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9 『ネクタイ、太陽』『ほんの一瞬の出来事』
★ お題:『ネクタイ』『太陽』
太陽系脱出速度の計算ができないと、帰宅した途端、娘が助けを求めてきた。普段ろくに話もしないのに、こういうときだけ物理教師の俺を頼る。
まあいいか。年頃の娘と話せるきっかけになるなら。
俺はネクタイを緩め、娘の隣に座る。妻の淹れたコーヒーの香りが子供部屋に広がった。
★ お題:『ほんの一瞬の出来事』
通り雨に降られて、軒下に駆け込んだ彼女。髪に落ちた雫が日を受けて輝き、慌てて走ったせいで少し頰が紅潮している。
鞄を覗き込み、小さくため息をついた姿が放っておけなくて、つい声をかけた。
そう。彼女を見たほんの一瞬の出来事。あれが物語の始まりだったのかもしれない。
※オーバー・ザ・レインボウシリーズの、ワタルの気持ちを表現してみました。
(2017/04/02執筆)