その2
強欲…それは全てを守る盾にして貫く針である
昨日の報酬を受け取りに、ライムは受け付けを訪れていた。
「お帰りなさいライム…首尾はどうだった?」
「どうもこうもないんだけど?」
少し怒り気味に昨日の獲物…豚と鬼の牙と角を受付に渡す、一気に顔面蒼白になっていく受付…まるで。
「コレってまさか…」
「えぇそうよそのまさか…よ?知らなかった…とは言わせないわよ?」
睨みながら言うのは気がひけるけど…仕方ない。
「報酬は三倍…でいいかな?」
冷や汗をかく大人…ここで納得しちゃだめね。
「ダメに決まってるでしょ?」
自身の魔力を使い針をだす…いや針と言う名の杭を、相手に向けて…。
「待て!金貨二十だ!撃たないでくれ!」
仕方ない…か。
「良いわよ…金貨二十で手をうつわ」
小声でクソガキとか聞こえたけど今回は無視してあげる…わ今日は久しぶりに葡萄酒と白パンが食べれそうねフフ。
ちょうどその頃アクアは悩んでいた。
「う~んゴブリン退治にしようかな…」
依頼書を貼ってある掲示板から一枚、取って受付に歩いて行く。
「アリス…今日はコレか?」
いけ好かないオッサンに依頼書を渡す…いつものやりとりだ。
「うん」
バンと受領と書かれた判子をついて俺に渡す…今日の依頼、開始の音であった。
「せいぜいがんばれよアリスちゃん」
「あぁ」
ほんといけ好かないオッサンだ…。
ライムと合流しないとな。
ここでこの世界における魔術と魔法の違いを説明しよう。
魔術…自身の魔力を世界に干渉させ様々なエネルギーに変換させる術ゆえに魔術。
魔法…自身の魔力を世界に干渉させ様々な形を作る方法ゆえに魔法。
ライムは基本魔法しか扱えない…例外として唯一ライムが使える魔術はあるにはあるのだがそれを使うのはまた後々の話。
「今日の依頼は?」
「昨日と一緒のゴブリン退治にしてきた」
カツンカツンと歩きながら話す二人。
「了解、一応報酬は色を(…)つけてもらったから、新しい武器でも買いに行きたいんだけど…」
「良いよ」
門まで歩いたのち門を開けて、いつもの武器屋へ歩を進める二人であった。
街の一角に寂れた武器屋が一軒…ボロボロの店が二人が行っている武器屋だ、しかし侮るなかれ、この武器屋の主人は元傭兵の百戦錬磨の兵で一級品しか揃えない完璧主義者で冒険者や傭兵…果ては、一国の一騎士すらも贔屓にするほどの品揃えの良さが売りの武器屋である。
「「こんにちは」」
「じいさん、剣を新調したいんだけど」
「おじいさん新しいのってある?」
「ん?あぁアクアとライムか…ちょっと待っとれ良いのを入荷したんじゃよ」
ゴソゴソと棚から一本の剣と二丁の釘打ち機を持ち出してくる。
「おじいさんこれは?」
「ライム…お前はたしか本来二丁だったじゃろ?」
「うん…黒と白、ねぇ」
「じいさんこの剣は?」
「強欲の悪魔…特に針鼠と契約しとるお前向きの剣じゃよ、なんせな魔力を流し込むと、鍔のところの宝石が光り出し契約しとる悪魔との協調魔術を合心魔法無しに一撃だけ使えるんじゃよ」
「すごいな、でも宝石は壊れたりしないんだよな?じいさん」
「あぁワシも試したが平気だったぞ?」
目を輝かすアクアを横目に、ライムが主人に質問をしていた。
「ねえねぇおじいさん、コイツは何発まで撃てるの?」
「二十じゃな、そんだけ撃てればだいたい倒せるじゃろ?」
二十…ライムにしたら魅力的な数字ではあったアリスの剣も凄い性能だし、今回は昨日の報酬、全部出しても買えそうにない…と財布を握るライムは考えていた、だが。
「なぁじいさん、コレ全部でいくらになる?」
「金貨」
ゴクリと二人が唾を飲む。
「五枚じゃな」
ニコリと笑うイタズラ小僧のような笑顔を浮かべる主人であった。
その瞬間力が抜けた二人がいた。
「なぁじいさん、傲慢なのもたいがいにしろよ?」
「ふふ…孫みたいなお前たちから金をむしり取ったらそれこそ相棒に怒られるわい、傲慢らしくない…とな」
「おじいさん…ありがとう」
いったん、装備を整えに、家に戻ることにした二人、今日の依頼を成功させるために…戦いは準備から始まっているのだから。
お待たせいたしました