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狼竜物語  作者: レオ
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(3)

 パチパチと暖炉にくべられた薪が、小気味よい音を立て部屋に温もりと明かりをもたらしている。


 ジャガ芋に程よく火が通り、同じ鍋に入れられた香り草がいい匂いを部屋に充満させる。

 

 父さんは食事が出来る前に、瓶の中身半分を空け既に赤ら顔になっている。


 酒がまわると薬師になる前にしていた、召喚術師時代の事をよく話してくれる。

 

 召喚術はそれ程マイナーな術ではないけど、素質に大きく左右されるし決まり事も多い。


 召喚獣は術者の魂の強さによって召喚される召喚獣の種類が違い、術者の魂を糧とするため呼び出し契約出来るのは一体のみで何らかの事情で契約を破棄すれば、二度とその召喚獣と契約は出来ない。 

 

 役に立つ召喚獣と契約出来るならともかく、何の役にも立たない召喚獣が出て来て己の無能さに打ちのめされる者もいれば、魂にそぐわない強力な召喚獣が召喚されて未熟な召喚者を逆に食い殺す事もある。 

 

 魂の契約を結べば召喚獣はマスターに従順だが、呼び出された時は召喚者と契約は交わしていない。

 

 全て父さんの受け売りで、魂の契約がどんなものか知らない僕には縁のない話しだ。 

 

 出来たてのスープを器に移し、酒の肴として魚を干して戻したのを父さんの前に置く。


「俺が契約してたのはシビルタイガーていう大型召喚獣でな」

 

 父さんは程よく酒が回り上機嫌だ。


 空で言えるほど聞かされた話だけど、シビルタイガーと言えば、二本の長い牙を持ち戦闘力が高く契約はかなり難しいと聞いている。


 本当の話しなら、父さんは召喚術師としても優秀だったのだろう。


「あっちこちの国から傭兵として雇われてだな」


 火の始末をしながら話し半分に聞く。


 召喚術師は、契約出来た召喚獣によって出来る事が全然違う一口に召喚術師と言っても、冒険を主にするもの清掃を主にするもの様々で、召喚術師だからこうしなければいけないという決まりはない。


 父さんが静かになり寝息を立てはじめたので毛布を掛ける。


 薬草を探しに奥に行くのなら、日帰りと言う事はない。


 探索にいく為の保存食と水を用意して、僕も寝る為に着替えてから部屋のランプの明かりを落とした。          


 

 

 翌朝「行ってくる」父さんはそう言って、森に向かって歩を進める。

 

 今回の探索は、残念ながら初めての場所に行くという事で、僕は留守番をする事になった。


 数は少ないものの、魔獣の類も出ないとも限らない為、危険と判断されたらしい。


「行ってらっしゃい」


 今回は早く帰って来れればいいなと思いながら、僕は父さんの後ろ姿を見送った。

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