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第一話 記憶の欠片(7)

そして、三咲が徹を助けて、飛行艇に美紀を回収すると優希は、歌を歌いながら飛行艇を操る。


飛行艇は、ゆっくりと動き始める。


時限の扉に向かって確実に近づいていく。


優希「着いたよ…こんなに近いのに…遠かった次元の扉…」


これからが本当の戦いの始まりなのに緊張がない。


ひとつの戦いが終わった様な安心感すら生まれてくる。


理穂「どうやってこの扉を超えるんだ?」


優希「大丈夫!私は、わかる…この次元の扉の事は…」


あの塞ぎ込んだ優希の姿は、もう何処にも無い。


何かの達成感の様な物が優希を突き動かしている。


優希は、飛行艇の甲板に出ると天聖の杖を片手を上げて取出す。


「開いて…神の導きだよ…私達が…助けてあげるよ。だから、お願い。」


天聖の杖を大きく振り上げてクルクルと時限の扉に向かって回す。


そして、また、杖を振り上げて…


優希「神々の導き!次元の扉よ!開け!」


扉は、ゆっくりと徐々に開いていく。


そして、完全に開き終わった時、力を使い切った優希が倒れてしまった。


瑞穂「ダメ!飛行艇を操縦できる人がいない!」


今度は、開いた扉が徐々に閉じ様としている。


そして、飛行艇を操縦する事の出来ない瑞穂が飛行艇のハンドルを握る。


瑞穂「動いて…お願い!せっかくの苦労が…優希ちゃんの想いが…届かなくなっちゃう!」


焦る想いと裏腹に扉は順番に閉まっていく。


理穂「早くしろ!間に合わないぞ!」


瑞穂「動けーーーーーー!!!!!」


それでも飛行艇が動かない。


もうすぐ、次元の扉が閉じてしまう。


諦める事なんて出来ない瑞穂は、渾身の思いを込めて飛行艇を動かそうとしている。


すると、瑞穂の身体に変化が現れた。


瑞穂の身体に神の紋章が浮かび上がり光を放つ。


飛行艇が一気に加速して扉の中に突っ込んでいく。


理恵「お願い!間に合って!」


飛行艇が扉の壁に接触して大きな衝撃が走る。


そして閉じ終える瞬間に入った為か次元の扉に飛行艇が挟まれてしまった。


飛行艇が徐々に潰されていく。


飛行艇に鈍い音が走る。


[ギ、ギ…ギギ!!]


潰されていく感触が肌を通じて解る様になってきた。


理恵「ダメ!…キャーーーー!!!」


切羽詰まった状況にフレアが手を貸す。


フレア「僕が手伝う!瑞穂は、飛行艇を前に進めるんだ!」


そう言うと、フレアは、呪文を唱え扉の閉まる強さを和らげる。


しかし、それは、そんなに大きな力ではない。


それでも、必死に飛行艇を守ろうとしている。


そんな姿を見ていた理穂もフレアの想いに答える。


そして、理穂の身体に刻まれた神の紋章が光を放つ。


理穂の助けでフレアの力が何十倍にも増えた。


フレア「今だ!!!!」


その声に答える様に瑞穂の身体に刻まれた紋章も激しく光を帯びる。


瑞穂「うおおおおおーーーー!!!!」


その時、飛行艇自体が瑞穂とフレアの力に反応する。


そして水の神(瑞穂)、炎の神(理穂)の力が飛行艇自体に反応する。


二人の相反する力は、爆発と水流で飛行艇を前へと突き動かした。


それでも、危機一髪だった。


後、数秒遅れていただけでも飛行艇は、潰されていたのだと思う。


それ位に飛行艇の損傷は、酷かったのだ。


ほとばしる汗を拭う瑞穂。


あまりの衝撃に膝を落とし、呆然とした。


それは、瑞穂だけで無く理穂もだった。


同じ様にピンチを切り抜けた理穂も立っている事が出来ずに座り込んでしまった。


そして、瑞穂と理穂の目が合う。


自然に笑みが零れてくる。


瑞穂「理穂さん、凄い力だね。正直、驚いたわ。」


理穂「それは、瑞穂も同じだろ。お前も凄かったよ。」


そして、力を使い切った二人は、その場で深い眠りに落ちてしまった。


美紀「ここは…何?…凄く懐かしい…」


飛行艇の中を歩き始める私は、飛行艇の通路の壁を触れながら操縦室の方へ歩いていた。


そして、それに気付いた理恵と三咲は、身を潜める。


それは、仕方が無い事だと思う。


記憶が戻ってない私(美紀)を警戒するのは当たり前。


それも、この飛行艇に牙を剥いて襲ってきたのだ。


そして、寝そべる瑞穂の横で飛行艇のハンドルを握る。


(感じる…私は、神様の元に…この…飛行艇で…みんなと…)


記憶の断片が蘇ってくる。


そこへ、同じ様に目を覚ました徹がやってきた。


徹「三咲さん、理恵さん、隠れてないで出てきていいよ。美紀は、もうこの飛行艇も、みんなも襲ったりしないよ。彼女は、気が付いている筈だよ。」


三咲と理恵が顔を出す。


そして、三人で私(美紀)の元に集まってくる。


美紀「誰?」


徹「僕だよ。美紀…君は、この飛行艇で旅をしたんだよ。兄弟以上の絆の深い仲間たちと…」


美紀「うん…感じる。でも、想い出せないの。これ以上…」


そして、私(美紀)は、三咲と理恵の方を見た。


美紀「お友達の筈なのに…想い出せない…ごめんね。」


その言葉に警戒感が無くなった三咲と理恵が私の側に近付いてきた。


そして、目を潤ませて、三咲も理恵も私に抱き付き泣き出した。


三咲「いいの。美紀さん…あなたがここにいてくれるだけで嬉しい。」


理恵「戻って来たんだ…嬉しいよ。」


そんな暖かい言葉が欲しかった訳じゃない。


想い出せない悔しさなのだろう。


自然に涙が零れる。


三咲「慌てなくていいよ。ゆっくり思い出して…」


暖かい気持ちが嬉しかった。


この飛行艇も…ここにいる人達も暖かい人たちばかりだった。


だけど…

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