呪いの書(エッセイ)
理由は省略させて頂くが、嫌がっている私にヤフオク(ネットオークション)をさせようとしている兄。
私は嫌で嫌で嫌で嫌で仕方がなかった。悩み続けて朝泣きしてしまったほどだ。
私は考えた。いつまでも悩んでいたくない。これから仕事に行くのだ。こんな目に隈か腫れがボヨヨンとできたようなズンドコ暗い顔で接客してたまるものかと。
出勤時刻まではあと15分。『出勤時刻』と『借金地獄』は読みが似てるなあと思いながら、私は裏が無地である新聞折り込み広告とシャーペンを持って居間のコタツ机の上でガシガシと次のように書き出していった。
やふおくいやだ やふおくいやだ やふおくいやだ やくおふいやだ やふおくいやだ
途中、『やくおふ』になりながら。私は正直な気持ちをつらつらつららと書き殴っていった。こうして体の中に溜まっていた負の膿虫を吐き出すのだ。きっと後は爽快になろう。私は明るい未来をいつも信じている。
15分で紙面半分ほどが字で埋まった。もう時間が来た。さてこれから仕事である。
残りの半分は帰って来てから埋めよう。
中途半端にスッキリした私は、仕事先へと向かった。
仕事先では。テレビで昨日に起こったニュースが流れていた。そのうちの一つが目にとまる。
『脅迫メールで主婦逮捕。“氏ね(しね)”“殺す”と一万個を書き送る……』
どうやら携帯画面いっぱいに脅し文句を書き連ね、相手に送信を数回と行ったそうだ。完全なる嫌がらせ。
ほほう、と私は茶をすすりながら椅子で踏ん反り返ってテレビを見ていた。
「はて、どこかで……?」
私は首を傾げる……既視感? お茶はぬるかった。
仕事から帰り紙面の残りを続きで埋めた私は、その紙に『呪いの書』と名を付けた。
火をつけたらよく燃えるだろうと思う。
《END?》
【あとがき】
やはり黒かった。ううむ。
まだ自分が手をつけていないジャンルに挑戦してみようと思って、禁断だったかもしれない『エッセイ』を書いてみた。いつも黒い訳じゃないはず。
……はず。
H20.11.14.