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7 理解者 後編

 お久しぶりです。宵ヤイバです。1週間近く期間が空いてしまいました。申し訳ないですほんと。

全てこの話ででてくる設定練りが原因です。

 ただ、今回で設定が確実に決まったので、次は、はやいです。たぶん。

  さて。とりあえず今の現状を確認しよう。

 僕はテスト勉強中のフユノとリファの手伝いをしていた。そして、その2人はとっくに寮に到着しているだろう。そこまではいい。そこからだ。


 この店の常連の1人。いつも読書をしている銀髪の少女。


 ふわふわした雰囲気を作る話し方をする少女は、僕が食器洗いを終えコーヒーを作ろうとしていたとき、いつのまにかカウンターの席へ移動し、そして、まっすぐ僕の目を見て聞いてきた。

 



「あなた……不老不死……?」




「ーーーは」



 思わず漏れてしまった困惑の一音。なんと返せばいいのかわからない。


 だめだもう一度整理しよう。

 目の前で僕をじっと見つめるこの子の話したことを全て信じるのなら、このふわふわ少女は学園のテストで常に学年1位でしかも異世界人。


 そして、なぜか僕が不老不死だと見抜かれた。厳密には超長寿命の不老不死もどきなんだけど。



「………」


「………」


「………あなた…不老ふ」


「あー聞こえてる聞こえてるから」 


「じゃあ答えてほしい」


「……まず僕は不老不死じゃない」


 たしかに不老不死の血を引いているが、僕は不老不死でないためそう答えた。返答としてはグレーだが、嘘はついていない。


 さてなんて返ってくるか。




「……?」


 


 ……?じゃねぇよ可愛らしくて首をかしげんな可愛いな。



「僕は嘘を一切つかずに君に答えた。だから僕も君にいくつか聞きたいことがあるけど平気?」

 


 この子の内情がまだわからないうちは、等価交換で情報を引き出したい。

 もし地雷踏んで店を吹っ飛ばされでもしたら困る。


「平気。ただ答えた分だけあとで私も質問する」


「じゃあまずは……と、その前に」


「なに?」




「コーヒーでも飲みません?」



ーーーーーーーーーーー

 粉砕したコーヒー豆にお湯を注ぐ。小さな「の」の字を描くように…なんてのは一度は聞いたことあるフレーズなんじゃなかろうか。

 できるだけゆっくり、時間をかけて注ぎ、コーヒーの完成をできるだけ先延ばしにする。


 これは勘だが、ここからの少女との対話はかなり疲れるだろう。だって訳わかんないしこの子。しかもなんか天然っぽいし。もしかしたら敵意を向けてくる可能性だってぬぐいきれない。

 御年500歳。この年でも未知って怖い。


 カウンターに座っている少女をチラッと見る。今はおとなしく、いつもの常連さんという印象だが、ほんとに異世界人だとすると流石に警戒してしまう。

 

なんのために、なぜこの店に、なぜ不老不死だと見抜かれたのか、後でする質問をいくつか頭に浮かべながら、完成したコーヒーをカップに注ぎ、少女の前に差し出す。


「どうぞ。結構美味しいと思うよ」

 

 僕の無害さをアピールしつつ、さりげなく自慢。いつもの僕を演じる。あくまで僕はただの店主。警戒はするけど、騒動は避けたい。


「……おいしい」


「でしょ?得意なんだ」


「いつから作ってる?」


「うーん… ちっちゃいときにお父さんから教わってからかな」


「それは……もう何百年前の話?」


「ストレートだなぁ。答えた後で質問するって言ってなかったっけ?」


「先に質問しないとは言ってない。セーフ。それで答えは?」


「幼かったから覚えてないや」


「……ずるい」


 お?思っていたよりもずっと平和そうな子かもしれない。実は僕へのジョークで不老不死?とか言ってきた可能性が浮上してきた。もしそうだったら恥ずかしいどころではない。自殺するレベル。死なんけど。


 僕用に作ったコーヒーを一口飲んだ後、僕からも聞いてみた。


「まず名前を聞いてもいい? さすがにそろそろ君をなんて呼べばいいのか困ってきた」


「それはそうだった。私はルマ。あなたはキオで合ってる?」


「合ってるよ。さっそくルマに聞きたい」



 ルマからそのことを聞いてからずっと聞きたかったこと。





「本当に『扉』から… 異世界から来たの?」

 



「ほんと」



 いやかっるいなオイ。



「えー…じゃあその経緯とかもろもろを聞きたい」



「その前に異世界についてを軽く捕捉しておきたい。こっちの世界ではまだあんまり知られてないから」


 少女…ルマは『異界の扉』の向こうの異世界について説明を始めた。


 前提として、この世界で魔法が普及してきた頃、つまり約8000年前には、既にルマがいた世界では魔法が当たり前のように使われていたらしい。 


 進みすぎた魔法文化は、やがて争いのためのものへと変化していき、新しい兵器として扱われることもしばしば。


 そして、動物や植物なんかにも魔力が宿ってしまい、いわゆるモンスターが生まれてしまったため、一箇所に集めていた。


 そして、僕たちの世界の人口密度の高い地域で多くの魔法が使われた結果、空気を漂う魔力が集まって空間を破り、2つの世界が繋がってしまったと。

 しかも運悪く、モンスターを集めていた場所に繋がってしまったらしい。


「あーだから『扉』からドラゴンやらなんやらのモンスターが出てくるわけか」


「そういうこと。あっちの世界の住人としても、自然発生するモンスターを倒してくれる『扉』の向こうの存在はありがたかった」


 なるほど。実はモンスターがどこからくるのか疑問に思っていたから解消された。



「つまりあの『扉』をくぐるだけで世界間の移動は可能」



「……え、そんなことでいいの?」



 かるくね?たしかにモンスターハウス状態のところに突っ込むのは無謀だけど、『扉』の奥深くまで辿り着いた冒険者は何人かいたはず。


「うん。そんなことでいい。でも推奨しない。あの『扉』は魔力が集まってできた物だから魔力のエネルギーがとてつもない。小規模なブラックホールレベル。近づいただけで普通死ぬ」


「だから誰も通ることができないってわけねぇ……」


 だとすると当然謎が残る。



「だとすると私はどうやって来たのか。そう思うのが普通」



「そうだね……ルマがそのブラックホールにも耐えられる特異体質だったとか?」


 敵意の無さアピールで冗談混じりで聞いてみた。実際は黙って話を聞けない店主の性だが。


 するとルマは驚きの顔をした。そんな表情豊かだったのか。




「ちょっと惜しい」


「え?」



「普通の人なら近づいただけでも死ぬのが『異界の扉』の最奥」





「でも例外もいる」




「……! なるほどね…」


 僕は察しが悪い方ではない。というより、むしろ良い方だ。長年の経験で察しの勘は冴えていったおかげかな。





「不老不死なら通れる。文字通り死ぬほど痛いし死ぬほど苦しいけど」





「それは…ルマの経験談?」




「うん。私の経験談。だけど私は不老不死ではない。()()


「今は、ってことは……」




「くぐったときは不老不死だったってこと」





「へぇ……」





 だめだ途中まで追いつけてたけど、最後でサッパリになった。

 不老不死が不老不死じゃなくなったらそれはもう不老不死じゃなくないか?ちょっとなに言ってるかわかんない。ほんとにわかんない。


 不老不死って途中でリタイアできるんですか?

 うちの祖父未だに不老不死として世界を彷徨ってるんですが?

 そもそもなんで不老不死が生まれたんですか?



「……色々疑問があるのはわかってる。顔に出てる」



「……ああごめん。えっと……じゃあルマは一時的に不老不死になってたってことでいい?」



「いい。そのとおり」



「随分軽いね……どうやって?」






「昔、まだ私が幼かったころに出会った人にその魔法をかけてもらった」






「え……?」




 ちょっと待てそれって……



「と、話が中途半端だけど、そろそろ帰る。これ以上遅くなるとさすがに警察に捕まる」



「……え?ああそうだね」


 その言葉で時計を見ると既に10時前。たしかにこれ以上遅い時間を小柄なルマが歩いているのは補導されてしまうだろう。




「そう。それもそうだ」




「…? それって?」


「警察に補導されること」


「それが何かあるの?」




「キオ…あなたはこの世界の発展が遅すぎると思ったことはない?」




「あー…るね」


 それはたしかに何度も考えたことがある。祖父と父の日記を読んだ僕は疑問に思っていた。


 魔法が発見されたのは8000年前。

 なのに社会的な発展がほとんど進んでいない。


 8000年以上昔から飲まれていたオレンジジュースやコーヒーなんかは、今でも形を変えずに存在している。

 警察もそうだ。魔法の発見によって変更された法律は無く、魔法に関わる法律が何個か追加されただけ。

 普通に8000年も時間が経てば、文明はさらに発展し高度なものになっているはず。



「私もそう思う。私のいた世界と比べるとあまりにも文明が進んでない」


 椅子にかけていたコートを着ながらルマは話を続ける。





「たぶんだけど、誰かの策で意図的に遅くしてる」




 

 また近いうちに話そう、会話は楽しい、と言い残して謎がさらに深まったルマは店を後にした。 


ーーーーーーーーーーーーーー


 僕は急いで店を閉めて、地下へ続く階段を降りていた。


「うわっ!」


 慌てすぎたせいか、途中で階段に躓き、身が宙に放り出される。

 

 少しした後、鈍い音が地下へ鳴り響く。



「いっ…たぁ……!」


 

 二階から地下へ続く階段から落ちたのだ。当然落下した距離は長く、怪我も深い。腕から落ちたからか、あさっての方向へと折れている。

 不老不死といえど、痛いものは痛い。超痛い。



 だがーー



「……久しぶりだなこれ」


 包丁で手を切ったとき以来か?






 怪我をした腕から光が発せられて、瞬く間に修復される。





 光が収まったときには、骨折の跡なんかは残っていない。まるで初めから怪我なんてしていないかのように。時が戻ったように。


 これがあるせいで寿命以外では死なないんだよな。僕は自殺なんかしても一瞬で治って寿命を迎えるまでは死なない。もちろんするつもりもないけど。

 


ーーーーーーーーー



 僕は地下室の扉を開け、机の上の開いてある日記、ではなく、約10年前の日記の全てを探す。


 ようやく見つけ、内容を確認するが、残念ながらお目当の記述はなかった。



「はぁ……」



 ルマがなぜこっちの世界へ来てもあんなに落ち着いているのか



 どうして死ぬほどの苦痛を伴ってでもこっちの世界へ来たのか



 そんなことは本人でなきゃわからない。




 だが、ただ一つ。ルマと話して確実にわかったことがある。





ーー昔、まだ私が幼かったころに出会った人にその魔法をかけてもらったーー




 確実に死ぬ『異界の扉』をくぐり、その先のモンスターパニックを乗り越えて、他人に不老不死の魔法をかけることができる人物。





 そんなことができる人物は確実に1人しかいない。







「……おじいちゃん……何やってたんだ…?」


 







 読了ありがとうございます。今回は設定開示が多かったと思いますが、最後まで読んでいただき感謝です。

 今回の話で、キオの祖父がまさかの異世界転移していたことが判明しました!しかも彼は今南極にいます。帰ってきてるんですよね。死ぬほどの思いをして。私には無理だと思います。

 ルマがこの話では、ただの設定を話すだけのNPCのようになってしまったのは、力量不足だなとしみじみ感じました。次の登場では可愛くします。

 

 次回の投稿がいつになるのかはわかりませんが、はやくだせたらいいなぁ、と達観しております。

 次の話も軽い気持ちで覗いていただけると嬉しいです!

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