第一話 記憶の欠片(6)
記憶が戻ってないのは、私(美紀)だけになった。
頑なに徹の事だけを見ている。
そんな私(美紀)だった。
他を見ようとしない。
優希に対して拒否してしまっていた。
他の仲間たちが全てを想い出したのに…
記憶が戻ってない私(美紀)は、優希の事を嫌ってしまっていた。
そんな私の元に優希と仲間達全員が訪れて来た。
こんな事になるなんて誰が想像しただろう。
これがこの物語の始まり…
とんでない事が起こる前触れになる。
優希が私の元にやって来た。
仲間たちを連れて…
そして、今、神々の試練を潜り抜けて来た全員がここに集う。
優希が先頭に私(美紀)の元にやって来る。
一つの希望を胸に抱く優希は、私に近付いてくる。
美紀「来るな!徹を奪いに来たんだろ!」
怒りを顕わにする私に怯む事無く近付いてくる。
徹「来ちゃダメだ!このままでは、完全に美紀は、心を閉ざす。」
両手を広げて静止する。
そして、優希は、立ち止まり静止する徹を振り払い私(美紀)の元に来る。
優希「全員が揃ったんだよ。だから、後は、美紀ちゃんだけ!」
一呼吸置いた優希は、私に話し掛けようとした。
その時だった。
私の怒りは、爆発した。
神々の力がその怒りに働きかけたのだ。
私(美紀)の力は、途轍もなく大きい。
力を蓄え始める。
理穂「ダメだ!やばいぞ!優希ここは危険だ!」
優希「私が悪いの!だから、私はどうなってもいい…美紀ちゃんの記憶を目覚めさせなきゃいけないの!」
理穂は、優希を引きずり飛行艇に戻る。
フレア「美紀さんが暴走している…来る!あの時とは違う!物凄いエネルギーだ!」
優希「こんなの…こんな事って…ないよ…」
それを真正面から徹は、美紀を静止している。
怒り狂った私(美紀)を覆う様に…
徹「美紀の怒りは、この僕が全て受け止めてあげる。だから、その怒りを放っていいんだよ。」
そんな様子を見ていた優希は、震えが止まらない。
生身の人間が神の力を超えた大きな怒りの塊を受け止め切れる筈が無い。
それをたった一人で徹は、受け止めようとしている。
そして…
力が一気に放出される。
優希「嫌ああああーーーーっ!」
ところが、徹には傷一つ付いていない。
傷付けられるどころか私(美紀)の力を全て吸収している。
美紀「うわああああああっ。」
その声は、怒りではない。
悔しさから出ている様な感じがする。
こんなに好きなのにどうして…って、そんな叫び声に似ている。
徹が美紀目掛けて倒れて気絶する。
そんな徹を美紀は、精一杯抱き締める。
飛行艇の中では、優希が大声で泣いている。
三咲「こんな事って…どうして…」
しんと静まり返った飛行艇の中、辛い思いを背負った自分達の運命を感じ取る事しか出来なかった。
康介「行こう…もう、あの二人は、諦めるしかない。…扉が開かないかもしれない…でも、このままずっとここにいる訳にもいかない。」
所々で泣き声が聞こえる。
それは、この町を…学校を救ってくれたのは、徹と美紀。
そんな二人を置き去りにして前に進もうとしている。
心が痛む優希は、間に進むことが出来ない。
飛行艇を飛ばすことが出来ない。
元々、飛行艇を操縦出来るのは、徹と美紀、そして、優希しかいない。
優希が飛行艇を飛ばさない限り、ここにずっといる事になる。
理穂「優希!悔しくて…辛いのは、お前だけじゃない!」
優希「………」
理恵「私は、ここに残りたい。美紀さんを置いて行く事なんて…私には出来ない。」
三咲「私も同じ…でも、ここにいるだけじゃ、何も解決しない。」
理穂「飛行艇を出せ!…優希!」
優希「嫌…こんなのってないよ。無理よ…置き去りになんてしない。」
頑固な優希の想いを無視する様に理穂が怒鳴り声を出す。
理穂「行くんだ。飛行艇を飛ばせ!」
飛行艇のハンドルを持つ優希は、胸が張り裂ける様な思いでハンドルを持つ。
そして、そんな想いを吹飛ばすかの様に歌を歌い始める。
三咲「どうして…こんな時に…」
その透き通った声は、静まり返った船内に響き渡る。
そして、その時だった。
私(美紀)がその優希の声に引かれるかの様に飛行艇に近づいて来る。
理恵「美紀さんが飛行艇に近づいてくるよ。優希ちゃんの声に引かれて…」
三咲「徹君は、私が助ける!その間に美紀さんを飛行艇に回収して!」
康介「あれは…記憶の欠片が働いている。記憶の欠片が美紀さんをここに導いている。」:
理穂「凄いな…優希の信念は…」
そんな姿を歌いながら見ていた優希の声に強い思いが働きかける。
(優希:美紀ちゃん…届いて!この想い…この気持ち…私は、美紀ちゃんと一緒に行きたいの…戻って!お願い!)
そんな想いを胸に…心を精一杯込めて歌を歌い続ける。