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勇者の余生の過ごし方  作者: 茶々
第一章 勇者再臨編
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第三話 四年と三ヶ月と十六日


皇女は昔を思い出していた。


なんて事のない、遠い昔の出来事だ。


皇女は当時、十六歳のまだ子供だった。


国のために勉強し、魔族と戦うために魔法も覚えた。


皇女は優秀でいずれ勇者と共に魔族の軍を打ち破るだろうとすら言われていた。


皇女は異世界の勇者なんて召喚しなくてもいい、自分達だけで魔族を打ち破ると考えていた。


とある人物が現れるまで。


「姫様!」


「どうしたのウェル?」


皇女はいつものように部屋で魔法の勉強をしていた時、専属の侍女が血相を変えてやって来た。


「魔族が……魔族が城内に侵入しました!」


「魔族!?……それで人数は?」


皇女は相手をまず相手を見極めようとする。


「それが……一人だけだそうです。現在近衛騎士団が捜索中ですが、念のため扉のすぐ外に近衛騎士の精鋭を配置しておきます」


皇女は少し不安になっていた、ただでさえ警備の厳しいこの皇城に、たった一人で侵入して来たのだから。


「分かりました、ウェルも気をつけて」


「はい、それでは失礼します」


侍女は扉から出て行き、皇女は一人だけになった。


皇女は近衛騎士の事を信用している。一人一人が通常の兵士十人分に匹敵する実力を有しており、さらに単体で上位魔法を放つ事が出来る。

仮にこの部屋に来たとしてもきっと守り切ってくれると信じていた。


ーーーードサッ


「ッ!?」


扉の外で何かが倒れる音がする。


皇女は怯える、確実に扉の向こうに何かがいる。手に魔力を溜め、いつでも魔法を放てるようにした。


「………来る」


ーーーーギィィ


扉が開く、それと同時に皇女は詠唱を開始する。


「『炎の神よ、我の力を解放したまえ、炎蓮玉』」


炎の玉が飛んで行き、花の様に爆散する。


「やった?」


煙が徐々に晴れて行く。


「やれやれ、困ったものだ。突然上位魔法を放って来るとは、礼儀を知らんのかこの城の者達は」


「え?」


皇女は混乱していた、自分の見ている光景を信じる事が出来ないのだ。


「あなたは……人間?」


皇女の目の前には自分とまったく同じの人間の青年が立っていた。魔族の様に肌の色が違うわけではなく、角が生えているわけでもない。

青年の歳は皇女と同じくらいで、オレンジ色の髪についた埃を払いながら皇女に歩いて行く。


「君か魔法を放ったのは?」


「ひッ!」


皇女は恐怖する。

得体のしれない青年はローブをたなびかせながら皇女の目の前に来る。


「君かと聞いている」


「は、はい」


皇女はもう自らの命を諦めていた、彼に攻撃した時点で助かる見込みはもうないだろう。


「ふむ、その年齢であの魔力量か……悪くない」


「え?あ、あの」


「どうした?」


皇女は訳が分からなくなっていた。

青年は皇女に何かをするわけでもなく、むしろ褒めている様にも見て取れる。


「いえ……あなたは人間なのですか?」


「ほぅ、それを聞くか」


青年はいい質問をする皇女に興味を持った。

故にその質問に答えてやる事にした。


「そうとも言えるし、違うとも言える」


笑いながら告げる青年の答えに皇女は戸惑った。


「今度はこちらからの質問だ」


「はい……」


「君の名前は?」


「え、えっと……フェリアと言います」


皇女はいつの間にか青年に対する警戒心が薄れ、自らの名前を言っていた。


「そうか、私は『…………』と言う。以後よろしくな」


「その名前、それに………以後ッ!?」


皇女は今まで発した事のない程の声で叫んだ。

青年は耳を抑えながらさらに続ける。


「うるさいな、魔族との戦いに参加してあげるって事だ」


青年の言葉を信じきれない皇女。

すべて任せろと言わんばかりに胸を貼る青年。


この後青年は魔王と戦いそして姿を消した。

皇国は青年に感謝し彼の事を英雄と称えた、そして彼が静かに暮らすと言った言葉に従い彼を探そうとはしなかった。


勇者召喚が行われようとされなければ……







「…………私とした事が、寝てしまったな」


そして皇女は目覚める。


「フェリア様、お体はもう大丈夫ですか?」


「ああ、すまない、寝ていた」


「もう、やはり疲労が溜まっていたんじゃないですか」


皇女……フェリアは申し訳なさそうな態度をとる。


「すまない、カーテンを開けてくれるか」


「え、えーと……」


「どうしたの?」


「いえ……とにかく覚悟はしておいて下さい」


何を言っているのか分からないフェリアは頭をかしげる。


ウェルがカーテンを開け、外の景色が露わになった。

フェリアが窓に近づき見た外の光景とは、街の至るところで煙が上がり、騎士達がせわしなく屋根の上を移動している人影を追っていた。


「……………」


「えーと、現在近衛騎士団が城下町で確認したネロ様を追跡中との事です……」


屋根を走る人影は常人ではあり得ない速度でこちらに向かって真っ直ぐ走って来ている。


もっと正確に言えば、真っ直ぐ“フェリア”の元に走って来ている。



♢ ♢ ♢



さて、まずは状況確認だ。


確認するまでもないか……近衛騎士団に囲まれて時計塔に避難している。


実に簡潔で分かりやすい説明だ、状況はよくないけど……どうも俺がこの国に来ると騎士達に追われるんだよな。


騎士の数はあれから増えて今は二百と言った所か、まだ俺の位置を把握していないみたいだから隠れながら進めば戦闘は避けられそうだ。


問題はカルデアさん何だが何処に行ったんだ?

……何か後ろから殺気を感じるんだが。


「ふふふ、逃がさんぞ死霊使い」


「出来れば見逃して欲しい」


この人本当に怖いな、前に来た時にはこんな人いたっけ?


「残念ながらあなたに構っている暇は無いんですよ」


「くッ!?」


割と頑丈な拘束魔法をかける、相手が女性ということもあり威力は抑え目、こう見えても俺は紳士なのだ。


そのまま時計塔を落ちる様に落下して行き、広場に降り立つ。


ちょっと周囲の目が痛いかな、気にしてないけど。


城の位置は、東に二キロと言った所か、建物の数を考えると面倒な距離だな。


そうだ、屋根の上を行けばいいんだ。


足に魔力をため近くの屋根に跳躍する。うん、気持ちいい、森の中では人工物のあるところを移動するなんてなかったからな。


騎士団達はって、あれ?何か俺のところに集まって来てない?ああ、広場が騒がしくなればそれは集まって来るよな。


これは面倒だ、何か人数増えてるし、俺が何したって言うんだ。


とか言ってる間に騎士達が屋根を登り出したな。今は考えるより逃げるか、こうして見ると怪盗とかの気持ちが分かるな、屋根を走るって少し憧れてたりするんだよね。


身体強化すれば皇城に着くまで一分って所かな。


よ〜い…ドン!。


「ネロ様!お待ち下さ……」


何か最後に近衛騎士が俺の名前を読んだ気がしたが気のせいか?気のせいだろうな。


徐々に近づく皇城、よく見ると城の窓の一つが開いた、そこに見えた顔は忘れもしない……俺のために命さえも懸けてくれた人物。


その名は……


「フェリア!!」


「うわッ!?」


顔いっぱいに広がるフェリアの驚いた顔。


「何年振りか忘れたが久しぶりだな!」


「ネ、ネロ?」


俺との再会にフェリアも涙を隠せない様だ、潤んだ瞳と目が会う。


「俺も懐かしいぞフェリア!ところで何故、拳に魔力を溜めて居るんだ?」


「な、何年振りかですって?…………四年と三ヶ月と十六日振りよバカーーー!!」


「うおッ!?」


フェリアの強化された拳で窓から吹き飛ばされ地面に向かって落下中です。


感動の再会って命懸けでするもんだっけ?





感動の再会ってどう書けばよかったんでしょうか?


感想お待ちしております。

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