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満魔に生きる  作者:
エリエイア、八歳
13/15

エリエイアと避暑の旅②

 そして夕飯を食べた後のサリアナ、エリーゼ、エリエイアは、揃ってお風呂に入っていた。


「気持ちいい? エリィ、エリーゼ」

「私は気持ちいいなぁ。エリィはどう?」

「ちょっと熱い……」

「あらら。でも、もうちょっと体を温めなくちゃね」

「熱いー」

「もう少し我慢」


 体を洗い、髪も洗ってピカピカになった三人は、揃って湯船につかっていた。湯船に貯められた湯の温度は、いつもエリエイアがアイジェリア公爵邸で入っているときの温度よりも若干高かった。そのため、エリエイアは熱いと言って、早くあがりたがるも、サリアナが止めた。


「エリィ。後五十数えたら上がってもいいわよ」

「ホントっ!? いーち、にーぃ………」


 そして早く上がりたがるエリエイアに、サリアナはにっこり笑顔で告げると、エリエイアは嬉しそうにほほ笑んで数を数えはじめた。

 よほど早く上がりたいのか、エリエイアの数を数える速度は、若干早い。が、それに気が付いているサリアナとエリーゼは、何も言わずに数を数えるエリエイアを優しく見つめていた。


「よんじゅーく、ごーじゅっ! 母様、上がってもいい?」

「ええ。じゃあ、上がりましょうか。エリーゼはどうする?」

「私も上がる。エリィ、上がったら湯冷めしないようにきちんと拭いて、髪を乾かさなくちゃね」

「うん!」


 そしてお風呂から上がった三人は、待ち構えていたメイドたちに徹底的に世話を焼かれ、しっかりと髪も乾かしてもらった後、リディアスたちの待つリビングに来ていた。


「にいさまー!」

「お風呂は、気持ちよかった? エリィ」

「うん! ぽっかぽか!」

「ホントだ。エリィがあったかい。じゃあ、父様。僕らも入りましょうか」

「そうだな」


 そしてお風呂ですっきりしたエリエイアは嬉しそうにリディアスに飛びつき、飛びつかれたリディアスも嬉しそうにエリエイアを受け入れた。

 が、その後すぐに交代でお風呂に入ることにしたのか、リディアスは父に告げてエリエイアと別れ、お風呂へと向かう。置いて行かれたエリエイアは、若干しょんぼりしている。


「ほら、エリィ。お茶、飲みながらリディたちを待ってようか」

「うん………」

「ほら。エリィ用に甘くしてもらったから」


 しょんぼりとしたエリエイアにエリーゼはとにかく話しかけ、エリエイア用に甘くしてもらったお茶を渡すが、エリエイアの反応は薄い。

 ちなみに、この反応の薄さは、リディアスが戻ってくるまで続いていた。が、お茶はきちんと飲んでいた。


「兄様!」

「うわ! エリィ、体が冷えてるよ? このままじゃ湯冷めしちゃう!」

「おや、本当だね。エリィ、湯冷めする前に今日はもう寝なさい」

「まだ大丈夫!」

「ダメだよ。エリーゼ、一緒に寝たらどうだい? エリィも、エリーゼと一緒なら寝るんじゃないか?」

「そうね。エリィ、姉様と一緒に寝ようか」

「うん」

「じゃあ、おやすみなさい。父様、母様、リディ」

「おやすみ、エリーゼ、エリィ」

「おやすみなさい、二人とも。……リディも早く寝なさいね」

「そうですね。おやすみ、姉様、エリィ」


 その後、お風呂上がりのリディアスに飛び込んだエリエイアは思った以上に体が冷えていたのか、ガートランドに寝るよう促され、エリーゼと共に宛がわれた部屋へと向かう。

 そして、メイドがエリエイアを寝巻に着替えさせ、ベッドに乗せるとすぐに、エリエイアはうとうととし始めた。が、エリーゼが来るのを待っているのか、頑張って起きている。


「エリィ、眠たいなら寝ていいよ?」


 その様子に気が付いたエリーゼは、着替えながらエリエイアにそう告げるも、エリエイアは聞いてはいるが、聞き入れはしない。頑張って起きていた。

 が、着替え終えたエリーゼが同じベッドに乗り、きれいに毛布を着こむとすぐに、エリエイアからは健やかな寝息が響く。


「よっぽど眠たかったんだね。ゆっくりお休み」


 そんなエリエイアの頭を一撫でし、エリーゼもゆっくりと眠りに落ちて行った。


 ちなみにこの様子は、後から様子を見に来たガートランドとサリアナによって、しっかりと見られていた。


「ふふ、二人ともぐっすり寝て、可愛い」

「そうだな。さすがは、俺とサリアナの子だ」

「うふふ。さ、後はリディも寝てるか見に行きましょうか」

「そうだな。さすがに、起きていたらそろそろ寝かせなくては」


 ガートランドとサリアナはそう言って眠る二人から目を離して部屋を出、リディアスに宛がわれた部屋へと向かう。

 ちなみに、リディアスは両親が近づいてくる足音を聞きつけて、しっかりとベッドに入っていたそうだ。だが、明かりだけは消す余裕がなかったらしく、部屋は明るいままであったため、それだけはガートランドたちに消されることとなった。

 そして翌朝、注意を受けた。


 そして朝食を食べ、少し休憩をはさんだ後、ガートランドたちは再び馬車に乗り、出発する。予定通りに行けば、今晩には目的地であるフォティナにつけるはずだ。

 ちなみに、この馬車のなかでもやはり子供たちは眠っていた。まず最初にエリエイアがうとうととしていたかと思うと、糸が切れるように眠りに落ち、エリーゼやリディアスがそれに続いたのである。


「こうやって寝てると、エリーゼも本当にまだ子供ね」

「エリィやリディが寝ているから、自分も眠たくなったんだろうな。それまでは、エリィの面倒を見ていてくれていたし、疲れたんだろう」

「でしょうね。エリーゼもいい子だから」

「サリアナも寝ていても構わないぞ? ………昨日、無理をさせすぎたしな」

「………分かってるなら、もう少し抑えてもらえる? さすがに、朝は起きるのが辛かったわ」

「す……すまない。久しぶりだったもので、つい……」


 そうして子供たちが眠った馬車内では、サリアナとガートランドが、昨晩のガートランドの暴走を語っていた。

 昨晩、旅行ということで箍が外れたガートランドは、若干無理やりサリアナと体を重ねていたのである。そしてその疲れから、サリアナは少しぐったりとしているのである。


「だから、少し寝ているといい。エリィも、横にサリアナがいれば起きても泣いたりはしないだろう」

「そうね。じゃあ、誰かさんのおかげで疲れたし、少し休むわ。子供たちが起きたら、お願いね」

「任せろ。………お休み、リィア」


 そうして疲れ切っていたサリアナも眠った今、馬車の中で起きているのはガートランドだけだった。昨晩、異様に励んだ割に、ガートランドは疲れた様子を見せず、無駄にぴんぴんしている。

 そんなぴんぴんしているガートランドは動いている馬車の中で上手に体を動かし、順に子供たちやサリアナの寝顔を見つめる。

 が、エリエイア、リディアス、エリーゼ、そしてサリアナの順になって、まだ目が覚めていたらしいサリアナには阻止された。


「ガート。邪魔」

「ま、まだ寝ていなかったのか」

「ええ。子供たちの寝顔を見るのはいいんだけど、鼻息が荒いわ。それじゃ、子供たちも起きるわよ」

「う! 気を付けよう」


 顔を覗き込んでいた時のガートランドは異様に鼻息が荒かったらしく、サリアナはそれをしっかりと注意していたのだ。そして、再び眠りに落ちる。

 そして愛する妻の注意を受けたガートランドは、鼻息に関して徹底的に注意しつつ、子供たちの寝顔を見つめていた。

 が、今度はエリエイアが目を覚まし、目の前にいるガートランドの頬を、小さな手でぺしりと叩いた。


「うるしゃいのーぅ」

「ああ、ゴメンよエリィ。またお休み?」

「う? とう、しゃま? ねむい……」

「眠たいなら、まだ寝ようね。お昼まではまだ時間があるよ」

「ん………。………かあしゃまは?」

「母様も寝ているよ。エリィも一緒にお休み?」

「うん………」


 ガートランドはぺしりと叩かれた手を一度ひっこめ、その頭の上に手を置く。そして、よしよしと撫でながら、もう一度寝るよう促した。

 そして、眠るよう促されたエリエイアは、横でサリアナが寝ているのを見て安心したのか、サリアナのほうに寄りかかって、再び眠りに落ちて行った。


「ふふ、寝たな」

「………父様、怪しい」

「起きていたのか、エリーゼ。怪しいとはなんだ。子を可愛がるいい親と言え」

「思えません。鼻息が荒いんです」

「う! サリアナにも言われたのだが、まだ荒いか?」

「荒いです」


 そんなエリエイアを優しく見守っていたガートランドに、目が覚めたらしいエリーゼから、冷たい言葉が飛んできた。

 その言葉にガートランドはしっかりと言葉を返すも、またも返され、黙り込むことになる。

 その話声が聞こえていたのか、今度はリディアスが目を覚まし、エリーゼやガートランドのほうを見る。


「何、話してるんですか。父様、姉様」

「ああ、起きたのね、リディ。いや、エリィの寝顔を見てる父様の鼻息が荒くて、怪しかったのよ」

「父様、そんな目でエリィを見ないでください。エリィが変なことを覚えたらどうするんですか」

「え、おい!? リディまで何を言う」

「最近の父様、少し危ないですよ。変人みたいです。こんな父様嫌ですよ」

「ぐはぁっ!」

「父様、さいってい」

「ぐふぉぁぁっ!」

「…………うるさいわよ、ガート。何言ってるの」


 リディアスとエリーゼの姉弟が手を組んで父に言葉の攻撃を加えていると、その声で目を覚ましたらしいサリアナが、冷たい目をガートランドに向ける。

 そうしてサリアナが動いたためか、そのサリアナに寄りかかっていたエリエイアの目も、ぼんやりと開かれていた。


「あら、エリィも起きちゃったのね。ほーら、エリィ。一緒に寝ましょうね」

「うん……」


 だが、そのぼんやりと開かれていたエリエイアの瞳は、サリアナが再度眠りを促したことで再び閉じられる。

 そして、エリエイアが再度眠ったことを確認したサリアナは、再び氷のように冷たい瞳をガートランドに向けた。


「ガート。あなたは、何があってエリーゼたちにいろいろと言われているのかしら?」

「あ、いや………」

「ねえ、ガート?」

「その………」

「エリーゼ、リディ。あなたたちは、また寝てなさいな。母様は、父様と大人のお話があるからね」

「あ、はい………」


 そして、エリーゼとリディアスが完全に寝入ったころ、馬車の中ではサリアナによるガートランドへのお説教が開始されていた。


 お昼時。子供たちが目を覚ました頃。

 ガートランドはげっそりとしており、反面、サリアナは随分とすっきりした顔をしていたという。


今回で領地に着かせたかったんですが、無理でした!

次回で到着できればいいなぁと思いますが……


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