第二話 異世界(10)
気づかれない様に間合いを詰めて、全員が木のスティックを振り上げる。
そして、「行っけー!!!」その言葉を合図に全員が襲い掛かる。
慌てふためいたブルーボールは、逃げ場を失った…かのように思えた。
しかし、青い光を強烈な光に変えて反撃してきたのだ。
そして、暗闇に慣れた目を晦まし、攻撃を仕掛けてきた。
優希「わっ…やられた…前が見えない…」
その後、優希の身体に”ズキン”とした痛みが走る。
ブルーボールの攻撃を受けてしまった優希。
優希「痛い!ううっ!」
攻撃されている優希の背後から三咲がそのブルーボールを素手で捕まえる。
そして、あらかじめ用意していた袋に詰める。
その様子を見ていたブルーボールは、慌てふためき逃げて行ってしまった。
攻撃を受けた優希は、しゃがみ込み蹲っている。
徹「大丈夫?優希ちゃん。」
優希「うん、大丈夫。軽い火傷みたいなものだから…」
三咲「ちょっと待って…傷薬を持ってるからそれを使って!」
優希「ありがとう、三咲さん。」
美紀「優希ちゃん立てる?」
理恵と理穂に抱えて貰いながら優希が立ち上がる。
優希「ありがとう。」
三咲「優希ちゃんのお蔭で灯りを捕まえられたわ。これで、前が見えるよ。」
捕まえたブルーボールに刺激を与える。
すると、ブルーボールが反応して光を発光させた。
優希「うん。明るい…大丈夫、これで前が見えるね。」
瑞穂「ありがとう、優希ちゃん…それから…ごめんね。」
優希「どうして謝るの?」
瑞穂「だって、私…」
優希「それを言うなら優希だって…ごめんなさい。」
何かが吹っ切れた様な瑞穂と優希だった。
互いが互いの非を認め強い絆で結ばれる。
徹「行こう!この先もどんな魔物がいるかわからない。」
先を急ぐ私達は、また、ブルーボールとミリアム自身で発光させる光を頼りに前へと進む。
長い通路…その道のりは、そんなに無い筈なのに遠く感じる。
たぶんそれは、この入り組んだ通路がそうさせているのだと思う。
暫く歩くと広い場所に出る。
そこは、大きな空間になっていて下を覗くと10メートルはありそうな高所だった。
そして、悪い事にそこには、たくさんの魔物の気配がする。
唯一そこには、天井から外の少しの灯りが漏れていた。
それが、唯一の光になる。
夜になって光が完全になくなる前にここを突破しないと私達は、魔物の餌食になってしまう。
手すりも何も無い高所で足元もいつ崩れるかわからない。
そんな所を通過する為に私達は、強い緊張感に包まれた。
私達は、そこに挑む前に作戦を練った。
美紀「ここで光を使う事は出来ないわ。唯一外の光で動かないとたくさんの魔物に気付かれてしまう。」
瑞穂「私にちょっとしたアイデアがあるの。説明させてくれる?」
瑞穂は、その作戦を事細かに話していく。
その作戦とは、まず、ミリアムが細い紐を持ってこの先にある奥の通路の柱に一回りしてまた戻ってくる。そして、その紐に今度は、太い紐を縛り付けて柱を回す。二重にした太い紐を持って私達が一人づつ進む。
時間が掛かるがその手立てしか今は無かった。
ミリアムが細い紐を持って幅5メートル程のところを進んでいく。
紐を持っているためか足元が時折取られ、落ちそうになる。
私達は、そんなミリアムをドキドキしながら見守る。
そして通路に辿り着いたミリアムは、一本の柱を見つけ大きく円を描く。
その後再び私達の元に戻ってきた。
ミリアムが回した細い紐に太い紐を縛り付けて慎重に細い紐を引っ張っていく。
何もかも順調にいく様に思えた。
しかし…
三咲「うん!?動かない…何か引っ掛かっている!」
徹「ミリアム、どうなっているか見て来てくれないか?」
ミリアムは、紐を見失わない様に再度、その場所を渡っていく。
『見つけた!紐が噛み込んでいる!』
紐の噛み込んでいる所を見つけたミリアムは、紐を外しに向かう。
『取れない!』
強く引っ張れば紐がちぎれてしまう。
リスほどの大きさのミリアム。
さほど大きな力が出せる訳でも無い。
徹「ミリアム!待ってろ!僕が行く!」
そう徹が言うと命綱無しで慎重にその場所を目指し渡り始める。
私は、そんな姿を見て本当に叫びたかった。
命懸けの綱渡り…
その言葉がマッチする位に慎重に渡り始めた徹。
小石がポロポロと下に落下する。
魔物たちの気配を感じ取りつつ、徹の行く先を見つめていた。
ようやく徹は、噛み込んだ紐のある場所に辿り着いた。
腰をゆっくり降ろし手を伸ばして紐を外そうとしている。
神の力さえあれば、そんな事は、簡単に出来る。
でも、神の力を無くした私達には、何もする事が出来ない。
見守るしかない。




