第二話 異世界(1)
何時間が経過したのだろう。
飛行艇の修復が完了してみんなへとへとになっていた。
飛行艇に戻った私達は、ひと時の休息を取った。
そして、これから進むべき道を私達は知らなかった。
どこへ飛行艇を飛ばしていいのかわからない。
そんな不安を抱えたままだった。
闇雲に飛行艇を飛ばしてもそれは、体力を消耗するだけで何にもならない。
目標が無い以上、動く事が出来ない。
優希の魔法力で行くべき道を探ってみた。
しかし、何も出て来ない。
ここに長居する事も出来ないと判断した私達は、止む負えず飛行艇を先へと飛ばす事にした。
その事が大きな誤算になる事い誰も気付く事が出来なかった。
暫く、飛行艇を飛ばすと優希に気配が漂っている事を察知する。
その気配が何かわからなかった。
でも、今は、その気配を追って飛行艇を飛ばすしかない。
飛行艇をその気配に向かって飛ばすに連れて気配は、大きくなってきた。
優希「この気配…何なの?何も無い…でも、物凄い力を感じる。」
理穂「行こう!今は、これしかない!」
飛行艇をその力の方向へ飛ばし続ける。
すると、優希が変な事を言う。
優希「あんなに大きな力が小さくなってる。何なの?これ?もうそろそろこの辺なんだけど…」
急に飛行艇が大きく揺らぐ。
倒れそうになる位の衝撃が走る。
瑞穂「何だよ!何が起こってるの?」
徹「舵が効かない!吸い込まれている!」
三咲「力が入らない。何なの…」
すると、引っ張られる力が急に大きくなる。
優希「力が出ない…神様の力が出ないよ。」
「キャーーーー!!!!」
加速する勢いに気絶しそうな位の重力が掛かる。
そして、そのまま、水の中に着水する様な衝撃が走る。
全員がその衝撃で気絶してしまった。
冷たい水が飛行艇の中に入り込んで来た。
徹「つ…冷たい…どこだ…ここは…」
いち早く目が覚めた徹は、辺りを確認するが光ひとつない真っ暗な世界だった。
ただ、一つ、水の匂いだった。
手の甲に付いた水を舐めてみる。
徹「塩辛い…これは、海?海の水なのか?」
仲間達は、次々と目を覚ましていった。
そして、徹と同じ様にこの場所が地球に似た環境にある事を掴んだ。
ただ一つ、重大な事がすぐにわかってくる。
それは…
優希「力が消えた…全部消えちゃった…どうしよう…」
瑞穂「私もだよ…どうして…力が出ない…」
神の力が無くなってしまっていた。
こうなれば、みんな普通の人間だ。
どうしようもない絶望感が襲う。
外に出てみるとそこは、星空が浮かぶ大海原の中にいた。
夜の暗闇に包まれた世界だった。
ただ、呆然と星空を眺める。
それしか出来なかった。
昼間の世界が来るのか、それとも暗闇に包まれた世界なのか。
それすら、わからない。
言葉も交わす事無くただ絶望感だけがある。
そんな時ただ一人だけ操縦室に残った者がいた。
飛行艇のハンドルを握り、飛行艇を動かそうとしている。
そして、神の力も無い筈なのに想いを込めて必死に動かそうとしている美紀だった。
ただ一人だけ、絶望せずに戦っていた。
すると、不思議な事が起きた。
飛行艇は、飛ばないものの少しづつ前に動き始めたのだ。
ゆっくりしたスピードだった。
でも、着実に前に動いている。
そんな異変に最初に気付いたのが優希だった。
優希「飛行艇が…動いている…誰なの?」
三咲「美紀さんがいないよ。さっきまでここにいたのに…」
理穂「操縦室だ!行ってみよう!」
操縦室に急いだ三人は、暗闇の中手探りで美紀の元に行く。
飛行艇の中は、暗闇の包まれている。
神の力を無くした私達には、灯りさえ点ける事が出来ない。
惨めな感覚に陥る。
それでも美紀の事が気に掛かる。
ほんわかした薄い光が見える。
その姿は、紛れも無く美紀だった。
優希「美紀ちゃん…どうして…飛行艇を動かせるの?」
三咲「私達全員が神の力を無くしたというのにあなただけが…」
そんな言葉に私は、飛行艇の操縦を止める。
美紀「飛行艇が…動いたの?」
不思議そうな顔をする優希や三咲。
理穂「気付いてなかっなかったのか?」
美紀「私…知らない。でも、飛行艇が動いているなら嬉しいよ。今まで何の役にも立てなかったから…」
三咲「美紀さんは、私達の希望よ。唯一神の力が残っている…だから…」
私は、何を言っているのかわからなかった。
記憶があれば、たぶんそんな事はわかっていたんだと思う。
でも、この時の私には記憶が無い。
飛行艇を動かした事さえ気付く事が出来なかった。
美紀「このまま操縦すればいいんだね。だったら私…頑張るよ。」
薄明かりの中、飛行艇のハンドルを握る。
この時の私は、最高に嬉しかった。




