転校生は謎がいっぱい。
転校生は敵が味方か?
「マサハルのバカたれ!うんこたれ!うんこ男!」
マサハルはひどいんだ。
あたいと言う親分がいるのにさ。どこの馬の骨とも分からない女にデレデレしちゃって。
あんな下品な女にさ。きっと阿婆擦れさ。
…意味はよく分からないけど。
とにかく!
泥棒猫なんかには渡さないんだから。
あの女がやってきたのは、空がかすかに秋めいてきたある日。
短いスカートで、白くて細くて長い足を見せびらかしてるの。
膝小僧は小さくて。
なんて言うか。そう、塩大福!
じゃなくて、マカロン?みたいなさ。
白くて細い左手にチョークを持ち、黒板に書いた名前は「紅葉」だって。
秋に来た転校生の名前が紅葉なんてできすぎじゃない?
きっと偽名だよ。サスペンスドラマ以外で紅葉さんは見たことないし。
それに、左利きって。なんかカッコいいじゃん。ムキー!
クラスの男どもは歓声なんてあげちゃってさ。
でも、その時はまだ、マサハルは興味がなかったのかぼーっとしてた。
変になったのは、自己紹介の途中だった。
歓声をあげていた男たちはざわめいて、すぐにしずかになったけど、逆にマサハルは目を輝かせていたの。
だって自己紹介が、あたい達からすると凄く痛いものだったから。
言葉で骨折できるなら、全身複雑骨折間違いなしだ。
「守護神バステト様のお導きで、みなさまに幸福を届けるために、やって参りました」
なんだい?守護神?
でも、オカルト大好きなマサハルには直球ど真ん中だったようで。
紅葉さんはさらに続ける。
「これを見てください」
するりとシャツを上げてわき腹を出す。
青い血管が透き通るような肌に浮いていて、女のあたいも思わず生唾を飲んじゃった。
引いていた男たちも再び身を前に乗り出す。
が、やはり一瞬のこと。
紅葉さんの言葉で男たちはビビり始める。
「これ。なんだかわかりますか?」
紅葉さんのわき腹には、薄いピンクのアザがついていた。
そのアザは、不思議なことに星の形をしていた。
あれ?どこかで見たことあるぞ?
そうだ。マサハルだ。
マサハルの背中にあるアザと同じ形だ!
「私は、4000年前の地球を、悪の侵略から守った戦士の生まれ変わりなのです!一緒に戦った仲間たちは、転生を繰り返して、再び悪が攻めてくるときに備えているのです」
て、転生だと?
「戦士の生まれ変わりには、体のどこかに、このアザがあるのです!」
ということは、マサハルは戦士の生まれ変わりなのか?
マサハルは転生者なのか?
クラスがシーンとなっちゃった。
そりゃそうだ。
転生戦士の話をされても、小学四年生にはちょっと難しい。
中二くらいにならないとね。
なんでか、髭マッチョはニヤニヤして聞いている。
そうか、髭マッチョは中二以上だから理解できるんだね。
静寂を破るように、マサハルが立ち上がって叫んだ。
「そ、そのアザ!」
マサハルは、自分が転生者だと思ったのかな?
本気で信じてるなんて、、、あり得るな。
マサハルだし。
「ユキさんにも、そのアザありますよ!」
あ、あたい!?