朝月夜の浮かぶ園
旅人は青空の下に広がる草原で月を探していた。
青と緑、二色の世界は旅人だけが異物であるかのように二色の狭間で彼を浮かび上がらせていた。
そんな旅人の前を一つの人影が横切った。調子外れに踊る人影はウサギの被り物をすっぽりと被り、アコーディオンを奏でていた。
小川を飛び越え旅人を気にする様子も無く、アコーディオンの音色が周囲に広がっていた。
ウサギの奏でるアコーディオンは振りまく音色で周囲の景色をみるみる変えていった。空や雲、草原の草木、浮いた月までもがペンキに塗られたハリボテと化していった。
月や雲には紐が掛かり、天上から吊るされていた。
景色の変わりように呆然とする旅人の前に立ったウサギは木目の覗く月を指さし、一言言った。
「想う空にはご用心」