(7)
僕等を誘導しながら、先頭を走っていたフェンリルは城のほぼ中央、大きな観音開きの扉の前で立ち止まる。
「この中に奴はいんぜ」
城の間取り図を、頭に叩き込んでいるアネルカさんが「聖堂を兼ねた大広間ね」と教えてくれた。
そして東門の方角から、空気を震わせる程の爆発と上がる歓声。
「向こうも終わったみたいだな。とかげを呼びな」
出来る限り光量を抑えた光を、城の外に放つと闇に浮かぶ白いシルエットが、こちらに降りて来る。
背中に乗っているラインハルトさんを見て「宅配便で荷物が届いたみたいね」とアネルカさん。
大事な荷物ってラインハルトさん?
「さてと、大事な荷物を持って隠し通路に戻りたいとこだけど、どっかのお馬鹿さんが騒ぎを大きくしたせいでそれも難しいわね」
城の内部は沢山の兵士達が、僕等を探し回っていて大変な騒ぎだ。
誰にも見つからずに、隠し通路に戻るのは不可能に近い。
「姉ちゃん。戻るのが無理なら終わる迄隠れてるってのはどうだ?」
「お馬鹿さん二号は考え無しね。そんな長い間隠れられる安全な隠れ場所なんて・・・」
壁と同色に変化していくバーシルを見て、言葉が段々小さくなるアネルカさん。
「薄く伸ばして裏側に隠れて行けば、いけるんじゃないのか」
スライムは、生息地で色が変わる。
バーシルに保護色の能力が、備わっていてもおかしくない。
「いつその能力に気づいたのかしら?」
目が据わっているアネルカさんに能天気に、「ずっと前から」と答えるランスさんに「あんたは頭の中までスライムかぁ」とハイキックが飛ぶ。
「全く・・・もっと楽に潜入する方法も考えられたのに、ごめんなさいね」
床でピクピクと痙攣するランスさん。
こんな状況で文句なんて言える訳もなく、笑顔が引き攣る。
「私達はいくわ。頑張りなさい坊や」
僕のおでこにキスをして、ランスさんの首ねっこを掴んで引きずりフェンリルの俺様は唇でを無視して、アネルカさんはラインハルトさんを連れて去っていく。
あの・・・もう一つ忘れ物が・・・
「さあ親玉をぶっ飛ばしにいくぞい」
忘れ物が一人気合いを入れる。
「家が何者かに爆破されたらしいぞ。発明した物や研究成果が、あそこにあったのではないか?」
ナーガに伝えられた事実に忘れ物が「なんじゃとぉ!こうしてはおれん」と反応しアネルカさんを追い掛ける。
ドランさんの家が爆破されたなんて、酷い事をする人がいるもんだ。
でも御蔭でこの場に残ったのは、僕とフェンリルとナーガの三人になった。
「じゃあ行こう」
扉に手をかける。
「忘れ物じゃ」
既に去ったと思っていた、忘れ物が忘れ物って何か忘れてたかな?
「これを持って行け」
履いていた左右のブーツからそれぞれ火筒を取り出し、僕の両手に無理矢理握らせる。
・・・まだ持ってたんだ
「使い方は火をつけてから一秒から十秒で爆発する。親玉にガツンと噛まして来るんじゃぞ」
「一秒で爆発したら、投げる暇ないと思うんですけど」
「その時は、運が悪かったと諦めるんじゃ」
そんな危険な物いらないと返そうとしたら、ドランさんは既に目の前から消え、アネルカさん達を追い掛けていた。
元気過ぎる老人も困り者だ。
しょうがないなと火筒をベルトに差し、ゆっくりと息を吸い扉に手をかける。
「さあ行こう」
重い扉は、ゆっくりと左右に開いていった。




