表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/4

第二話 自分の欲望には素直になるのが一番だと思います。

本日二回目の更新です。

 ヒロインであるミーナ・サラサーテは、下級貴族である子爵令嬢だ。あまり家は裕福でないものの、品の良さと可愛らしい外見を持ち、そして何事にも頑張って取り組むことのできる、正真正銘の淑女だ。もちろん、成績優秀で歌も上手。

 入学式で初めてミーナを見たとき、つい見惚れてしまった。

「お前、何見てるんだ?」

 とフィデル様に訝しい目で言われちゃったくらいだ。

 そして同時に、私は、ミーナに対して妙な親近感を覚えていた。何しろ私の前世の名前は、『加納美奈』。そしてゲームをプレイする際、ヒロインである主人公に付けていた名前は自分の名前をもじった『ミーナ』だったから。

 これはもぉ、フィデル様と幸せになってもらうしかないっしょ! 現れたヒロインが性格ブスだったらこんなこと考えなかっただろうけど、とにかく、ミーナってば可愛いんだもん。是が非でも、フィデル様とくっ付いて貰うしかない!!


   * * *


「貴女の馴れ馴れしい態度に、フィデル様が迷惑していると思わないの? 少し自重していただけるかしら?」

 腕を組みながら、フンと鼻を鳴らして言う。

 決まった……! これで、ショックを受けるミーナをフィデル様が慰めるイベントが発生するはずっ!

「あ……」

 ミーナが口元に手を当て、目に見えて怯んだ。あら、私の演技、そんなに迫力あったかしら? と思った途端、頭をガシッと何かが力強く掴んだ。その何かが、ぐぎぎぎ、と私の頭を左方向へ回転させる。

 首を回した先にいたのは、フィデル様その人だった。右手で私の頭を掴み、凄みのある笑みを浮かべて私を見ている。

「フィデル様、痛いですわ。放してくださいませ」

「パトリシア、まったくお前は……!」

 フィデル様はそのまま私の額にゴンと情け容赦のない頭突きを放った後、頭から手を放してミーナの方へと向かった。

「ミーナ、すまない。パトリシアが迷惑をかけたな」

「いえ、フィデル様。気にしておりませんわ」

「こいつ、バカだから何言われても気にしなくていいよ」

 仲良く会話しながら微笑み合う二人を見て、私は恍惚の想いを抱く。

 コレよ、コレ。この二人のショットが見たかったのよぉぉっ!! あぁ、夢のようだわ……。

 私がうっとりとしていると、背後から落ち着いた声が聞こえてきた。

「おはよう、パトリシア。なんだか楽しそうだね」

「レオナルド様……!」

 近くにいた私よりも早くミーナが反応し、スカートを摘まんで淑女の礼をする。私も慌てて同じように礼をした。


 レオナルド・ラミレス様。この国の第一王子だ。つまり、王太子様。レオナルド様は超完璧紳士だ。ゲームでは、王子としてのプレッシャーに人知れず悩んでいる設定だったけど、実物を見てみると、本当に悩んでるの? ってくらいに余裕があるように見える。

 そして、レオナルド様はフィデル様と幼馴染であり、親友という間柄だ。なので、フィデル様の婚約者である私は、学園入学前からお付き合いさせていただいていた。


「ミーナ嬢も、フィデルもおはよう」

「おはようございます」

「おはよう、レオ。あ、パトリシアに近付かない方がいいぞ。バカが感染うつる」

 フィデル様が私の腕を引っ張ってレオナルド様から遠避けた。レオナルド様は、あははと声に出して楽しそうに笑う。

「君たちといると生活に張りが出るよ」

 レオナルド様がそう言い学舎に向かって歩き始めると、フィデル様とミーナもその後ろに続く。私も三人の後に続いた。

「オレはもう少し平穏に過ごしたい」

 フィデル様がぼやくように言うと、レオナルド様がくつくつと笑った。

「そう思うなら、フィデル、君が頑張るしかないんじゃないかな」

 ミーナもフィデル様に微笑みかける。フィデル様だけが面白くないと言いたげな表情をしていた。


 三人の会話を聞きながら、私は一人うーんと悩んでいた。

 くそぅ。なんでだろう。なんでミーナとフィデル様のイベントが発生しないのかなぁ?

 丸暗記してしまっているゲームのセリフの通りにミーナに対してイチャモンを付けても、何故か上手くいかないんですけど。

 なんでなの──!!

 実は、無事にイベントが発生したのは、入学してから今までに一回だけ。ミーナとフィデル様が初めて出逢うというシナリオだけだ。廊下の角でミーナとフィデル様がぶつかるっていう、すっごいベタな設定。そしてその現場を、パトリシアが目撃してしまうってヤツ。

 そのイベントが発生しないと、フィデル様ルートが開通しない。

 言い換えると、そのイベントが発生したんだから、フィデル様ルートは開通してるはずなのよ。

 それなのに、それなのに、なんでイベント通りに進まないのよぅ……。

 今だってイイ流れだったのに、レオナルド様が来ちゃうし。ゲームではこんな風にレオナルド様が来ることなんてなかったはずなんだけどなぁ。


 うんうん唸っている内に、私は重大なことを思い出した。『レイジアント・デイズ』にはプレイ前に『難易度』を設定できたことを。

 全部で五段階あるそれは、超やさしい、やさしい、ふつう、むずかしい、激むずかしい、の五つだ。『激むずかしい』を選択すると、イベント発生条件が限りなくシビアになる。

 もしかして、この世界って『激むずかしい』モードだったりする!?

本日23時に第三話を投稿します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ