14、ポーション狂
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あれ以来、俺は午前中の仕事を終えると、一人森の中に入るようになった。それは、ある薬草を見つけたことが原因だった。
いつものように早朝の薬草摘みをしていると、見慣れない草が生えていた。シソの葉のように赤紫色をしたネギのような草。村の近くに生えている草は薬草、毒草、山菜など一通り調べつくした俺にとって、初めて見る草だった。
【ロイゼ草】:レアランクB。魔草。精製すると魔力ポーションを作成できる。ロイゼ草単体の使用では、その効果はほぼない。>詳細>ラファール草と一緒に精製することで効果は飛躍的に上昇する。
やっぱりあったのか!マジックポーション的なやつ。
ということで、早朝の薬草摘みとは別に、俺は午後も森に入って、ロイゼ草の探索をするようになっていた。その道すがら、ラファール草やポムポム草など見つけてはリュックに詰めていく。3日も続けると、かなりの量の薬草を集めることが出来た。
「ふっふっふ……はっはっはっ……あーっはっはっはっは!薬草の宝庫じゃないか!この森は!」
思わず悪役っぽい三段笑いをしてしまうほどだ。俺の目の前にはロイゼ草、ラファール草だけにとどまらず、悪ノリした結果、多種多様の薬草が目の前に山積みにされている。その詳細は、ここでは省いておこう。
「ふーふーふーふー、あーはーはーはー!」
なぜか俺の真似をしている白髪美少女、サフィーナがいる。おぉ、腰に手を置いて、素晴らしい高笑いポージングだ!!
マールの性癖を知ったからには、サフィーナを預けっぱなしというのは危ない。主に貞操の危機的な意味で……。そういうこともあり、午後は俺が面倒を見ることにした。これまで、ゴブリンやグレイウルフにも、遭遇したが問題なく対処できていた。それに気配察知があれば前もって戦闘を回避することもできる。なので、サフィーナも連れてきているのだ。
「よーし!サフィーナ。これ持って薬草小屋行くぞー!」
「おー。」
俺の後を、テテテテーっとついてくる。そして、俺によじ登り、いつもの定位置、つまり肩車のポジションにつく。
「ユウマ。ゴーゴー♪」
「よーし、走るぞー!!うぉおおおお!!!」
「キャハハハハー!!はーやーいー♪」
意外にも、森での薬草探索に、サフィーナが大活躍だった。最初は、変わった虫や花などを採って見せに来ていたのだが、そのうちレアな薬草やキノコなども集めてくれるようになってきた。実のところ、最初にロイゼ草を見つけてきたのもサフィーナだった。
「今日は、この後、マールの所に行くか?サフィーナ。」
森の中を走りながら、サフィーナに尋ねる。
「んー?うーんとね、いかなーい。」
ほっとする。
「マールのこと嫌いか?」
「ううん。マールすきー。おかしくれるからー。」
おぉ、これ、マールに聞かせると100%暴走するよな……
「でもー、かおをスリスリするのがちょっといやー。」
うーん。これは完全アウトだな。しばらくは、マールには近づかせないぞ!
一応、マールにも釘を刺しておいた。物理的に刺しても良かったんだが、寛大な気持ちでやめておいた。その時も、マールの荒れようはすさまじかったが……
*********
「と、いうわけで、しばらくはサフィーナの魔法学習は一時保留な。」
「ひぇぇぇぇっ!!ぬぁんどぇすってぇぇぇ!!!」
いや、驚きすぎだから。
「いやいや、自分の胸に手をあてて考えてみ?」
「……はて?」
「『はて?』じゃねぇだろ!サフィーナを変な目で見やがって!!うちのサフィーナに何かしてみろ!
ただじゃおかねぇぞ!!ガルルルルルぅーー!!」
「ひ、ひどいわぁ……私は、ただサフィーナちゃんの可愛さを五感をもって堪能しているだけなのに!」
「はっ?五感?「視覚」「聴覚」…これは、まぁいい。「触覚」…これはグレーゾーンだ。
程度の問題がある。でもな……あとの二つは完全にアウトだろうがっ!!!!
特に「味覚」って、やっぱりてめぇ!!舐めてたんじゃねぇかっ!!」
「え、えーとぉー。じょ、冗談ですわ♪おほほほー。」
「マール、お前に今から、大切な心構えを教えてやる!!よーく聞いておけよ!!
『イェス、ロリータ!!ノー、タッチ!!』はい、復唱!!」
「え? いえすろりーた のーたっち? なにこの呪文……」
「俺のもといた世界の紳士淑女たちが作った鉄の掟だ!!
少女とは愛でるものであって、触れてはいけないってことだ!!ましてや舐めまわすなんて暴挙、
犯罪者以外の何者ではない!!『イェス、ロリータ!ノー、タッチ!!』復唱!!」
「いぇすろりーた のーたっち!! ふ、深いわ……。そして、なんて美しい言葉の響き。
私、まだまだ未熟だったようね。ユウマくん。私、頑張るわっ!!」
「解ってくれればそれでいいんだ。ということで、しばらくサフィーナは連れてこないから。」
「ぎゃぁあああああ!!!そんな仕打ちは……せ、せめて一日一目見るくらいなら……」
「まぁ、それくらいなら許す。」
*********
なんとかなって本当に良かった。力じゃ絶対に勝てないからな。
薬草小屋に戻ると、アイリが準備をしてくれていた。アイリの希望で、マールの魔法教室には3日に1度のペースで行き、その他は、俺の手伝いをしてくれている。
「おっ、アイリ。いつもありがとうな。準備手伝ってもらって。」
「いいよ。別に、私も暇だしね♪」
ポーション作りにはその入れ物が必ず必要となる。保存の事を考えると、陶器かガラス製の瓶がベストだ。アイリは、陶器の小瓶をたくさん準備してもらっている。栄養ドリンクの容器程度の小瓶が100本ほど、他にも、栓をするためのコルクと油紙、止め紐、ラベル用の紙と糊などが小屋の作業台の上には並べられている。
「これだけ揃えるの大変だったろ?サフィーナにも手伝ってほしいんだ。面白い作業があるんだ。」
「おもしろいことー?するするー♪」
俺は作っておいた木版を取り出す。そして、それにインクをつけ、ラベル用の紙にポンっと押す。
「ほーら……見てろよ?」
慎重に木版を外すと、そこには『アリムラ商店 特製ポーション』と書かれた版画ができていた。
「うわっ、なにこれー!すごーい!!」
ちなみに、原版を作ってくれたのはアイリだったんだが……
「わっ、これ…私にこの前書いてって言ってたのだよね?どうやったの?」
「木に文字を彫り込んで、インクをつけて紙に押し付けたんだ。版画って、この世界にないのか?」
「うーん…わかんないけど、私は初めて見たよ。」
「サフィーナもはじめてー♪」
「では、サフィーナ二等兵!君の任務はこのラベルにこの版画を押すことである!!」
「さーはいーさー」
なんか沖縄弁みたいになってるけど、まぁ、いいか。
サフィーナはキャッキャ言いながら、ラベルに版画を押し始める。
「じゃ、俺もポーション作り始めるか。アイリは出来たポーションにコルクで封をしていってくれ。」
「了解であります!!」
ビシっと敬礼する。うん……俺のいた世界の挨拶といって教え込んだら、嬉々としてやってくれる。
ちょっと罪悪感があるけど、嘘じゃないよな。うんうん。
よーし、俺もそろそろ実験を始めるか。小瓶と手元に置き、ラファール草とロイゼ草を二つ手に取る。
そして、念じる術技!!
「『ポーション作成』!!」
――ピロリン♪【薬草術/Bランク】を取得しました。――
二つの薬草が淡く光り出し、液体になっていく。それを上手く、小瓶の中に入れていく。
ふぅ……できた。 どれどれ 看破 詳細看破
【魔力ポーション】:魔法薬。少量のMPが回復する。(MP30回復)多用すると副作用あり。>詳細>作成時、MP50以上込めると上位の魔力ポーションが作成できる。
おぉ……で、できた。できたぞー!!
ん?でも、これ……いつものポーション作成より疲れてる気がするな。おぉ、MPが普通の作成より減ってるぞ……魔力込めたわけでもないのに。一気にMP40も持っていかれた。
あ、これだ。【薬草術】を見てみると、新たな術技を覚えたようだ。『ポーション作成』しか、なかったもんな……知らなかっただけかもしれないが……。
とくにかく、新たに『混合精製』『一括作成』を使えるようになったようだ。
『混合精製』:二つ以上の素材からポーションを作成できる。1つの素材につき消費MP+5。
『一括作成』:一度に、大量にポーションを作成できる。量によって消費MPが上昇。
なるほど、ラファール草とロイゼ草の混合で+10消費、つまり魔力ポーションの作成にはMP30が必要ってことか。メモっておこう。
一括作成も、便利だな。MP消費は変わらない。これまで一つ一つ作ってたから、時間短縮になるのはデカイよな。よし、あとでガンファと相談することがあるな。
よーし!今日は、色んな組み合わせを試してみるか♪ふっふっふ……こういう作業は結構好きだったりするのだ。何と何を混ぜようか……これもいいな。あれとこれも……ふっふっふ
そしてその結果、どうなったかというと……
意識が飛んで、気絶した。遠くで、俺の名を呼ぶアイリとサフィーナの声がしたような気がした。
†
で、今は真っ赤に目を腫らせたアイリに説教をされている。かれこれ2時間ほどになるか。いや、本当に面目ないです。
正座をして、説教を受けていたら、サフィーナのツボに入ったのか、キャハキャハと正座してる俺の膝の上に座る。っておい!この子、拷問というものをわかってらっしゃる!!
あ……はい、聞いてます……はい……もうやりません……はい……はい……気をつけます。
その後、サフィーナを膝に乗せたまま1時間、ようやくアイリの有難いお言葉が終わる。
しばらく、生まれたての小鹿のような俺の足をガンファとサフィーナがツンツンしてきたときは殺意を覚えたが……大丈夫、ガンファしか殴ってない。
「ガンファ。前から気になってたことがあったんだけど、聞いていいか?」
ようやくアイリ目が三角から通常キュートモードに戻ったのを見計らって、俺はたずねた。
「ん?何じゃ?」
「俺がここに世話になって1月ほどになるけど、俺、毎日『簡易ポーション』20本ずつ作ってたろ?
1カ月、30日だから600本あるよな。税に使われてるのか?それとも行商に売ってる?」
常に気になっていたことだ。一応、ポーション作りという形跡的な仕事をしているが、どうなっているか。もしかしたら、全く役に立っていないって可能性もある。
「おぉ、計算が早いのぅ。まぁ……600のうち550本ほどは、行商が来たときにでも売るつもりじゃ。
残りの50本の内、10本くらいは村全体の共有財産、もしもの時のための備蓄に回されるだろう。
後の40本はエルフとドワーフの集落への貢物になる。毎年、ガード村からはそれぞれ100本くらいのポーションを納めているんじゃ。」
なんだ?この違和感……もしかして……
「それなら5か月で貢物分は作り終えるってことになるな。例えば、これまでの600本のうち貢物200本と、1年分の非常時の備蓄120本を除いた280本を売れば、俺はもう、行商に売る分以外は作らなくてもいい計算になるんじゃないか?」
「なに!?えーと、600から200を引いて……で、それから……えーと…120を引くんじゃったか?これがなくなって、えーと……」
ガンファが指を折りながら、計算をしている。例の2進法の指折りの数え方で。(第4話後半部参照)
たしかに、数を数えるという点だけでいえば、優秀な方法かもしれない。でも、計算をこの方法ですると訳が分からなくなる。案の定、ガンファの計算がめちゃくちゃなことになっている。
解ったことがある。ガンファはどんぶり勘定で、適当に売る分、備蓄分などを決めていたようだ。これは由々しき出来事だ。これは、もう少し突っ込む必要がありそうだ。
「ほ、本当じゃ。280本売れば、1年分の備蓄も貢物も上手くいくわい。」
ようやく計算が終わったようだ。
「ちなみに、『簡易ポーション』って行商に1本いくらで下してるんだ?」
「確か、1本30Gじゃ。店で買うと50Gはするそうじゃ。」
「利益率40%か……この辺は、相場がよく解らんから、買い叩かれているかどうか判断できんな。」
「り、りえきり?ぱあせと?何じゃ?よく解らんわい。ま、あと2週間ほどすれば、ウリリがやってくると村長が言っておったから、その時、聞いてみるかの。」
おっ、ウリリが戻ってくるのか。それは都合がいいな。
「で、相談なんだけど、明日からちょっと実験に時間を使いたいんだ。もしかしたら、高い値段で売れるかもしれん。」
「まぁ、それは問題ないぞ。それに、貢物はこれまでも、ワシらだけでなんとかやれておったからの。」
恐らく、村長のバラガさんがきちんと計算してくれてたんだろうな。あの人内政特化スキルだし。
この村にいたら、お金なんて使わない。ほぼ、物々交換だったからな。
俺なんて、所持金0Gだ。金目のモノはインベントリに入っているけど……
ウリリが来るんだったら、それまでにあれを完成させてみるか。
俺は、これまで書き留めた薬草ノートを開いた。
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ユウマの薬草ノート
◆ポーション作成の消費MP比較◆ ()内、消費MP
≪ポーション系≫
・ポムポム草使用時[ランクF]
簡易ポーション(1) ポーション(5) ハイポーション(50)
・ファミール草使用時[ランクD]
簡易ポーション(1) ポーション(4) ハイポーション(40)
・ラファール草使用時[ランクC]
簡易ポーション(1) ポーション(3) ハイポーション(25)
≪魔力ポーション系≫
魔力ポーション[ラファール草×ロイゼ草](30)
[ファミール草×ロイゼ草](失敗)
[ポムポム草×ロイゼ草](失敗)
≪???≫
・?????
≪解毒ポーション系≫
・毒蛇草×ポムポム草
簡易解毒ポーション(3) 解毒ポーション(15)
・
・
・
≪毒薬≫
・毒蛇草(毒強度F~D):致死毒
毒ポーション(3~5)
・
・
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最後まで読んでくださってありがとうございます。




