7話「過去」
ようやく投稿することができました!
今後ともお願いします!
「ただいまー」
「おう戻ったか! で、どうだった?」
「予想以上ね。ミオも自分の戦闘スタイルを見出したようだし」
「ほお、たった一回の依頼でそこまでとは! やっぱりなかなか筋がいいな!」
そういってばしばしと叩かれる俺。
「はは……どうも」
ていうか痛い。やめて、ジルバさん力強すぎるやめて。
「あ、そうだ。お父さんこれ」
と言って先ほど受付嬢からもらった用紙をジルバさんに見せるサーシャ。
「森の調査……? なるほど、確かにそろそろ調査しないとな」
そう言ってジルバさんは少し考え込んだ。
ここまで真剣な表情のジルバさんはじめてみたかも……!
まあ冗談ですけどね。仕事中とかも結構キリッとしてるし。
「ジルバさん、そのことで相談があるんだけど……」
「ん? なんだ?」
「俺もそのクエスト、一緒にいっていい?」
「ええ!?」
俺の提案に驚きの声を上げたのはサーシャだ。
まあFランクの俺がDランクのクエストを受けるなんておかしなはなしだもんな。
でも森には一回行ってみたい。
止められてでもいってやる。
「俺は別にかまわんぞ」
「ちょっとお父さん!? ミオはまだ怪我人だしレベルも低いんだよ!? そもそもFランクの冒険者がDランクのクエストを受けるなんて無茶すぎるよ!」
「だからパーティ制度があるんだろ。なあに、ブルーウルフを簡単に倒せるぐらいなら大丈夫だろ」
「でももしものことがあったらどうするの!!」
「お、おいサーシャ、落ちつけって……」
「ミオは黙ってて!!」
えぇー……。
俺一応当事者なんですけど。
この感じ前にもあった気がする……。
「たかが森の調査だろ? そんな危ないことはねえよ」
「そのたかがにDランクも付くの!?」
ああ、あれだ。
こどもを習い事させるかどうかを両親が言い争う感じ。
あれに似てるんだこれ。
こどもの意見も聞かずに勝手に話を進めるんだよな。
ていうかこのままじゃ喧嘩になりかねない。
俺が原因で親子喧嘩でもしたら気まずすぎるぞ。
もうすでに若干その状態だけどさ。
「はいストップ!!」
俺はサーシャとジルバさんの間に割って入った。
「サーシャ、これは俺が決めたことなんだ。頼む、やらせてくれ」
「で、でも!」
「いつも言ってるけどやばくなったらすぐに逃げるよ。音魔法の速さはサーシャも知ってるだろ?」
「確かにあの速さなら逃げれるだろうけど……」
「じゃあ決まり! ジルバさん、お願いします」
「おう! なあに、いざという時は俺も守ってやるから安心しろ」
「……わかった」
それでこの小さな騒動はカタがついた。
無理矢理終わらせたが、サーシャはあまり納得してないようだった。
前から思ってたんだが……サーシャは俺の怪我を心配しすぎじゃないか?
もうほとんど直ってるのにあそこまで心配するだろうか。
それにブルーウルフを狩っている時のあの言葉……。
昔……なにかあったのか?
夜になった。
ジルバさんは仕事の疲れかもう寝てしまっている。
今起きているのは俺とサーシャの二人だけだ。
昔サーシャに何かあったのか……。
聞くチャンスだが聞いてもいいのだろうか。
「……なあ、サーシャ」
「なに?」
「夕方のこと、怒ってるか?」
「少しね。ミオは無茶しすぎ。もうちょっと自分の体を心配して」
そう言うサーシャの声には、言った通り少し怒気が含まれていた。
「それは……サーシャの母親がいないのと、何か関係があるのか?」
「……まあね。何があったか聞きたい?」
「言いたくないならいい」
「別にかまわないよ。もう何年も前の話しだし」
そう言ってサーシャは昔何があったのか話してくれた。
10年以上昔、小さい頃に母親と木の実を積みに出かけていたそうだ。
そのころはまだ魔物も森の奥に住んでおり、森の麓あたりなら稀に出るぐらいだった。
だが、そのときサーシャは、母親とはぐれどんどんと森の奥に入っていってしまったらしい。
案の定、サーシャは魔物と遭遇した。
今のサーシャなら楽に倒せただろうが、当時は武器を持たない小さな少女。
太刀打ちなどできるはずもなかった。
そして魔物に襲われるその瞬間、サーシャを見つけた母親が助けたらしい。
そのままサーシャを連れて街まで逃げたが、母親が倒れた。
サーシャを助けた時に怪我をしていたのだ。
俺と同じように、背中を。
なんとか傷は治したがその時はもう手遅れだった。
そしてサーシャの話は終わった。
「お母さんは……私をかばって死んだの。わたしのせいで……」
「それが冒険者になった理由か?」
「そうだね。お父さんの影響って言うのもあるけど、一番はそれ」
あの時お母さんを救えたらってか?
ばかばかしい。
小さな子供に何ができるんだよ。
……いや。
小さな子供だからこそ、そう考えたのかもしれない。
「そして、母親と似たような傷を負っているから俺がほうっておけないのか?」
「うん……。ミオを見てると、たまにおかさんと重なって見えるんだ。それで、もしミオが倒れたらって思うと……」
そう言ってうつむくサーシャ。
「バーカ」
「…………え?」
「その時とは状況が違うだろ。背中の傷ももうほとんど直ってるし、いざという時はジルバさん、それにサーシャもいるんだろ?」
「そ、そうだけど……」
「なら安心だ。俺がやられそうになったら、たすけてくれよ」
ああ、なんかもう……うん。
俺って慰めるのがヘタすぎる。
途中から自分でなに言ってるのか分からなくなってきた。
「は……はは。あははは!!」
「え?」
な、なんで?
今のって笑うところなのか?
「ま、守ってくれって……普通女の子に頼まないでしょ。あっはははは!!」
ああそこか……。
ていうかサーシャさん、笑いすぎだ。
「いいよ、守ってあげる。もう後悔なんてしたくないから」
まったくこいつは……。
「じゃ、頼りにしてるぜ。俺はもう寝るよ」
「うん、おやすみ」