とかでばたばた倒れてって。この国、日照時間が少ないから」
こんなに小さい体で、どれだけの傷を背負っていたんだろう。ぼんやりとキリルは考えていました。
「ねぇ、私がこんな体になってなかったら、この人を憎いと思っても殺したりなんかしなかったと思う?」
泣き笑いの表情で少女は言いました。
副作用は少女の思考までも蝕んでゆき、やがて本物の『魔女』になりうるでしょう。
確実に軌道は破壊へと続いていました。
「この薬ね、切れると体が耐えられなくて死んじゃうらしいんです」
「あの人は私に薬を与え続けました。私を死なせない様にそうしてくれてるんだって、ずっと思ってました。本当はそんな事どうでも良くて、薬の効果を持続させたかっただけなんですね」
「――っ」
キリルが何か声をかけようとした瞬間。
パンッと乾いた音と共に、彼女の体は弾けて粉々になりました。
「う……そ……」
それはあまりにも突然すぎて。
少女の欠片は宙を漂い、余韻すら残さないままに消えてしまいました。
「なん……で……やだ……何もしてないじゃない! 何であの子まで消えなきゃいけないのよ!?」
「キリル落ち着いて!」
ラズがキリルをいさめます。
「だってあたし、あの子の名前だってまだ知らなかったんだよ……?」
それからキリルは、枯れるまでただずっと泣いていました。
夜が明けても、空は相変わらず薄暗いままでした。




