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1 『ペン、林檎』『僕を呼ぶ声』
★ お題:『ペン』『林檎』
作家志望だと告白した私に、祖父は使い古した万年筆をくれた。若い頃の自分と同じ夢を持つ孫に、叶わなかった夢を重ねたのだろう。
ずっと応援してくれたけど、一足違いで、作家になった姿を見てもらえなかった。
命日の今日は、万年筆で原稿を書こう。アップルティーの香りに包まれながら。
★ お題:『僕を呼ぶ声』
目を閉じると聞こえる僕を呼ぶ声。小さな女の子のようだが、誰なのか解らない。
決めた。正体を確かめてやる。
僕は目を閉じ声を追いかけた。遠ざかるそれを捕まえようと。
歩き疲れた頃、声が耳元で囁いた。
「やっと会えるね」
目を開けたとき最初に見えたのは、警笛を鳴らして迫る電車だった。
(2017/03/25執筆)