27、そろそろ帰っていいですか (後編)
続きです!
昨日更新できなくてすいません!
皆さんに、聞いてほしいことがありまーす!
(なーにー?)
『救国』の件ですが、実は既に終わってたそうでーす!
(えー?!)
なのに、この地雷ク◯上司が、オトモダチ()の私にずっとこの国にいてほしくて、途中から国王様にベッドで寝たフリしてもらってたそうでーす!
(マジでー?!)
マジでーす!ファッキューでーす!
王様も同罪でーす!ユルシマセーン!
ミナゴロシデース!ファッキューメーン!
「すまない。筆頭聖女がローゼステスから帰ってきた段階で、儂の目は覚めていたのだ」
すまなそうに国王陛下が謝った。
本来ならば国家の頭は、こんな簡単に謝ってはいけないはずだが、月の女神の館内のことなので構わないという。嬉しくもなんともないが。
「ということは、3ヶ月以上前の話ですよね。その間、私はなーんにも知らないで、この国の未来をどうしたらいいのか頭をひねっていたわけですか、ははあ」
(これ怒っていい奴ですよね?私、怒っていいよね?)
あ、ヤバい、『救国の乙女の鉄槌』が発動しそう。
オリエがビキビキ(^ω^#)していると、相手も「あ、ヤバい」と気付いたようだ。
「まあまあ落ち着いて、織愛嬢。この『女神の天秤』を見てみなさい」
国王陛下は、ベッド脇の祭壇に置かれていた、月の女神の像を指し示した。
女神は世界の均衡を保つ存在として、右手に秤か天秤を持った姿で現される。
「この天秤が水平に保たれている間は、バルシリウムに平穏がもたらされているという証なのだ。これが大きく傾いた時、国は荒れ、やがて滅びる」
不思議な神気に包まれた女神像は、慈愛に満ちた表情を浮かべながら、傾いていない天秤を掲げていた。
「ちなみに織愛ちゃんを呼ぶ直前には、なんかもう縦というか、垂直になってたわ」
……それもう天秤じゃないじゃん、お皿が縦に2つ並んでるオブジェじゃん……。
ていうかそんなになるまで放置してたのか。
いや、そんなになるまで放置してても、国は滅びないもんなのか?
「天秤が傾いた頃は、雨量や気温がおかしかったせいで、今年度の麦の収穫量が大幅に減ることが予測されていてな。急遽、外国からトウモロコシを輸入したのだが、それを飼料として与えた七面鳥などの家畜が大量死してしまってな。もはやお手上げだったのだ」
国王陛下と王妃様は、頷き合いながら話した。
……ん?トウモロコシ?七面鳥の大量死?
オリエはその単語にピンと来て、頭の中で情報を検索する。
そして、ひとつの結論を見出だした。
「……陛下、そのトウモロコシってどこから輸入しました……?」
恐る恐るオリエが聞くと、国王はウームと唸りながら答えた。
「あれは確か……バルシリウムよりかなり南の方の国だったな。我が国は聖女によって外敵から守られてはいるが、外貨を得る産業が発展していないがために、高い麦は買えぬ。それで安くて栄養価の高い穀物を探し、最安値で買い付けたはずだ」
「そうね……昔は聖女のポーションを高値で諸外国に卸してたんだけど、7年前の東ロクシタンの事件で、すっかり信用を無くしてからは、買い叩かれるようになってしまったの。それで、麦が買えないのも聖女の怠慢のせいだってダンスト元大司祭が怒って、トウモロコシは責任持って聖女に食べさせる、加熱すれば問題ないはず、って神殿に大量に持って行ったわね」
国王の言葉に、王妃が付け足すように語る。
(ターキーX……アフラトキシン……急性中毒死!!)
オリエは頭を上げた。
「王妃様、今、そのトウモロコシどうなってます?!」
急に勢いよく聞かれ、王妃は少し驚きながら答えた。
「え?えーと、ほとんど神殿の倉庫預かりになってるはずよ?ダンスト元大司祭は、そのあとすぐあなたが更迭したから、そのままになってると思うわ」
あ、あっぶねええ!!よかったああ!!
「わかりました、それはすぐさま全部処分します。王宮に在庫が残っていたら、それも処分させます!」
王妃が「えっなんで?もったいない」とか言っていたが、おそらくその南国から来たトウモロコシには、カビが発生している。
……その昔、オリエの世界で、わずか数カ月の間に七面鳥が100万羽近くも死ぬという大事件が、某国で起こった。
その原因は、亜熱帯地域で生産された、穀物に生えたカビ。
最初はターキーXと呼ばれ、後にアフラトキシンと名付けられたそれは、強力な毒性を持っている。
その事件から十数年後、106名という多くの人が黄疸、腹水、消化管出血で死亡した、急性中毒事件の原因ともなった。
そしてこのカビは、調理の加熱程度では毒性が消えないのだ。
(もしそのトウモロコシで作った食事を、貧しい聖女たちが食べていたら)
金にものを言わせて神殿入りした偽聖女だけが残って、神殿は崩壊しただろう。もちろん、シンシアも犠牲になったはず。
(聖女の奇跡は、聖女を癒すことはできない……!)
そして7年前の東ロクシタンの悲劇が、バルシリウム国全域を襲う。
……食糧難がどうとか言う前に、王国はそれでおしまいになっていた可能性があった。
狙ってやったことではなかったとはいえ、オリエがこの国にやってきて行動したことにより、最悪の事態は免れたのだ。
「……うあああ!!私、『救国』間に合ってた!ギリ間に合ってた!!よくやった私!!偉いぞ私ぃーッ!!」
オリエは突然、その場で両手を上げて咆哮した。
そのまま「自分に対する万歳三唱」を展開する。
気が付けば太陽神の幻影と月の女神の幻影が参加しており、花吹雪と「救国おめでとう」の横断幕を掲げながら、一緒にばんざーいばんざーいとワッショイしていた。
国王と王妃は、その様子をポカンと眺めるしかできなかった。(そりゃそうだ)
ひとしきり己を称えて満足したオリエは、王妃様と、王妃様の身勝手な願いに、3ヶ月も手を貸し続けた国王陛下を、まとめてシメた。
何が「結婚以来、久しぶりに二人きりでゆっくりできたな、王妃よ」「やぁん、あなたったら!ウフフ、でも来年になったら王族が増えてるかもぉ……キャッ☆」だ。
そういえばこの国王夫妻は、司祭の専横を許し、国が傾くのをボサッと見ていた二人だった。
いわばラスボスじゃねえか。
「『救国の乙女の鉄槌』」
オリエの呟きと共に現れた太陽神と月の女神の幻影は、その謂れの通りに『国を傾け、害する者』に対して、正しい裁きを下したのだった。
続きはぼちぼち更新します!
(ここに具体的に書くとだいたいうまくいかないということがわかったのでこんな書き方になりました、すいません…!)