第二話 異世界(5)
兵士の服を身に付けた私達は、ミリアムと共にお城に向かった。
途中、幾人かの兵士と出会うが私達が異世界から来た人である事が悟られない様に化粧をした効果もあると思う。
誰も気付かれないままお城に潜入する事が出来た。
ただ、ここからが難しい。
お城の中にいるのは、兵士ばかりでは無い。
兵士より上の層の騎士が存在する。
中に入るには、一種の手形の様な物が必要になってくる。
それが無いとお城に中に兵士とはいえ入る事が出来ない。
私達は、ミリアムの案内で一件の民家に入った。
そこもリクアの兵士たちのよって破壊され、廃屋になっていた。
しかし、ミリアムがそこに案内したのには、訳があった。
廃屋の床に隠し階段が隠されていたのだ。
そこは、暗闇の世界、灯り一つ無い。
手探りで前に進む。
足元に注意しながら一歩づつ慎重に前に進んでいく。
暫くすると明かりが見えてくる。
それは、たいまつの灯りだった。
通路を暗くしているには、それなりの理由がある。
リクアの兵士達に目を欺くためなのだ。
光を感じた私達は、ほっと胸を撫で下ろした。
暗闇の世界は、経験して慣れているのだがやはり、暗いのは、人間の神経を緊張させる。
それは、この世界でも共通なのだろう。
暫く進むとミリアムと同じ様な恰好の小動物がたくさん現れる。
しかし、様子がおかしい。
攻撃態勢と防御の姿勢を取っている。
そこへミリアムが駆け出し、何かを話している。
何を言っているのか全く理解できなかった。
でも、攻撃、防御の体制は、その後すぐに解除され目の前を普通に跳ねていく。
ミリアムの案内で私達は、ある部屋に案内された。
とは言っても相手は、リスほどの大きさ。
部屋に入っても一人が入れば一杯の大きさだった。
美紀「ここは、徹君が入ってくれない。」
徹「この大きさじゃ、仕方が無いね。」
そう言うと徹は、部屋の中に入って行った。
部屋の中では…
ミリアム『お爺様。久しゅうございます。』
徹「お爺様?」
ミリアム『私の祖父です。』
そう言うと、ミリアムの祖父が徹に話し掛けてきた。
祖父「君たちは、人間か?」
徹「えっ…どうして、言葉が話せるのですか?」
祖父「私は、人間から言葉を学んだ。だから、話す事が出来る。随分前になるが人間がこの国を守ってくれた。」
徹「それ…僕たちが初めてじゃないんだ。…お願いです。もっと詳しく話をして貰えませんか。」
祖父「私の名前は、マデル。ミリアムに君たちが来るのを知らせたんじゃ。そして、助けに行く様に言ったのもこの老いぼれじゃ。」
徹「それじゃあ…僕たちがここに来るってわかっていたのですか。」
マデル「そうじゃ。わかっておった。神に導かれてここに来たんじゃ。天聖の神の力を持っておるんじゃろ。君たちは、勇者になって、この世界を救う運命を背負わされておるんじゃ。」
徹「どうして、そこまで知っているんですか。あなたは、いったい…」
マデル「何も聴かんでよかろう…この老いぼれの言う事じゃ…間違いは無かろう。」
僕たちが人間である事もそして、神々の事も全て知っている。
でも、これ以上聴く事は、止める事にした。
辛そうな表情をしている。
それ位に老輩していたのだ。
最後にマデルが口にした言葉は、『迷いし時は、ここに来い』だった。
外に出た徹は、ミリアムと共に次の場所に移動する。
言葉がわからない壁をクリアする為の手立てを考えなければならない。
その為に徹は、ミリアムと共に部屋を移動したのだ。
ミリアム『私達の言葉は、本来人間なら簡単に理解出来る筈なのです。ただ、ここで体を縮めて生活する為には言葉を変えるしかなかったのです。私達と同じ言葉を話すには、あなた方に秘薬を飲んで貰わなければなりません。』
徹「秘薬って、どうすれば手に入るの?」
ミリアム『秘薬は、ここで手に入ります。ただ、使用出来る時間が限られます。』
徹「どれ位の時間なの?」
ミリアム『一時間程度です。ただ、高価で希少な物ですので本当に必要な時だけにして下さい。』
秘薬を手に入れた私たちは、お城の中に入る為の作戦を練った。




