(2)
カダルフィーク。
のどかで何もない村。
その村で、唯一の医者であるサイの家のドアがけたたましくノックされる。
眠りの中にいたサイは、うるさいなと思いながら光を家に取り入れる為窓を開ける。
まだ太陽は地平線に近く、患者が来る時間には早い。
意識がしっかりしてきて急患かと急いでドアを開けるが、そこにいたのは急患ではなくサイのよく知っている少年だった。
「ルークこんな朝早くにどうしたんだ?」
薬草の納品には早い時間である。
「父さんが帰って来ないんです」
薬になるライクの実を頼んだのは一週間前である。
薬師が採取に森に入って予定より遅くなるのはよくある事であるし、カイルは非常に腕の良い薬師だとサイは知っていた。
「予定が遅れるのはよくある事だしそんなに心配はないんじゃないか」
「もう予定より三日も遅れているんです。こんな事一度もなかった。」
「わかった。君は家でカイルが帰って来るのを待ちなさい。私は町に捜索隊を出してもらえないか嘆願に行ってくる」
頷いて家に向かって歩き出すルークを見送りながら、サイはたかが民間人に町が捜索隊を出してくれる事はないだろうと冷静に考えていた。
カダルフィークは人口も少なく王都に納める税も少ない。いわばあってもなくても王都にとってはどうでもいい村なのである。
残る手段は、この村で捜索隊の有志を募る事であるが、過疎の村であり若者は少なくカイル程森に詳しい人間はいない。
厳しい状況である事は間違いなかった。