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第三話 ラブラブ大作戦を大幅に修正しなきゃいけないわ。

本日三回目の更新です。

 もし本当に『激むずかしい』モードなのだとしたら、今までイベントが発生しなかったのも頷ける。

 これは、ミーナとフィデル様のラブラブ大作戦を大幅に修正しなきゃいけないわ。

 私は前世の記憶を頼りに、今後発生するイベントを思い起こした。

 確か次の大きなイベントは、夜会だったはず。

 もうすぐ我が国は建国記念日を迎える。今年はちょうど三百周年とかで、学園でも盛大に夜会が催される予定なのだ。

 そこで、挽回してもらうんだから!

 私は強く決心し、早速行動に移した。


 と言っても、それがとにかく難しい。

 私とフィデル様とはできる限り接触しないようにしなければならず、それでいて、ミーナとフィデル様とが一緒に過ごす時間をできるだけ長く取らなきゃいけないのだ。仕掛け人が複数いるならまだしも、私一人しかいない状態じゃあ、フィデル様を避けて行動する、ということと、ミーナを焚き付けてフィデル様に接触させる、ということくらいしか方法がない。

 でも、それをどうやって実現しよう?

 悩んだ末、私は妙案を思い付いた。フィデル様に何か用があるときはミーナに仲介して貰えばいいなじゃい? そうすれば、私はフィデル様と接触せずに済むし、同時にミーナがフィデル様と接触する時間が増える!

 やだもー。私って天才ー!!

 ちょうどフィデル様にお伝えしたいことがあるし、早速ミーナに頼もうっと。


 私はクラスメイトであるミーナの机の前に立つと、腕を組んで高圧的に仁王立ちした。

「ミーナ、ちょっといいかしら?」

 ミーナは読んでいた参考書から目を離すと立ち上がり、私と視線を合わせる。さすがミーナ。目上の人間と話すとき、相手が立っていたら自分も立ち上がるってマナーをわかってる!

「パトリシア様、私に何かご用でしょうか?」

 尋ねてきたミーナに、私はまた鼻でフンとせせら笑うようにしながら言った。

「フィデル様に伝言を頼みたいの」

「え? ですけど……あの、今朝、他ならぬパトリシア様に、フィデル様に馴れ馴れしくするなと注意されたばかりですわ」

 ──あ。そういえば、そんなことも言ったわね。自分に都合の悪いことはつい忘れちゃうのよ。仕方ないでしょ、そういうタイプなんだから。

 さて、あの時は確かにそう言っちゃったけど、どうやってこの場を切り抜けようかしら? うーん、思い付かない。えぇい、押し通すっ!

「わたくしが直々に頼んでいるんですのよ? それとも、侯爵令嬢であるわたくしの言うことが聞けないというの?」

 苦しい、苦しすぎる。どこの子供かって言いたくなるくらい程度の低い言い訳だと自分でも思う。

 でも、ミーナは了承してくれた。あぁ、本当にミーナって素敵な女性だわ。一週間もあれば、フィデル様もミーナの魅力ですぐに堕ちるんじゃないかしら。

 クラスの違うフィデル様へと、私の言伝を持ってミーナが教室を出ていく。

 その後姿を見送りながら、私は一人うんうんと満足して頷いていた。


 夜会が開催されるまであと一週間。その間ずっとこの手で行こう。


 私はそれから、フィデル様と登校時間や下校時間をずらし、学園内でもフィデル様に会わないよう慎重に行動した。

 フィデル様の生活のタイムテーブルや、学園での時間割は、前世の記憶によってもちろん把握済みだ。だから、フィデル様に会わないという手段はかなり上手くいっている。

 だけど、問題はもう一つの方だ。ミーナにフィデル様と接触してもらうことに関しては、私が何かフィデル様に対して用事を作らない限り、発生することがない。私は苦心しつつ、どうでもいい伝言を作ってみたり、興味もない本を無理矢理貸し付けてみたりして、フィデル様への用事を作り出していた。

 でも、それも三日も経つとネタが尽きる。

 さて、次はどんな用事にしようか。そう考えていた矢先、つい先程頼んだ伝言をフィデル様に渡してきたミーナが戻ってきて、私に言った。

「あの、パトリシア様、大変失礼なことをお伺いするようですけれど」

 ミーナはいったんここで言葉を区切り、私を気遣うような上目遣いで見上げてきた。

 ズギュゥゥゥウン!!

 私のハートが撃ち抜かれた。何この可愛さ。これ見て好きにならない男とかいないでしょ!?

 鼻の下がでろんでろんに伸びそうになっていた私に向かって、ミーナは続けた。

「フィデル様と喧嘩でもされたのですか?」

「え?」

 ミーナの言葉の意味がわからず、聞き返す。

「フィデル様がご心配されていました。ここ数日、パトリシア様の様子がおかしいと。ちょうど、パトリシア様が私に仲介を依頼するようになった頃です。

 もし、何か後ろめたいことがあるのでしたら、早い内に、正直にお伝えした方がよろしいのではないでしょうか?」

 心底私のことを心配してくれているとわかる、切なげに寄せられた眉根に、私はまたまた

 ズギュゥゥゥウン!!

 とハートを撃ち抜かれた。さすがヒロイン、なんて魅力。なんて心優しい淑女なの……! 感動に打ち震え、膝が崩れ落ちそうになる。

 ちょっとっ、ダメよ、パトリシア。しっかりなさい! 耐えるのよ!!

 私は、悪役令嬢なのよ? これきしのことで心折れるだなんて、そんな状態で、この『激むずかしい』モードの世界でミーナとフィデル様のハッピーエンドが見られるとでも思ってるの?

「ありがとう。でも心配無用よ」

 私は髪をばさりとかき上げると、自分の席へと戻った。


 フィデル様が何を考えているかも知らずに。

深夜0時に第四話(最終話)を投稿します。

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