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7 一歩前進?

「すみれぇぇぇぇぇぇぇっ」


三時間目が終わったとき、私はそぉっと教室に戻った。

三時間目は理科と同じくらい嫌いな数学だったので、上原君の親切に甘えてサボらせていただいたのだ。


そぉっと戻ったのに、蘭のバカが大声をあげるから、クラスのみんながいっせいにこっちを向いた。

みんなの顔がにやにやしてる…。そりゃそうだよね。具合の悪い女の子を、そこそこ人気な男の子が保健室まで見に行ったんだもん。そりゃあ気になりますよねー。


「すみれぇぇぇっ!何があったぁぁ」

「ちょっと外でようか」

うぅ…クラスのみんな(特に女子)からの視線が冷たい…。

私は興奮状態の蘭を連れ、校内で「おかっぱ頭の女の子の幽霊が出る」と噂の女子トイレに向かった。



さすが、オバケ関連の噂の力はすごい。休み時間になれば女子(それもちょっとガラの悪い)がたむろしているのがトイレの常識なのに、ここは誰もいない。超静か。いかにも幽霊出そう…。


「すみれぇぇぇっ!で、どうだったの?!okだって?!」

「落ち着け!」

目を輝かせている蘭を、まずは一喝。蘭はすぐに大人しくなる。

私は息を吸って、話しだした。

「実はね―――」


話すこと、約5分。

こんなにかかったのは、ときどき「きゃぁぁぁぁっ」と奇声(ハートマークつき)をあげる蘭をいちいち一喝していたから。


「じゃあ…告白の返事はなしってこと?!」

「…うん」

「なにそれー?!?!すみれはこんなにドキドキして待ってるのに!人の気も知らないで!何なの?!」

「まぁまぁ…だってさ、告白した後にシカトされるよりは、全然いいじゃん…」

そう、そうなの。返事をもらいたいのもそうだけど、それ以前に、私は上原君との今の関係を崩したくない。

「でもさぁ…ふつうはもっと早く返事するでしょ!このまますみれが何も言わなかったら、すみれの告白がなかったことになっちゃうじゃん!」

「そんなことないって…。上原君は優しいし、そんなひどいことはしないよ?」

私が言うと、「まぁ、それもそうか…」と蘭はすごすご引き下がった。

「でも、最後に『告白ありがとう』って言ってくれたんでしょー!いいなぁぁぁぁぁ!青春!これぞせーしゅん!」

蘭、せりふからハートマークが飛んでるけどさ、あなた彼氏いるでしょ?

「青春、ねぇ…」

そうか、これが青春というやつなのか…。14歳にして、はじめての青春満喫中です。


気がつけば、蘭の顔がこれ以上ないってくらいののほほんとした笑顔になっている。もともと美人だけど、笑うとさらに可愛い。悔しいけど…。

「まーいっか!告白の返事の代わりに、『ありがとう♡』なんて言われちゃったんだもん、もうこれで脈なしの可能性は完全消滅!」

あははは、と、これもまたキュートな笑い声をあげる蘭。あ、『ありがとう♡』じゃなくて『ありがとう』だよ。





三時間目の英語が終わり、只今三時間目後の休み時間。でも蘭はALTの先生とぱーふぇくとな発音でおしゃべり中。ワタシ、エイゴ、ワカリマセーン!

蘭のほかに友達がいないわけじゃないけど、話す人もいなくてなんとなく時間をもてあましていると。

「隼人ー!」

げ!

扉の方から、私の恋のライバル、詩音の声がぁぁぁぁっ!

「詩音」

さっきまで本を読んでいた上原君が、顔をあげて席を立つ。待って待って行かないでーーー!

「ねぇ英語の教科書かして」

「英語?いいけど…なんで俺?(笑)」

なごやかにおしゃべりする二人。私も上原君と同じ質問をしたい。詩音ほかにも友達いるだろぉぉぉぉ!

上原君が英語の教科書を詩音に手渡すと、可愛い笑顔を浮かべて詩音が去っていく。


「Goodbye,see you!」

「See you!」

光り輝くような発音の会話が終了して、ALTの先生が教室から出て行く。蘭がこっちにやってくる。


「すみれぇ」

「…何よぉ」

私は打ちのめされてるんだ!幼馴染という強敵に!

「詩音、いたね?」

「うん…」

「あのさ…」

「何?」

「それとなく聞いてみようか?詩音に、上原君のことどう思うー?って」

「いいの?」

私は顔をあげた。

だって蘭はいままで、おしとやかでちょっと天然な、「恋バナ?ってなぁに?」みたいなキャラを突き通してきたのに。それに彼氏もいるし……。

「え、だって別に…。あ、もしかして私のキャラのこととか気にしてるの?」

「う゛」

図星です。

「すみれ、詩音にこんなこと聞くくらいで、私のキャラが崩壊すると思う?」

「確かに…」

「だから、この件は私にまかせなさーいっ!」


…ありがと、蘭。

私のリア充でキュートな親友のおかげで、一歩前進。友達は持つものだね!


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