第一話 記憶の欠片(5)
一方、瑞穂と康介は、優希の気配を感じ取っていた。
ただ、何かの気配としか感じ取る事が出来ない。
キョロキョロ周りを見渡すが周りには何も無い。
空気に異常を感じるが何も見えない。
瑞穂は、目を閉じて何を言おうとしているのか、そして、何の気配なのか探ってみた。
声が聞こえる。
(神の導き…)
瑞穂「何?…何なの?」
そこへ、兄の康介が瑞穂の側にやって来た。
康介「旅立ちの時だよ。行こう瑞穂!」
瑞穂「旅立ち…って…」
康介「行けばわかるよ。みんなが待ってる。」
瑞穂「みんな…って何なのよ…」
康介「僕は、全て覚えてる。だから、大丈夫!瑞穂には、記憶の欠片がある。あの声が聞こえるなら大丈夫だよ。…優希ちゃんが呼んでる。」
瑞穂「お兄ちゃん…何を言っているのかわからない…。でも、私は、お兄ちゃんに付いて行きます。」
瑞穂は、康介の手を握る。
康介は、瑞穂を抱きしめて、片手を天に翳す。
康介「我は、神々の命に従う!我らを集う者達の元に導け!」
二人を光が覆う。
そしてゆっくりと、姿が消えていく。
それぞれが優希の力に導かれた。
それは、方法が違っても、一つの所に集まってくるのには違いない。
導かれし者達は、ようやく次元の扉の前に全員集まり始めた。
まず、最初に来たのは、三咲と理恵だった。
二人の気配を感じ取った優希は、二人の元へ飛行艇を飛ばした。
二人とも意識を失い気絶している。
飛行艇の休憩室に二人とも収容すると、もう一つの気配がある瑞穂と康介の元に向かう。
康介に抱きかかえられた瑞穂を飛行艇に降ろす。
康介「瑞穂は、大丈夫。少し疲れて眠っているだけだよ。だから、心配しないでね。」
優希は、康介のそんな言動に違和感を持った。
優希「康介さん、お久しぶりです。優希の事を覚えているんですか。」
康介「僕は、神様に命を復活して貰ったのです。記憶が消えてしまう事は、ありません。ただ、神々がそれを望んでいるなら…と、記憶を無いものとして封じ込めていただけです。だから、優希ちゃんの事は、覚えてますよ。忘れたりなんかしてませんよ。」
ほっとする優希だったが瑞穂と三咲や理恵に記憶が無い。
あるのは、記憶の欠片だけ。
その頃、瑞穂が目を覚ます。
瑞穂「ここは…どこ?何か…懐かしい感じがする。」
優希「ここは、飛行艇の中ですよ。私は、水沢優希です。」
瑞穂「優希ちゃん?タレントの?どうして…でも、前に会ったような…」
瑞穂の側に優希が近付く。
優希「心配しないで…私が瑞穂さんの記憶を想い出させてあげる…」
そんな優希の言葉にピンときた康介は、気配の元が気になった。
康介「じゃあ、あの気配は、優希ちゃんだったんだ。」
優希「うん、声が聞こえたんだね。優希の声が…嬉しいよ。」
そして、瑞穂の両手を握る。
優希「目を閉じてください。私を感じて下さい。」
瑞穂に優希の力を注ぐ。
そして、記憶の欠片を壊して全てを想い出させる。
すると、不思議な事が起こる。
瑞穂の身体から神の紋章が浮かび上がる。
それは、理穂と同じ様に…
理穂「神の紋章…優希の力は、凄い…フレアと同じ。」
記憶が蘇ってくる。
そして、瑞穂は、ゆっくり目を開ける。
瑞穂「ありがとう。優希ちゃん…想い出したよ…全部。」
優希「ううん…いいの…後、三咲さんと理恵さんがいる。」
大きな力を使った優希は、フラフラになる。
そして、バタンと倒れ込んでしまった。
瑞穂「優希ちゃん!しっかりして!」
フレア「瑞穂さん、久しぶりだね。大丈夫だよ。優希ちゃんは、力を使い切って眠っているだけだよ。少し休ませてあげれば、すぐに良くなるよ。」
瑞穂は、優希を抱いて休憩室に運ぶ。
休憩室には、三咲、理恵、優希の三人が狭い所で寝ている。
そして、康介と瑞穂がそこで話をしている。
瑞穂「想い出すな…この飛行艇もこの休憩室も…確かに辛い思い出だったけど…でも、楽しかったな。」
康介「それが、仲間だと思うよ。だから、辛くてもそれは、いい思い出になる。」
瑞穂「新たな戦いが始まるんだね。だから、私達を神々が導いた。」
康介「ここまで出来たんだ。僕たちは、負けないよ。」
瑞穂「そうだね。みんなの力があれば、きっと乗り越えられるよね。」
気持ちを一つにしようとしている。
理恵と三咲もみんなと同じ様に優希が記憶を呼び覚ました。
そして、扉の向こうに行くのがもう目前に迫っている。
ただ、私(美紀)の事が気に掛かっている優希だった。