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16、出発

ようやく村から出ていきます。


7/9 街道の真ん中に倒れている女性に【詐術/Eランク】を追加。

 †



「お買い上げぇ、ありがとうございましたぁ!!」

 威勢のいいウリリの声が周囲に響きわたる。


 今日は行商ウリリの露店が最終日ということもあって、ガート村の人たちで村長の家の前の広場は賑わいを見せていた。ウリリも荷台の荷物を少しでも減らそうと格安のセールを行っており、それを狙った常連の主婦たちが殺気立って品物を物色している。

 ウリリがこの村に来て、3日。明日には人間の街エイラムに帰ってしまうからな。


 俺は、その様子を少し離れたところから眺めていた。少し視線を移すと、護衛のエギルが荷馬の前で、馬好きカインツに捕まっている。


 あぁ……エギル。ご愁傷様。あのキラキラした目をしたカインツに捕まると馬のどうでもいい話2時間コースだ。まぁ、この村の中で護衛の仕事もないから問題ないと思うけどな。



 俺は、そんな平和な風景を眺めながら、あの宴会後の出来事を思い返していた。


 宴会がひと段落したあと、俺はガンファに俺のずっと考えていたことを話しに行ったのだ。

 それは、村の外に出ること。

 異世界転生した後、この村の外に出たことのない俺にとって、他の街は魅力だった。

 ガンファに、そのことを伝えると、意外な答えが返ってきた。


『いいんじゃないか。男はいろんな物事を見聞きしてこそ一人前じゃからな。行ってこい行ってこい。』

 やけにあっさりしていた。今まで思い詰めてたのがバカみたいだ。


 そのあと、アイリとサフィーナにも俺がウリリについて行って、エイラムに行くことを伝えた。

 すると、二人もついて行きたいという。サフィーナは問題ない。俺が保護者みたいなもんだ。でも、アイリは色々と事情がある。どうするか迷っていると、さらにガンファが


『アイリもつれて行ってやれ。まぁ、クソ魔術師には俺が上手いこと言っておいてやるわい。』

 と男前な笑顔で言う。あ、男前は盛り過ぎたな。ふつーだ。ふつーの気持ち悪いオッサンの笑顔だった。

 



 しばらくすると、ウリリの露店から一人の女性がこちらにやってくる。濃紺のロングヘアーの女性、魔術師のマールだ。そう。俺はここでマールを待っていたんだ。


「あら、ユウマくん。ユウマくんは、ウリリちゃんところでお買い物してあげた?

 なかなかの品揃えよ?ほら、このベーキングパウダーでサフィーナちゃんにクッキーを作ってあげたら、サフィーナちゃんは……デヘ デヘ デヘヘ……」

 喋らなければいいのに……。見た目はクールビューティーなお姉さんなのに思考がとってもアレだ。

「あぁ、今日はマールに話したいことがあってな。」

「えっ♪ついにサフィーナちゃんを私にくれるの?」

 目を血走らせて急接近してくる。うん、平常運転だな。

「近い近い。で、違うから。俺、ウリリについていってエイラムに行くことにしたから。

 そんで、サフィーナとアイリもついていきたいって言うから連れていくんだ。」

「へぇ。そうなんだ。………ってえぇぇぇぇぇぇ!!!それ本気で言ってるの!?」

「やっぱりそうだよな。アイリの事情もあるし、外に連れ出すのはマズいよなぁ……。」

「私のサフィーナちゃんに会えなくなるなんて……私の幼女成分はどこから補給すれば……」

「「問題ある……って、へっ??」」

 奇跡的に言葉がシンクロする。

「ちょ、ちょっと待てマール。アイリが外に出るのが問題じゃないのか?サフィーナ会えない方が問題なの??」

「いやいや、ユウマくん。アイリが外に出るのに何の問題があるのかしら?サフィーナちゃんに会えないほうが問題に決まってるでしょ!!」

 微妙に食い違う二人。

「いやいや、マール。アイリはハイエルフだって隠してんだろ?そんなほいほい外に出てもいいのか?」

「えっ?そんなこと考えてたの?出ていいに決まってるでしょ?アイリを守ることと閉じ込めることは違うわよ。」

「いや、それはそうだけど。……いや、悪い。勘違いしてた。アイリのことは外にも出さず、ガート村でひっそり暮らさなければならないもんだと思ってた。違ったんだな。」

「当たり前よ。それにアイリならエイラムの街に行ったことあるし、ガート村の外は結構行ってるわよ。」

 はぁ……これ、俺の完全な一人相撲だったな。考え込んで突っ走ってた。

「そ、そうなのか……村の外知らないのは俺だけか?それ俺だけ浮かれてたってやつか?今更ながら、恥ずかしくなってきたぞ……」

「ふふふ。まぁ、貴方は仕方ないんじゃない?この世界のこと色々見てきたらいいじゃない。

 それに、この村に拘ることは貴方には何もないわよ。ただ……サフィーナちゃんを置いていきなさいっ!!」

「なんだよそれ!!途中まで良いこと言うなーって見直してたのに!感動を返せーっ!!」

「うるさいわよっ!それなら、私のサフィーナちゃんを返せーっ!!」

 くだらないことで言い争いを始める俺たち……何やってんだっけ?


「ユウマー。マール。めだってるー。サフィーナは、ほごしゃとしてはずかしーぞー。」

「ユウマさん。その……また、みんなにイジられますよ?『幼女を取り合う変態二人』とか……」

 ぐはっ……サフィーナとアイリ、それぞれにイジられてるんですけど……俺としたことが。

「う、うるせぇやい!」


「キャー♪サフィーナちゃーん♪しばらく会えなくなっちゃうのは寂しいわー。

 あとでクッキー焼いて届けてあげるから楽しみにしててね♪」

 マールはサフィーナの声が聞こえるなり、俺の前から瞬間移動のように消え去り、サフィーナに近寄る。

「クッキーすきー。よきにはからえー♪」

 サフィーナ、どうでもいいが、その言葉のチョイス……どこで覚えてくるんだよ!


 すべては俺の考え過ぎだった。村を出ることも、戻ってくることもすべては俺が決めること。

 シンプルに考えれば良かったんだ。


 


 ウリリの露店は、盛況のうちにすべての商品が売れたようだ。従業員のライキは店じまいを始め、荷馬車に備品を積み込んでいる。よし、ウリリたちに改めて挨拶しとくか。


「ウリリ。全部売れたみたいだな。完売おめでとう。」

 俺は、売上を計算しているウリリに声をかける。

「あ、ユウマさぁん。それにぃ、アイリさぁん、サフィーナちゃぁん。みんな明日一緒にエイラムに行くんだよねぇ?」

「よろしく頼むわ。俺、エイラムに行くの初めてだから解らないことだらけだしな。」

「ウリリさん。よろしくお願いします。道中、できることはお手伝いします。」

「ウリリー。よきにはからえー。」

 サフィーナ、それ流行らそうとしてるのか?絶対流行らんと思うぞ。


「あ、あの……いつかは命を助けていただき、ありがとうございます。従業員のライキといいます。

 エイラムのことは実家があるので、詳しいですよ。良かったら案内しますよ。」

 少し頼りなさそうな20代前半の男、ライキが改めて挨拶をしてくる。ゴブリンに襲われ瀕死になっていたときはかなりやつれていたが、今は少しふっくらしている。ウリリと逆だな。

「あ、じゃあ俺もあらためて自己紹介するな。ウリリの護衛をしてるエギルだ。道中の安全は、まぁ、任せろ。そっちのユウマもいるし、問題ないとは思うが……。」

 エギルも続いて自己紹介を終える。


「で、明日出発だそうだが、何時くらいに出る予定だ?」

 こうして、挨拶を終えると、明日の事の打ち合わせをしていった。




 †



 ユウマくんたちと別れた私は、後ろから声を掛けられた。振り返ると嫌な奴が立っていた。

 そう、髭モジャの頑固オヤジ、ガンファだった。

「ん?なに?私に何か用?」

 私は、少し冷たく言い放つとガンファも少し顔を顰めて

「アイリがユウマと一緒にエイラムへ行くんじゃ。一応、お前にも教えておこうと思ってな。クソ魔術師。」

「それならさっき、ユウマから直接聞いたわ。髭モジャさん。」

「そうか。お前もついていかなくてもいいのか?アイリがお前抜きで外に出るなんて初めてじゃろうに。」

 この頑固オヤジは、一応、この私の事を気にしているらしい。

「ユウマくんがついているわ。アイリーン様を縛り付けるのは良くないわよ?

 まぁ、私が言える立場ではないけどね。それに、私はいつでもアイリーン様を見守っているわ。」

「そうか。これでも父親だからな。娘の心配は人並みにするわい。ユウマも色々考え込んでおるみたいじゃった。」

「ユウマくん。どう思う?異世界人で普通の人と違うんだろうけど……」

「あいつは自分より周りの事を優先しすぎとる。良い面でも悪い面でもな。ワシにできることは、背中を押してやることくらいじゃ。」

「ふーん。髭モジャにしては、色々と考えてるのね。いいじゃない。それで。あとは自分で決めて自分で進んでいくのを、ただ見てればいいのよ。」

「ふんっ!!クソ魔術師めっ、言いおるわっ。」

 ガンファは鼻を鳴らすと、去って行った。


 見てるだけ……。それは時にはとても辛いことなんだけどね。


 はっ!早く帰ってクッキー焼かなきゃ……。



 †



 気持ちのいい朝です。

 今日、久しぶりにガート村を出るの。朝からウキウキして日が昇る前には目が覚めちゃった。

 ユウマさんが、一緒にエイラムに誘ってくれたのは本当にうれしかったな。


 大型のリュックには着替えや水筒、保存食などなど、準備してる時間も楽しかった。

 でも、今はもっとワクワクしてるの。だって……ユウマさんと一緒の旅なんだもの。

 このまま冒険者になって、ユウマさんと危険を潜り抜けて、その中で芽生える想い……そして、ついに二人は……はっ、いけない。思わず顔がニヨニヨしちゃってる。


「おっ、アイリ。準備は出来てるな。旅装も似合ってるな。美人は何着ても似合うからいいな。」

 ユウマさんが、私の事を見てそう言ってくれる。で、でも……び、美人って……きっとからかってるんだろう。ユウマさんって、平気でそういうこと言う人だからな。

「アイリー。おはよー。びじんはいーなー、びじんはー。」

 サフィーナちゃんがいつもの如く、ユウマさんに肩車をしてもらって挨拶してくる。最近、言動がユウマさんに似てきた気がする。良いのか悪いのか解らないけど……

「二人ともおはようございます。ユウマさんこそ、その格好、カッコイイ……ですよ?」

 うわっ……私何言ってんだろ。変な人って思われちゃう……ん?ユウマさんもアタフタしてる。ふふん、いつものお返しです。


 ウリリさんたちとの待ち合わせの場所に行くと、すでに出発の準備は出来ていた。従業員のライキさんは最終チェックなのか、ガート村で買い付けた品の帳簿とにらめっこしている。


「あ、ユウマさぁん!アイリさぁん、サフィーナちゃぁん!おはようございますぅ♪

 もう準備できたんですかぁ?早いですねぇ。こっちも出発準備完了ですぅ。いつでも出発できますよぉ!」

 私たちに気付いたウリリさんが手を振ってくれる。


 ユウマさんは、ウリリさんとエイラムまでの行程を聞いたり、休憩する場所や時間、野営地の確認などを話し込んでいる。

 うぅ……見た。また見たよ。6回。打ち合わせの間、ユウマさんがウリリさんの胸を見た回数だ。

 どうせ私の胸は、あんなに大きくないですよーだ!むむぅ……どうやったら大きくなるのか……

 私が両手で胸を抑えていると、いつの間にかサフィーナちゃんが面白そうに私の前までやって来ていた。

「アイリー?どうした?むねかゆいのかー?」

 突然、サフィーナちゃんが私の胸を鷲掴みにしてワシャワシャと揉み始めた。

「きゃっ!!サフィーナちゃん!!……ちょっと……だめっ!……あんっ……はぅん!!もぅ…」

「アイリー……ここかー?ここがええのんかー??」

 サフィーナちゃんは私の制止も聞かず、揉みつづけています。だめっ、変な声がでちゃう……


 ビシッ!!

「うがっ……」


 どうやら、サフィーナちゃんはユウマさんのチョップを頭頂部に受け悶絶してるみたい。

「ハァハァ……ハァ…ユウマさん、ありがとうございます。」

「い、いや……こちらこそありがとう。」

 何のことでしょう?ユウマさんは顔を真っ赤にしながら、前かがみになってお礼を言ってきました。お礼をされるようなこと、何かしたかな?

 

 そんな騒動もありましたが、いよいよ出発です。見送りには父さん、バラガおじさん、マールさんたちが来てくれました。他にも、村の人が数名、ウリリさんに手を振っています。あの人たち、ウリリさんのファンクラブらしいです。あの人たちも、あの胸が気になるからなのかな……むむむぅ。



 †



 ふぅ……ここまでの行程は順調だった。初日の野営で、アイリが張り切って料理を焦がすというひと騒動があったが、まぁ、問題ないだろう。この荷馬車は荷台にも人が乗れるので、人が歩かずに済んでいる。よくできた荷台だ。

 トラックのコンテナのような箱型になっており、箱の上にも荷物が積むことができる。積載量でいえば、2tほどは可能だろう。まぁ、今積んでいるのはその半分にも満たないが……。

 それに、馬もよく見るとデカイ。ばんえい競馬などで見るような重種というやつだろう。多少の坂は苦もせずにグングン引っ張っていく。


「あの、ユウマさん……【気配察知】で、さっきから気になる反応があるんですけど……」

 御者台で手綱を握っているアイリが心配そうな顔で、隣の俺に告げる。

「あぁ、俺も気になっていた。つかず離れずって感じでついてきてるな。数は2つ。さらに離れて3つと4つ。たぶん盗賊か何かだろう。」

「ユウマさん。そんなに離れた気配も気付けるんですか!?すごいです!!」

 アイリが感嘆の声をあげ、思わずニヤけそうになるが今はそんな場合じゃない。

「ウリリ、エギル。聞こえていたな?盗賊が襲ってくる可能性がある。今回の休憩は無しで行こうと思うが、大丈夫か?」

 荷台にいる二人に声をかける。

「と、盗賊ですかぁ!?こ、怖いですぅ……ど、どうしましょうかぁ……エギルさぁん。」

 ウリリはすでに涙目になっていた。

「まだ、襲われると決まったわけじゃないさ。ウリリさん。いざというときのために、ライキと隠れる準備だけはしといてくださいよ。」

 護衛のエギルは落ち着かせるように、荷台の床を指さす。この荷台は上げ底になっており、貴重品や人が隠れるスペースが作られている。ウリリもゴブリンに襲われた時はここに隠れていたそうだ。

「サフィーナも一緒に隠れてろよ。それから隠れてるときは静かにな。」

 念のために、サフィーナにも注意しておく。精霊魔法を使えるみたいだが、まだ子供のサフィーナにまで盗賊との戦闘に参加させたくはない。

「りょーかーい。」

 気のない返事で、ウリリの胸に飛び込んでいく。……羨ましくなんかないんだからねっ!!


 しばらく荷馬車を走らせていると、街道の真ん中に倒れている女性の姿が見える。

 嫌な予感がして、俺は目を細めながら、看破と念じる。


 職業欄に盗賊、【詐術/Eランク】とある。やっぱりか……


「アイリ、止まるなよ。盗賊の一味だ。どうせ、荷馬車を足止めして、仲間が襲ってくる時間稼ぎかなにかのつもりだろう。」

 俺は手綱を握っているアイリにそう告げる。

「は、はい!このまま避けて進みます。」

 アイリは手綱を操り、街道を少しそれて、女の横を通りすぎようとする。


「助けてぇー!止まってくださいっ!!止まってぇーーー!!体調がすぐれないのー!!」

 止まる気配のない荷馬車に向かって、女は大声をあげる。めちゃくちゃ元気じゃねぇかよっ!!せめて、怪我してるとか嘘つけよ!詐術スキル機能してないのかよ!誰が騙されるんだよっ!!

「お、おい!ユウマ。あの倒れている女性、助けなくていいのか?体調悪いって言ってるぞ?」

 おおい!いたよ!騙されてる人。エギルは不安そうに女を見ている。

「……エギル。本気で言ってるのか?体調悪かったらあんなに大声張り上げられねぇだろう。演技だよ。盗賊の一味!」

「そう言われれば……よく解ったな。ユウマ。」

 どうやらエギルには詐術スキルの効果はあったようだ。でも、これスキルの効果なのか?それともエギルの天然ボケなのか……いまいちよく解らん。




 しばらくすると、また前方で何かが見えてくる。一人の男がこちらに向かって走ってきていた。こちらに助けを求めている。後ろからは馬に乗った盗賊のような出で立ちの男2人に追われている。

 いや……これも怪しいだろう。なんで馬から走って逃げてこれるんだよ!!看破……やっぱりこいつも盗賊だった。にしても、盗賊の規模、デカイな。さっきのを合わせると13人か。今なら、各個撃破したほうが、安全か。逃げてきた男がLv.3、馬に乗った二人がLv.2か。

「おい。聞いてくれ。あいつらも盗賊だ。逃げてる男含めてな。これまでつけてたのも合わせるとかなりの規模だ。ここで数を減らす。エギルは後ろを見張っておいてくれ。アイリはこのままゆっくり速度を落とせ。」

 俺は、アイリとエギルに指示をする。ウリリ、ライキ、サフィーナも再び例の場所に隠れる準備をしている。俺は御者台の上に立ち上がり、後ろから馬で駆けてくる盗賊2人を睨む。


「た、助けてくれぇー!!盗賊に追われているっ!!匿ってくれっ!!」

「あぁ。解った。御者台から上に上ってくれ。」

 俺は、表情を変えずに手を差し出し、男にそう告げる。逃げてきた男はニヤっと笑い、荷馬車が止まるのを確認すると御者台に上がってこようとする。

 男の右手は懐に入ったまま、俺の手を左手で掴むと握られたナイフで俺に突き刺した。……いや、突き刺そうとした。しかし、男はそのまま硬直し、俺にそのまま荷台まで投げ込まれた。


 ドサっと大きな音を立てる男。後ろを警戒していたエギルが驚いて荷台に転がっている男を見る。

「おがっ……おがえっ……あ゛にお゛……い゛あ゛……」

 男は、俺を刺そうとした体制のまま固まっている。


「エギル、そいつ俺が毒で麻痺させてるから縛っといてくれるか。10分くらいで麻痺とけるからな。

 あと、サフィーナ。出てきて後ろの警戒を引き継いでくれ。何か見えたら叫べ。いいな。」

「わ、解った。でも、お前どうやって毒なんて……」

「りょーかーい。」

 エギルは呆気にとられて俺を見てる。サフィーナは状況に慌てる様子もなくマイペースだ。森で魔物を見ても、もう動揺することもなくなったしな。


 俺は、男を引き上げる際に、手から短い【鋼糸】と【毒牙】を発動させていた。そして、手から即効性のある神経毒を打ち込んだのだ。まぁ、致死量にはいっていないので死んではいないだろう。


 前方からは馬に乗った盗賊が一騎、荷馬車に殺到してくる。マズイ。後ろに回り込まれたっ!


「エギルっ!!後ろに一騎回ったぞ!!サフィーナっ!!下がれっ!!」

 俺は、目の前にまで迫った盗賊に鋼糸を飛ばし、その胸を貫く。馬は、騎手がいなくなり、手前で止まる。たぶん、殺した……けど、今はそんなことを考えている時間はない。


「わー!!はなしてー!!」

 荷台の後ろでサフィーナの声が聞こえる。


「へへっ!ちょっと小さいが可愛いじゃねぇかっ!!大人しくしねぇとぶっ殺すぞっ!!」

 盗賊らしき声も聞こえる。


「クソっ!白い嬢ちゃんが攫われたっ!!」

 エギルの焦った声が俺の思考を止めた。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

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