その4
戦闘開始
街より少し北にある森、通称怪物の森…今回の討伐依頼の場所で様々なモンスターたちが生息している、森である。
そんな森のとある一角にゴブリンたちの巣と呼べる集落があるのだが。
「なぁライムあれ何だと思う?」
「…」
このやり取りはこのゴブリン退治の依頼を受けるたびに、繰り返しているある種の恒例行事となってしまっていたりする。
「なぁ…ライム?」
「っるさい!どうすんのよバカアリス!こんな依頼ばっかり受けてきて…なんで他のが先に来て暴れてんのよ!」
「単独依頼…のはずだったんだけどな~ハハハ」
このゴブリン退治に先客がいた、それはこの世界において有り得ないことなのだ。
「しかも、アレ節制のシトラスじゃん…最悪だわ」
「ガイアもいるな」
ライムの天敵…節制の天使シトラスが住む街の名を、美徳の園…大罪の巣から怪物の森を挟んで存在するもう一つの街、美徳の園…そこは天使と人が契約をし聖法と聖術を使い生活をしている大罪の巣とは真逆の街である。
「はぁはぁガイア!行きますわよ!」
「OK」
「「天にまします我らが神よ!この憎き!怪物に裁きの光を!誓いをここに!契りをここに!」」
「うわぁアレ殲滅聖術じゃん…」
光が向こうの二人から溢れ出し、周りを包んでいく…それはまるで。
「電球…みたいだなライム」
「えぇ、そうねアリス」
そしてゴブリンたちが光に飲み込まれ消えていく…断末魔をあげながら。
だが四人は気づかない…脅威は目の前まで迫っていることに。
「なんとか…なったなシトラス」
「えぇ、なんとかなりましたわねガイ」
二人とも肩で息をしていた。
「そこで見ているのでしょう?ライム…」
「アクア、君もだ…まぁなんだ…でてきたら?」
仕方ないと割り切って前に出て行く二人。
「久し…ぶりねシトラス」
「えぇ、頑張ったかいがあったもの…ですわ、あなたに逢えたのですもの…ライム」
一人は再会を喜び一人は再会を嘆く、これも二人の恒例行事である。
「あははは…」
「なんで二人はここに?」
アクアは見た目が自分と同じくらいの少年…ガイアに質問を投げかけていた。
「あぁ…爺さんの所に武器を頼んでいてさ、取りにいく途中で魔素と聖素の吹き溜まりを見つけて…それで…」
次の瞬間…ドシン!と音がした、この足音は…。
「ニンゲン殺す!」
「待て喰うの間違いダロウガ!」
「ハハハヤッチャウゼ!」
豚…オーク、と、鬼…オーガ、と、石…ゴーレムの群れが目の前に現れたのであった。
「数は…30ですわね」
シトラスは自身の武器である、アダマン鋼を使ったグローブを手に装着をし目の前を睨んでいた。
「いけるか?アクア」
ガイアも自身の武器である、弓を手に一匹の敵の急所に標準を合わせていた。
「あぁ御披露目だ!行くぞ!!」
アクアは新武器を手にして魔力を込めて…力を開放したのだが…。
「「エストック!?」」
ライムとハモってしまった…まさかこんな剣になるなんて、あの技じゃないのか…と少し残念がってしまったが仕方ないとエストックを右手にいつものを背中に…アクアも準備完了、そして。
「行くわよ…アクア、今回のは釘打ち機と言うよりは銃みたいなもんだから…やれるわ!」
「四人なら…アレができるな…シトラス!アクアに風の聖術を!アクア!その剣なら…わかってるな!?」
四人揃った時はいつもこうだ…だから嫌なのよ、とライムはぶつぶつ言っているライムを横目にガイアは更に指示をとばす。
「ライム…右の豚は任せた、俺は左の石をやる」
「鬼はどうすんのよ?ガイア」
「鬼は…なんとかしよう、いざとなれば、シンクロもドロップもある…」
「きましたわ!っシャイニングシールド!」
とっさに防壁を出し防ぐ…危なかったですわねもしライムが怪我をおってしまっていたら…全力で聖術をブッパしてやりましたのに…残念ですわ。
「よくもやってくれたわね!二ードルセット!三点爆裂!(トリプルバースト)」
引き金を引き、三点の急所に一発ずつ当てる…だけのなんてことない技、でも針が違うのよね、今回のこの針は、なんと穴があいてるのよね~注射器みたいに♪。
「血が…トマラナイ?だと…」
ドスンと音を立て崩れいく豚、あたしたちを舐めるからそうなんのよ。
「うぉおぉ!」
俺は雄叫びをあげながら、走り飛び上がった…聖術の加護のおかげで普段よりも高く跳べている、これなら。
「ストラトス、ストライク!」
相手の脳天を突く…頭蓋骨を簡単に貫通し、脳を潰す…相手は断末魔をあげる間もなく倒れていった。
「私達も続きますわよガイ!」
「OK」
「疾風のごとく矢を飛ばし」
「紅蓮の拳を、天に捧げん!」
「ガストアロー!」
ガイアの弓より風を纏った矢が、放たれる…それは真っ直ぐに飛んでいき、石の核を砕き機能を停止させていく。一方シトラスは炎を手甲に纏わせ鬼に向かい左アッパーから右ストレート、ミドルキックと連携を止めない…やがて。
「うぐぅ…」
鬼は倒れていった。
「さて…いつもの行くかな」
アクアがエストックを元に戻し鞘に収めていつもの剣を手に構えるそして。
「いくよライム!」
「りょうかい!」
背中合わせになる二人、そして。
「数が多いから本気でいくわよ…二ードルセット、針鼠の輪舞曲(二ードルラットロンド)!」
針が空中より撃ち出されていく、それは鬼の頭を、豚の心臓を、石の核を…無差別に貫いていく。
「撃ち漏らしは俺が…やる!」
駆け出すアクア…ダマスカスで作られた自慢の剣を手に鬼を斬っていく。
やがて…四人の活躍により、怪物たちは駆逐され、戦いは終わったのであった。
美徳の園…怪物の森を更に北に進めばある天使たちの街