第2話 遭遇
視線の先はキリルの後ろ。とっさに振り返るとそこには血まみれの少女が立っていました。
年齢は6歳ぐらいでしょうか。白い肌に金の巻き毛の持ち主は、
「たましい、ちょうだ…い」
かすれた声で言うとキリルに掴みかかりました。
「嫌です無理です絶対拒否!!!」
少女の顔が歪みました。
それと同時に、キリルの腕に少女の爪が突き刺さります。
「――!!」
子どもではありえない握力でした。まるで万力で締め付けられているような。
腕から滴るのは、誰の血液?
キリルは何とか指先から球状の風圧を出し、それは少女の小さい体を2メートル程後ろに吹き飛ばしました。
自由になった腕は赤くなり痺れていました。
敷石の上で少女は一瞬きょとんとしてから、にやりと笑って。
「まほうつかい、なんだね」
愉しくてしょうがないといった表情をして立ち上がり、くるりと背を向けて暗闇に消えてゆきました。
それきり辺りはまた元の静寂に包まれて。
「なに今の……」
キリルはぺたんと地面に座り込みました。
「住民さんじゃない? 物理攻撃効いたから幽霊ではないと思うけど」
「異文化交流は大切よね。でも自分の生命を守るってのはもっと大切だと思うの」
「うん、それで?」
「そこはかとなくやばい感じがしたんで、すぐに国を出ましょう」
「賛成」
そうしてキリル達は夜も明けないうちに国を出ることにしました。
月も出ていない寒い夜で、等間隔で立っている街頭の寒々しい光だけが頼りでした。




