第5話 有罪
ある少女の物語です。
目が覚めると少女の横で両親が倒れていました。
慌てて駆け寄ろうとすると、右手に違和感を感じました。その手には血のついたナイフが握られていたのです。
その間の記憶がないにも関わらず、少女は裁判にかけられ、有罪となりました。
少女に抗うすべは無く、製薬実験室に送られました。
そこで少女は理想の容姿になれるという薬を飲まされました。
羨ましいじゃないかと思うでしょう?
でもその薬は酷い副作用が懸念されているものでした。
視覚で感じた全ての人間の容姿と、一部の身体機能をコピーできる。しかもコピーは意図しなくとも行われ、大脳に記憶されます。
好きな時にその姿になれる代わりに、コピーした、つまり人に会った分だけ早く寿命が減るという副作用が現れました。
それを回避するには、人の魂を体内に取り込むしかないんです。
急激に自分の体が衰弱してゆく事に恐怖を覚えた少女は、ある夜脱走し、初めて身寄りのない老人をピストルで撃ちました。
弾丸は頭蓋骨をぶち抜いて、皮膚の破片が嫌な音をたてて飛び散りました。
生暖かい血液が少女の肌を汚し、その光景は網膜に永遠に焼き付きました。
そして少女は研究員の1人であった男性に騙され、『魔女』と呼ばれる存在になりましたとさ。
「――そう、だったんだ」
少女の話す壮絶な過去に、キリルは悲痛な表情を浮かべました。




