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6 ラブ・ハプニング。

保健室のベッドに横になりながら、あーどのタイミングで戻ろうかなーどーしよっかなー、なんてことを考える。


教室戻って授業受けないと……授業……さっきの理科の劇的につまらない授業……上原君……


ダメだ…何考えてても上原君につなげてしまう…。


「保健室にいる間ずっと君のコト考えてたよ♪」なんて、ぜったい引かれるでしょ。そのことがバレるかは別としてさ。


でも考えずにはいられない。なんであの時、上原君はあんなこと言ったんだろう?私を助けてくれた…んだよね。そう考えていいの?

助けてくれたのはいいんだけど、上原君が何を考えてるのか、サッパリ分からない。本当に善意あふれる行動?それとも私を期待させて遊んでる?

ごめんね上原君、疑ったりして。でも、本当に分かんないんだもん。私のような恋愛ビギナーには、難問すぎるって。

脳内で、あの声が再生される。


――――先生、斑鳩サン今日の朝頭痛がするって言ってたよ?だから具合悪いのかも。


…やっぱりかっこいい。私、本当に上原君のこと好きなんだ。

ごろんと寝がえりを打って、心臓がバクバクしているのに気がついた。心なしか、ほっぺも熱い気がする。

もー、何一人でドキドキしてるんだろ!バッカみたい!

…でもかっこいいよぉ…。



保健室のドアが、ガラガラーっと開いた。養護の先生が教員室から帰ってきたのかな?

私と、カーテンで区切られた向こうのベッドにいる人が寝てるとでも思っているのか、足音が不思議なほど静か。…って、足音がこっちに向かってくる!

うわ、どうしよう…これって寝たフリでもするべき?!


その人物は、ちょうど私のベッドの前で止まった。カーテン越しだから、誰だか分からない。…なんか、あれかも、これって養護の先生じゃない気がする…。

呼吸の音が、かすかに聞こえてくる。少々息があがっている。え、どうしよ、もしかして「不審者」ってやつ?え?え?


「斑鳩」




―――魔法だ、と思った。


だって、今までバクバクしてた心臓が、すぅぅぅっと静かになったんだもん。へんなの。



え?え?なんで、なんでここに、「上原君」がいるの?


頭の方はパニック状態。でも私の心は、この声を聞いてなんだかずいぶん落ち着いたみたい…。



私はガバッと起き上った。

「は、は、はいっ」

うわっ声が震えてるよ。

「あ、開けてもいい?」

「う、うん」


少しためらうように、カーテンがゆっくり開いた。顔をのぞかせた、上原君。私の王子様。うん、やっぱり蘭の言うとおりだ。上原君は私の王子様だ。

上原君の、いつも通りの顔を見て、なんだか心が軽くなった。今なら、面と向かって話せる―――そんな気さえもしてしまう。


「斑鳩、えーっと…ごめんね、なんか、仮病使わせちゃって」

すまなそうにする上原君。

「ううん。全然、大丈夫…だよ!こっちこそ、ありがとう、助けてくれて。めちゃめちゃ助かったし」

ちょっとふざけ半分で言ってみる。全然緊張しない。こういうシーンって普通超ドキドキするもんじゃないの?

「めちゃめちゃ助かった?フフっ…ならよかった」

おかしそうに笑う上原君。

「あははっ!…でもなんで…?授業…」

そう、まだ二時間目終了のチャイムは鳴っていない。私のために、わざわざ、授業抜けてきてくれたの?

「あぁ、先生に言われたから。それに、斑鳩と話さなきゃって思ったし」

「そうなんだ…。ごめん、私のせいで授業受けられなくなっちゃったね?」

私がきくと、上原君は「へ?」という顔をする。

「え、だって、授業聞くより、斑鳩に謝る方が大切でしょ。斑鳩に迷惑かけてほんとに悪いと思ってたし」

こんなことを、大ざっぱにとらえれば「斑鳩の方が授業より大切」ということを、ふつうの顔でふつうに言ってのけるんだから、やっぱり上原君はすごい。やっぱ、ちょっと天然。


「う、うん…」


そうだ。そうだよ。私、この人に告白したんだ。それを考えたら、こんなに普通にしゃべってるって異常でしょ!しかも返事もらってないのに!


「……」


会話が途切れた。

気まずい空気。


「じゃ、じゃあ俺、帰る、から…。あ、大丈夫?一人で教室まで帰れる?」

「え?私、ホントの病人じゃないって」

「あ、そっか…あははは」

上原君につられて、私も笑う。もう、本当に天然なんだから。


二時間目終了のチャイムが、鳴り始めた。


その時上原君が、何か、何か言った。


「え?」

チャイム音が大きすぎたのか、上原君の声は聞こえない。そのかわり、上原君の唇が動くのを見た。

でも、それもどうやら見間違えたみたい。

上原君に聞き返すけれど、上原君はにこりと笑って行ってしまった。


――――今、私、見間違えた…んだよね?


心臓が、またバクバク言いだした。

ほっぺがまた、かあっと赤くなるのを感じた。



私には、上原君が「こくはく、ありがと」と言ったように見えたんだけど。


「ありがと」って何?付き合っていいってこと?それとも、ただ単に「告白してくれてありがとう!俺のこと好きでいてくれてありがとう!」っていう意味で、「付き合うの、オッケー!」ってことじゃない?



私の素敵なかっこいい王子様は、私を惑わせてきます。あ、ただ天然なだけ?

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