階段のその先は。
マサハルの靴を見つけたユキさん。
ユキさんはマサハルを見つけ出すことができるのか?
果たして、神社の前に落ちていた靴はマサハルのものだった。
ユキが悪戯で書いた「アサハル」の文字を指でなぞってみる。
マサハルは嫌がったけど、ボロボロになった今でも大事に履いている。
「マサハル。。。」
ユキは靴を抱き締め、神社へと続く階段を見上げる。
心なしか、いつも見る神社よりも暗く思えた。
心臓がドキドキしてきた。
マサハルは、変態にさらわれたのではないか。
最悪の事態が、ユキの脳裏に次から次へと浮かんでは消えていく。
時折聞こえてくるカエルの鳴き声が、不安な気持ちを増加させる。
泣いて助けを呼ぶマサハルの姿が目に浮かぶ。
息が荒くなり、こめかみに血が集中するのを感じる。
きっと、マサハルはこの階段の向こうにいる!
「マサハルゥー!」
大きな声で何度も名前を叫ぶ。
喉から血が出るくらい、大きな声で。
冗談じゃないよ。
マサハルはあたいの初めてで、唯一の子分なんだ。
マサハルを苛めて良いのは、あたいだけなんだ!
石の階段はすぐに終わり、木の根でできた天然の階段に変わる。
幅や高さが変則的で走りにくい。
何度か転びそうになるが、堪えてひたすら駆け上がる。
息が詰まりながらも、マサハルの名を何度も呼ぶ。
最後の二段は一気に飛び越えて、ようやく頂上に着いた。
古い社がひっそりと建っている。
太陽が大きく茂った枝に遮られ、辺りは薄暗い。
流れる汗はそのままに、マサハルの姿を探す。
「マサハル!」
社のすぐ横の木に、マサハルがロープで縛られていた。
ユキの声に反応し、マサハルがうなだれた顔を上げる。
口にはタオルが詰め込まれており、声を出せないでいる。
最悪の事態が現実になって目に飛び込んできた。
幸いなことに近くに人影はない。
きっと、あたいに気が付いて逃げたんだ。
マサハルを誘拐するような変態なんだから、きっと弱い奴なんだ。
今なら助けられる。
マサハルが必死に何か唸っている。
「すぐに助けるから、落ち着きなって」
ユキはマサハルに駆け寄ると、体を縛っているロープを解く。
すると、マサハルは自分の口からタオルを引く抜き。
「ユキさん!うしろ!」
「え?」
一瞬にして、背筋が寒くなった。
足音が近づいてくるのが聞こえた。
得体の知れない、だが、はっきりと悪意を持った何かが近づいてくるのを感じる。
そして、声が聞こえた。
「お、男の子は、ともだち。でも、お、女の子は嫌いなんだな。。。」