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1.ある日突然に

いつか小説を書こうと色々考えてばかりでなかなか書き出せなかったんですが一念発起してみました。

よろしければお付き合いお願いします。


6/12修正しました。

 アジサイが咲き乱れしとしとと雨が降る、外からは近所の小学校から帰宅する子供たちの元気な声が聞こえてくる時間。

 少女は家の奥まった場所に有る居間で高校の制服姿で一人物静かに座っている。

 黒く長い髪の毛を後頭部で纏め、凛とした姿勢で彼女は仏壇の前に手を合わせている。

 室内に、音を発するものは無く外の会話が事細かに解るような中、静かに目をつむりたたずんでいる。

 立てられた線香が燃え尽きるほどの時間がたった時、静かに目を開け一人口を開く。

「おじいさま、今帰りました。」

 生真面目さを形にしたような口調で彼女は淡々と言葉を紡ぎ続ける。

「相続税などの支払いは残していただいたお金で何とかなると思います、生活費も私が高校を卒業するまでは切り詰めて働きながら通いたいと考えてます、あの時おじいさまはこんな古い家や道場なんて売っぱらって自由に生きろとおっしゃってましたが私には・・・・」


「ごめんください!」


 玄関の方から男の大きな声が聞こえる。

 何事だろうかと思いつつ彼女は表情を変えず立ち上がり玄関に向かう。

「はい、しばしお待ちください」

 ガラガラと引き戸を開くと背広を着た二人組が立っていた。

 少女は女性としては背が高く同級生の男子と並んでも差が無いの身長の為、目の前に立つ眼鏡の男とは戸を開けた瞬間に目が合う。

 その斜め後ろには背広の上からでも発達したその筋肉が隠せない大柄の男が立っており二人組というよりはセールスマンとボディーガードといった感じだった。

「えー、すみません筒井さんのお宅ですよね」

「はい、そうです、祖父は最近他界しまして御用があるとは思えないんですが・・・」

「いえいえ、本日は道子さん、あなたにご用件が有るんですよ」

「え・・・?」




 仏壇が有る居間に置かれたかれた大きめのちゃぶ台、その上座に道子がその反対側にセールスマン風の男とボディーガード風の男が座っている。

 座り始め数刻もしない間にもぞもぞと足を動かすセールスマン。

「あの、足を崩していただいてもかまいません、私はこれが慣れているだけなので気になさらないで下さい」

「いやー、すみません正座する機会なんて全く無くて先日も小学校に通い始めた娘に『お父さんそんなこともできないの!』って怒られたばかりなんですけどね」

「それで私に要件とは」

「筒井さん、いや筒井道子さん、あなた今お金に困ってますよね? そんなあなたにお金を稼げる話を持ってきました」

「・・・お帰りください」

 もし、目線で人が殺せるなら道子は確実に連続殺人鬼(シリアル・キラー)になれる視線で男をにらみつけるとおもむろにもう一人の男が口を開いた。

「おい、香田! なんでわざわざ話がこじれそうな言い方するんだ?! 嬢ちゃん悪かったな、すまないが最後まで話を聞いてやってくれないか?」

 大柄の男の方が道子の前で両手を合わせて米つきバッタのように頭を下げる。

「なんですか伊集院? ちょっとしたジョークのつもりだったんでしたが」

「自分しか面白いと思うような話はジョークって言わねえんぞ」

「高度な言葉遊びのつもりでしたが、やはり私にはそう言ったセンスは無いようですね……、では改めまして、私はヒラノインダストリーに勤務する香田進と言います、彼は伊集院耕太、本日は筒井道子様にお願いが有って拝見させていただきました」

目の前に座る香田と名乗る男は姿勢を正し道子の目を真っ直ぐ見据え口を開く。

「なんでしょうか? 私は平凡な高校生です、そんな私でも知っているような急成長をとげてる企業の方に来ていただけるような話なんて無いと思うのですが」

「失礼ですがこの件に関して色々調査させていただきました、筒井道子さんのご両親は幼いころに事故で生き別れになり、祖父である筒井新一さんに引き取られましたね、その新一さんも春に鬼籍に入られ親しい親族もいないあなたは天涯孤独の身になったここまではよろしいですね」

「あなたは何を言い出すのですか……?」

「新一さんは古流武術の道場を開いておりそこそこの門下生がいましたが体力の限界を感じ看板を下ろし道場を占めた」

「……ええ、幸い兄弟子さん達には恵まれ派手な生活をしなければそれまでの蓄えと年金で困ることなく高校にも行かせてもらえる事が出来ます」

「お聞きしたいのですが、酷な言い方をするとこのままですと質素な生活をしなければいけないのに何故高い税金を払ってまでこの家と道場をお残しになられたのですか?」

「それを答える必要があるのですか?」

 道子は感情を無くし射殺す目で香田を見つめる。

「いえ、必要はないです、これは私が興味が有って聞いただけですから、問題はあなたがお金に困っているという事実です」

「確かに一時的に収入がなくなり困窮すると思いますがそこまでは困っていません、それに人の家の内情に踏み込むなんて失礼かと思うのですが!」

 知らずに道子の口調が強くなる。、そんな彼女を見据えながら香田は一つの書類をちゃぶ台に置く。

「これは道場を含んだ家のの大きさから出した相続税の額なんですがこれが支払って今後どうするのかと、家を維持するのはいいのですが固定資産税なども払えるのかどうかと思うのですが」

 その紙に書かれた数字は今の道子の使える金額を大きく上回るもので、そこから先の見えない不安に書類にしわができるくらい握りしめてしまっていた。

「そこで提案があるのですが、あなたにやって頂きたい事が有りましてそれをやって頂けるのであれば当社がそういったものを肩代わりした上で給料をお支払いいたしますし、うまく完遂していただけるのならば高校卒業後の大学の等の学費並びに生活費の援助、よろしければヒラノインダストリーの就職も斡旋します」

 香田は満面の笑みでそう語る。

 話がいきなりすぎる、しかも自分に都合が良すぎる話にうさんく感じる。

 住宅街にあるにしては平屋の一戸建てとは別に柔道ぐらいなら楽にできる大きの道場が有る自分の家は広い。

 潰して、例えばマンションなどを建ててしまえばそれなりの物もできるであろうが住宅街であるが故の道の狭さや公共交通機関のなさが有り自分を騙してまで土地を奪おうとする不動産会社はいない。

 目的は何なのか解らない、表情には出さないが焦燥に駆られて思わず口を開いてしまう。

「何をさせたいのですか?」

「とある方の代わりにとある高校に通っていただきたいのですよ」

「・・・・・・はい?」


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