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90 『悲しみ、指輪』『見えない心』
★ お題:『悲しみ』『指輪』
水面に降る雨は私の悲しみの涙だった。
死と隣り合わせの仕事をしていた人は、時化の海で命を落とした。
あれから三年。時間は私を癒し、凍りついた時計は再び時を刻み始める。
さようなら、貴方。
私は指輪を海に投げる。
真夏の太陽が水面に反射し、その眩しさに私は目を細めた。
★ お題:『見えない心』
見えない心を見ることのできる眼鏡を発明した。
これで他人の心がお見通し。
手始めにあの美女を見るか。天才科学者の私に熱い視線を…え、後ろのイケメン見てる。私が邪魔?
あっちの美女は、口にするのもはばかれることを…。
どこもかしこも同じじゃないか。
私は眼鏡を外し、踵で踏みつけた。
(2017/06/22執筆)