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5、ようこそガート村へ

第三者視点からスタートします。


ほぼほぼ説明回です。

 

 ガラハド大森林帯。ラクリア最大の大陸、エンヴィー大陸中央部に広がる森林地帯である。最深部には人の手が入ることはなく、人外魔境となっている。また、その外縁を、木の年輪を模して、内輪部、外輪部と呼ばれている。


 このガラハド大森林帯は、どの国の領土にもなっていない空白地である。しかしながら、その内部には多くの種族の存在が確認されている。人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族の他にも、魔獣、幻獣、妖魔、妖精、精霊、さらには仙界住人の存在の形跡も報告されている。

 多くの資源を内在しており、外輪部に多数存在する町や村を通して、外部との交易を行なうことで、一定の勢力として認知されている。ガート村もそんな村の1つである。


 ガート村は周囲を2mの木製の塀で囲まれている。その入り口は1か所。簡素な木製の門が立てられていた。ゲートの前に、一人の門番らしき男が立っていた。

 彼の名は、イッシュ。まだ、少年の面影が抜けきらない顔。今年、門番となったばかりの男だった。手には真新しい槍、革を煮固めた胴鎧を着込んでいる。

 人口は300人に満たない小さな村だ。この門を通る者は大抵が顔なじみ、もしくは名前を聞けば誰か解るような間柄だ。不意の来客や行商、冒険者、はたまた盗賊や魔物に備えている。しかし、そんなことはめったにあるわけではない。ただ、イッシュは真剣にある方角を見つめている。ガラハド大森林帯内輪部、つまり、より森深い方角である。

 昨日の朝早くに送り出した狩人が1人戻って来ないのだ。あの森で夜を明かすような危険をわざわざ冒すような未熟な狩人ではない。イッシュが知る限り、村一番の狩人だ。嫌な想像を打ち消しながら、槍を握る手に、改めて力を入れた。


 日が出て間もない頃、内輪部の方角に動く2つの影を見つける。イッシュは目を凝らすが、朝靄に霞んでよく解らない。ひどくゆっくりとだが、こちらに近づいてきているようだった。

 そのシルエットを確認して、ぎょっとする。一見、人のようである。しかし、その頭からは、にょっきりと触手か角のようなものが左右に2対生えている。魔物だ!!イッシュはそう確信する。あと、10分もすると村に到達してしまうだろう。


 魔物の接近を村の住人に知らせるために、イッシュは慌てて村に入っていった。これが、イッシュ初めて経験する門番らしい仕事だった。ワクワクと緊張がない交ぜとなり、声が上ずらないように整え、叫んだ。


「ま、魔物だー!!戦える者は俺と来てくれー!他の者は家から出るなー!いいか!皆に知らせるんだっ!」


 こうしてガート村は早朝から騒然とする事となった。


                             

 †



 川沿いに移動を始め、かれこれ3時間。ガンファ曰く、もうすぐ村につくとのことだが、獣道がある程度で、人の手が入った形跡が見えない。夜が明け、森特有の朝靄が辺りを包み、10mも先は白い靄でまっすぐ進めているのかわからない。ただ、ガンファは慣れた足取りで森の中を進んでいく。俺はそれについていくことしかできなかった。


「じゃから、どうやったらあんな化け物に拳だけで風穴が開けられるんじゃ?

 そろそろ教えてくれてもいいじゃろう。それから、先ほど指先から何か出しておったろ?

 ワシ、見たぞ?」

「しつこいな。どうやったらって、こっちが知りたいわ!やったらできたんだもんよ。

 それに指から?そりゃ見間違いだろうに!あの化け物を倒して浮かれていたからって、

 夢でも見てたんじゃないか?それとも、もうボケが始まったか?」

「ボケとらんわい!!ワシはまだまだ現役バリバリの52歳じゃ!!」


 こんな軽口を言い合えるほど、俺とガンファは打ち解けていた。

 決して唇を重ね合った仲だから、というわけではない!!ないったらない!……というか、記憶から消したい。命の危機を乗り越えたことが、妙な親近感を生んでいるだけだ。うん。これ絶対。


「それに、指から何か出すなら、スキルや魔術でどうにでもなるじゃろう?」

「えっ?そうなのか?でも、魔法なんて俺は使えないぞ。めちゃくちゃ憧れるけど。」

「ほう……じゃあ、あれはスキルということかの。」

「うっ……。う、うるさい。人のことを色々と詮索するな!デリカシーのないオッサンめ!」

「ふん!ワシだって好きでこんなことを聞いとるんじゃないわ。

 村に変な奴を入れられんじゃろうが!……まぁ、ちょっとだけ好奇心はあるがの。」

「好きで聞いてるじゃねぇかよっ!このハゲ!!」

「ハ、ハゲ!?ハゲじゃとっ!全然ハゲとらんですぅー!最近ちょっと抜け毛が多くなって……

 あ、あと、生え際がちょっと後退して……ハゲとらん……ハゲとらんし……」

「あ…いや……なんか、ごめんなさい。」

 拗ねる52歳のオッサンなんて鬱陶しいことこの上ない。



「冗談は置いておいて、ユウマはなんであの森におった?冒険者か?」

「いや、違う。やっぱ、冒険者とかいる世界なんだな。ここは。

 俺は、えー……うーん、どう説明すればいいか……簡単に言うと異世界人だ。」

 あ、ヤベ。本当のこと言っちゃったよ。

「そうか。異世界人か。道理で……そうだったか……」

 ありゃ?納得しちゃったよ。これって、信じてもらえてない?俺って危ない人認定受けてる?

「え、えーと……本当に信じてくれるのか?こんな突飛なこと。異世界人だよ?

 あっさり受け入れすぎてない?ふつう驚くとかのリアクションとかあってもよさげだけど。

 それとも、異世界人との遭遇ってこのラクリアではよくあることなのか?」

「いや、驚いとるよ。それに異世界人は珍しい存在じゃ。

 大きな町を探しても1人か2人ほどしかおらんじゃろうし、ワシの村には異世界人はおらんかった。」

 へっ?それって結構いるじゃないか。大きい町が何人規模かにもよるけど……

「そ、そうなのか……あ、じゃあ聞きたいんだけど『メニュー』とか『ステータス』って使えるか?」

「ん?『メニュー』?それが何だか解らんが、『ステータス』なら解るぞ。

 ほれ、このステータスプレートがあるからの。おっ、ワシ、レベルアップしとるぞ♪」

 ガンファは懐から銀色のスマホほどの大きさのプレートを取り出した。どれどれ……



――――――――――――


■ステータス

名前/ガンファ・ドスティアームズ

Lv.4

種族/ドワーフ   年齢/52歳  職業/ハンター


スキル

‐【弩術】、【薬草術】、【絡繰り術】


――――――――――――


 

 おぉ……ほぼ看破で見られる情報と同じだな。ステータス、装備、称号、スキルのランクは見れないのか。看破で見れる情報の方が、優れているってことか。まぁ、そんなことガンファには言わないけど。



「ありがとう。そのステータスプレート?ってのが、身分証の代わりになったり、

 お金がチャージできたりとか……さすがに、そんな機能まではついてないよな?」

「何言ってるんじゃ?そんなの全部ついてるに決まっとるわ!それ以外にも、

 さっき見せたように成長に応じての自動更新、討伐した魔物の自動カウントなんかもあるわい。

 これを持って冒険者ギルドへ行けば報酬もでるんじゃぞ。」

 やっぱりテンプレプレートだった。一体どういう仕組か謎いオーパーツだ。

「それじゃ、今、俺は身分証がないってことか。それで村に入れるのか?」

「は?何のために今までバカ話してたと思っておる。ユウマを見極めるための会話をしておったんじゃ。

 まぁ、少し……いや、かなり変わった奴じゃが、合格じゃ。ワシがユウマの後見人となってやる。

 それに、森の主を共に倒した戦友じゃからなっ!!」

 な、なに いきなりイイ人ぶってんだよ!ど、動揺なんてしてないんだからな!!まぁ、ガンファはいいオッサンだというのは解ったが……

「何が『合格じゃ。』だよ!こっちはまだまだこの不思議世界は謎だらけなんだからな。

 覚悟しろ!今度はこっちが質問する番だ!!」

 

 それから、ラクリアの常識を色々と教えてもらっていた。

 

 まずは、通貨。単位は(ゴート)

 銅貨1枚=1G  大銅貨1枚=10G  銀貨1枚=100G  

 大銀貨1枚=1000G   金貨1枚=1万G

 それぞれ10枚で1つ上位の貨幣に両替できる。話を聞く限り1G=100円ほどの価値らしい。


 次に、暦。1年=12カ月=360日 1カ月=30日 1週間=6日

 それぞれ、光の日、火の日、風の日、土の日、水の日、闇の日で1週間となる。


 言語だが、沢山ありすぎてとりあえず、今、ガンファと話している『一般共通語』が話せたら問題ないそうだ。説明端折りやがったな。ガンファ……


 地理的なモノは、村に行ってから村長に聞いた方がいいらしい。本格的に説明するのが面倒臭くなりやがったな……


 この他にも、聞きたいことはいっぱいある。特に、魔法だ。折角、ファンタジー世界に来たのだ。魔法の一つや二つ使えるようになりたい。指から糸が出せるだろ?……あれは、なんか違う。あれは、あれで、カッコイイのだが、あれはなんかアレなのだ。しかし、魔法についての説明を求めても、無情にも


「村のクソ魔術師に聞け。」

 以上。   それだけですか!!説明雑過ぎない!?


 そうして、説明(笑)を受けながら朝靄の中を歩いていると、村らしき影が見えてきた。夜通し歩いて来たので疲労感はあるが、気持ちは軽かった。なんせ、初めての異世界村である。安全地帯である。魔物の心配や物音に怯えずに済む。

 

 村まであと100mほど。村の前では、何やら人が集まっている。ガンファの帰還を出迎えか?さすがに、村一番の狩人の人徳って奴だろうか。

 ガンファは大きく手を振り、帰還をアピールしてる。俺も手を振ろうと両手をあげると


 サクッ


 サクッ  サクッ  サクッ


 えーと、矢だ。もー、やだ♪


 なんて言ってる場合じゃない。どうなってんだこれ!


「おい!ガンファ!!どうなってんだよ!村から敵性判定受けてるじゃねぇかっ!!」

「うわっ!ワシだって、意味が解らんわい!!おーい!!撃つなっ!!撃つなーーーっ!!

 ガンファじゃーっ!!狩人のガンファじゃーーっ!!撃つのをやめろーーっ!!」

 

 ガンファが必死になってアピールしている。あぁあぁ、リュックの中から爪が落ちたよ。なんかグロっ……あ、リュックからウルフ・イーターの爪生やしてたら遠目では魔物に見えるのか。




 †




「ん?魔物が急に妙な動きをし始めたぞ!踊っている?

 まだ、距離があるが仕方ない。皆さん、矢を番えて!狙え……放てっ!!」

 イッシュを筆頭に村の前に集まった狩人たちが、謎の魔物に向かって一斉に矢を放った。

 しかし、朝靄と射程外ということもあり、触手を一本飛ばしたのみ。


「村長、村人の避難は?」

 集まった狩人の中のリーダー格を差し置いてイッシュがその場を仕切り、

 門の中で隠れている村長に状況を確認する。


「皆、家への避難は終了した。さすがガンファの一番弟子だ。イッシュ。」

 狩人たちの一斉射撃の勢いに飲まれ、村長は幾分か安堵の色が見える。


「師匠がいない今、私がこの村を守ります。皆さん、次の矢を番えて!今度は引き付けて……

 まだです。………まだです。……」


『――ーい。――つな~。うつな~~~~。がんふぁじゃ~~~。かりゅうどのがんふぁじゃ~~~。』


「クソっ、魔物め。師匠の名を語るとは、不届きなっ!!必ずしとめ・・・」


 バシンッ


「イタっ!誰ですか。今、殴ったのは!!今は魔物との戦闘中ですよ!」(キリッ)

 リーダー格の狩人がイッシュの後頭部を殴りつけた。

「アホか……ありゃガンファだ。ボケっ!師匠を殺しにかかる弟子がどこにいるんだよ。バカがっ!」

 リーダーだけでなく、他の狩人や村長までも、イッシュをまるで生ゴミを見るような視線を送っている。


『うつな~~~。わしじゃ~~~。がんふぁじゃ~~~。うたんでくれ~~~~。』


 朝靄の中、村の英雄の叫びが虚しく木霊していた。




 †




「お父さん!!心配したんだからねっ!!!」


 村に入ると、一人の少女が駆け寄ってきた。お父さん?ガンファの子供?

 んー……どういうこと?

 どうみても、ドワーフじゃないんだが……


「えと、ガンファ?あの子、誰?」

「おぉ、アイリ!!帰ってきたぞ。心配をかけたな。

 ユウマ、紹介しよう。ワシの娘のアイリーンじゃ。」


 うーん。130cmほどのガンファ、近くまで来たアイリーンは160cm以上はあるだろう。

 で、耳がとがっていて、蜂蜜色をしたサラサラヘアー。ガンファは汚いこげ茶のガシガシヘアー。

 それに、北欧風の顔立ち…今まで見たことのないような美人だ。これが親子?

 いや、これは金銭的なパパってヤツか?許せん!!でも、そんなこと聞けんしな……看破!



――――――――――――


■ステータス

名前/アイリーン・ファンドラ(ドスティアームズ)

Lv.1

種族/ハイエルフ   年齢/16歳  職業/薬師

HP 12/12

MP 53/53

腕力   6

体力   8

敏捷度 20

器用度 18

知力  20

精神力 24


加護:世界樹王の加護

称号:ハイエルフの王女

装備:樹王のネックレス

スキル

‐【精霊魔術/Dランク】【薬草術/Dランク】


――――――――――――



 ……うん。確実に親子じゃないな。でも、それよりも王女様だった。ハイエルフってなんだ?

 情報が少なすぎてツッコむにツッコめない。しかも、聞くに聞けない。


「あ、ユウマです。ガンファには森で命を助けてもらって……いろいろとお世話になってます。」

「いやいや、ユウマはワシが死にかけたところを2度も助けてくれおった。命の恩人様じゃ。」

「あの……アイリーンです。父が、お世話になりました!

 ユウマさん。本当に、本当にありがとうございます。」

 アイリーンちゃんはペコっと頭を下げる。潤んだ瞳で必死にお礼を言われる。……破壊力ありすぎる。

 

 本当は、もっとアイリーンちゃんとお話をしていたかったが、ボロボロの姿を心配する村人たちから治療を勧めでられた。言われてみれば……安心したら今までの疲労や傷が急に痛みが体を襲う。


 それで、村唯一の魔法使いである『クソ魔術師』ことマールさんの魔法で癒してもらえることになった。マールさんは人間の女性で、30歳前後の濃紺ロングヘアーが似合うクールビューティーだった。転生する前なら同い年くらいか……

 最後までガンファは自分の薬草で治療をするとごねていたが、村人たちが宥めすかして、なんとか治療魔法を受けさせることに成功した。後で聞いた話だと、マールさんもガンファの治療を嫌がっていたそうだ。村人曰く、とても仲が悪いらしい。

 治療はあっという間だった。


「%&#!?#’%##『治癒(キュア)』」


 マールさんが(かざ)した手が淡く輝きだし、傷口に向けられる。温かく、気持ちいい。痛みがスーッと引いていくのが解る。魔法スゲー!!ファンタジースゲー!!


 マールさんの魔法も気になる。とりあえず看破しとくか……


――【看破】に失敗しました。――


 あれ?失敗?失敗することもあるんだな。まぁ、疲れてると失敗するとかあるんだろう。あぁ……治療魔法、気持ちいい。温泉にゆっくりつかってマッサージを受けている感じだ。マーサさんが少し睨んでる気がするが、眠気が襲ってくる。


 治療後は、ガンファの家でたっぷり仮眠を取らせてもらうことになった。




 目が覚めると、もう日が大分傾いている夕方少し前といったところだろうか。周りを見るとガンファとアイリーンちゃん、そして知らないドワーフの男が話をしていた。


「お目覚めになられましたか。ユウマ殿。ガート村の村長、バラガと申します。

 この度は、ガンファを助け、森の主を討伐していただき、誠にありがとうございます。」

ガンファより少し背が高く、メガネをかけている。あるんだな。メガネ……

「ご丁寧にどうも。ユウマ・アリムラです。こちらこそガンファには命を助けてもらいました。」


「おう、ユウマ。ここの村長はワシの兄貴じゃ。お前の事情は、兄貴とアイリに話してある。

 じゃが、異世界人であることは他の者には隠しておく方がいいじゃろう。アイリも他言無用じゃからの。」

 アイリーンちゃんは頷く。


 村長ってガンファの兄だったのか。同じドワーフなのに、まったくタイプが違うようだな。

 看破で村長を見てみるが、戦闘系のスキルはなく、【鍛冶術】【交渉術】【商い術】など内政向きなスキルが並んでいた。


「ユウマ殿。この後、ささやかながら宴会の準備がしてあります。

 ガンファの帰還とユウマ殿の歓迎を祝うものです。少しでも楽しんでいただければ幸いです。」

「これはこれはご丁寧に。バラガさん。ご厚意に甘えさせていただきます。

 それから、殿って呼ばれるのは、どうもくすぐったくて……できれば、呼び捨てでお願いします。

 バラガさんのほうが年上ですし……」

 ガンファの兄にしては、なんとできた人なんだ。やっぱり村長なだけある。

 この人はいい人だ。間違いない。


 久々に宴会というものを堪能する。温かい食事と様々な酒、村人有志による歌や踊りなどが披露される。なんかすごいもてなされてるけど、異世界基準ではこれが普通なんだろうか。後から聞くと、森の主討伐のお祝いも兼ねていたらしい。毎年、村人にそれなりの被害が出ていたからだそうだ。


 なぜか、村長の家の隅っこの床に正座させられ、顔を腫らしている男がいた。村人に聞くとバカを反省させているのだそうだ。少しやりすぎではないかと、やめさせようと思ったが、異世界基準では、これが普通なのだろう。




 †




 宴会は良い時間になると自然解散となった。今日は、そのままガンファの家に泊めてもらうことになった。あのアイリーンちゃんもいるのでちょっとドキドキする。ラッキースケベとか起こらないだろうか。俺の【極運】よ!今こそ真の力を発揮せよっ!!

 うん……何も起こらなかったよ。解ってたよ……うん。

 

 久しぶりの酒に、とても気持ちがいい。だが、このまま眠ってしまう前に、自らのスキルの検証をしなければならない。MPもたっぷりあるからな。


 ベッドの上で、胡坐を組み考えてみる。


 まずは整理してみよう。


 あのウルフ・イーターを倒せた謎の力。

 それに、あの短時間に、ガンファやあの化け物からスキルを学習したことも気になる。

 この世界で生き残るには、自らのスキルを十全に使いこなせることが欠かせないだろう。弱いとすぐ死ぬらしいし……。


 おそらく、関係のありそうなスキルは【限界突破】【学習者】。これらをさらに詳細に看破する必要があるだろう。それ以外だと【極運】【超健康体】あたりが怪しい。

 次に、新たに手に入れた【薬草術】【鋼糸】【毒牙】のこの詳細と使用感を……まぁ、これらは追々確認していこう。


 詳細看破!!


【限界突破】:種族の限界を超えて、スキルやステータスの上昇が可能となる。なお、このスキルはステータスを強化するものではない。>詳細>瀕死の状態に陥ると、ステータスが一時的に100倍となる。この状態は1時間持続するが、それまでにHPを回復させないと、即死する。



 や、やばかった~~。ガンファのポーションが無かったら即死してました。俺。

 で、ビンゴ!やっぱりこのスキルにはスーパーな野菜的なステータスアップあったのか。発動が瀕死ってのが、いただけないが……わざと瀕死になろうとして死んだら目も当てられん。これで、素手で化け物に風穴を開けた理由は解った。


 にしても、MP10も消費するとガクっと疲れるな。いや、まだまだ余裕はある。


 次は……


【学習者】:対象のスキルを自らのモノにすることが出来る。なお、スキル学習の成功率は、対象と接する時間に依存する。EXスキル、ユニークスキルの学習は不可能。>詳細>実際、そのスキルを受ける。または、間近で見ると学習成功率が上がる。学習したスキルは、使用するごとに熟練度が上昇する。



 なるほど、どのスキルも間近で見たからな。そして、薬草をガンファに……あぁぁ!!!!いかん。封印した記憶が解かれようとしていた。再封印、再封印っと。

 んー……でも、治療魔法受けたんだけど、スキル覚えなかったよな……なんでだろ?まぁ、完全に納得はできないが、要検証ってところだな。


 次……


【極運】:極めて運が良くなる。>詳細>まぁ、色々都合のいい展開になるんだよ。


 って、なんだこれ!!詳細っていうか、神様の言い訳じゃねぇかっ!


 はぁ、なんか必要以上に疲れた……次……


【超健康体】:病や状態異常に極めて強い耐性を持つ。また、状態異常に陥った場合も、自然回復される。>詳細>即死になるようなダメージを受けても、即死せず、瀕死状態となる。


 おぉ、これと【限界突破】の合わせ技で死ななかったんだろうな。これであの化け物との戦闘での謎はある程度理解できた。ぶっちゃけ、運が良かった。あ、【極運】大活躍だったのね。色々都合のいい感じになってたわけだし……


 ふぅ……今日の検証はこの辺にしておくか。


 俺は、ベッドに横になると、すぐに眠りに落ちた。


 

最後まで読んでいただきありがとうざいました。

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