(2)
買い忘れはないかな?ルークは両手一杯に抱えた袋の中を確認しつつ帰路に着く。
父さんが薬師という仕事をしている関係で、家は森に近い村はずれに建てられてて不便な事この上ない。
家に近付くと軽快な音を立てながら、父さんが外で上半身裸で薪割りをしていた。
昔傭兵をしていたのもあり、その身体は絞まり実際の年齢よりも若く見える。
「ただいま~父さん」
父さんの黒髪は汗で額に張りついていて、長い時間作業をしていたのを物語り、汗を肩から掛けた手ぬぐいで拭き取る。
僕と父さんの髪の色が違うのは、血が繋がっていないからだ。
自分の子供を育てるのも難しい時代に、十年近くも育ててくれたのだから、胸には感謝の言葉しかない。
「酒は買ってきたか?」
忘れてませんよとばかりに、袋の中からビンを取り出し見せると父さんは破顔する。
少しお酒は控えて欲しいけど、父さんのこの笑顔を見るのは大好きだ。
「サイさんが、ライクの実が欲しいって」
父さんの顔に険しい苦渋の色が浮かぶ。
顔を見るまでもなく難しい注文であるのは、薬草探しの助手をする事もあるのでわかっていた。
「もっと奥に行ってみるしかないか」と父さんが呟く。
危険な魔獣が出る事もある奥地に踏み込もうと言うのだ、それはとても困難なミッションと言えた。
不安そうにしている僕に気付くと、表情を和らげ「よし、食事にするか」と家に向かう。
僕にとっては食事だけど、父さんにとっては酒盛りの合図だ。
父さんの為に酒の肴は栄養のあるものにしようと、あれこれ考えながら僕は父さんの後に着いていった。






