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満魔に生きる  作者:
エリエイア、八歳
11/15

エリエイアとサリアナの一日

二話投稿。

前にもう一話あります。


 エリエイアが熱を出した翌日、あらかた熱が下がったエリエイアは、サリアナにしっかりと部屋に閉じ込められていた。事実、エリエイアの部屋は外側から閉じられ、開かないように塞がれていた。

 エリエイアが部屋から出ようと扉に近寄って、扉を開こうと手をかけても、その扉は開かない。外側から開かないように塞がれているから当然なのだが、その事実にエリエイアは焦っていた。


「父様! 母様! 開けてぇ!!」

「あら、目が覚めたんですね、エリィ様。少々お待ちください、お呼びしてまいります」


 焦ったエリエイアはとっさに、扉をたたき、両親を呼ぶ。その声を聞き届けたメイドが、ゆったりとした口調でエリエイアに話しかけ、そして主であるガートランドやサリアナへ報告に向かった。

 それからすぐにガートランドとサリアナが揃ってエリエイアの部屋へとやって来、その扉が開かれた瞬間にエリエイアが入ってきた二人に飛びついた。………というか、ガートランドにタックルをかました。


「とーさまぁ、何で、閉じ込めるの? ねぇ、何で? 何で? 何で?」

「え、エリィ? さすがに重たいんだがな」

「ねぇ、何で?」


 結果、いきなりタックルをかまされたガートランドは呻きつつ、オブラートに包みながら文句を言うのだが、エリエイアはそれを聞かず、とにかく疑問を消し去ろうと質問を続ける。

 そうしていつまでも続く質問に辟易したのか、ガートランドが一つため息をついて、口を開いた。


「そうしなくては、エリィは無理をするだろう。だからだ」

「無理しないよ?」

「無理、するじゃない。ほら、エリィは父様から離れて、ベッドに横になろうね。また、万全じゃないんだから」

「大丈夫! 元気だもんっ!」

「エリィはそう感じるかもしれないけど、まだ熱は下がり切ってないんだからね。ほら、いい子だから横になりなさい」

「いーやー!」


 その後、しっかりとエリエイアを寝かしつけるべく、ガートランドにしがみつくエリエイアを離そうとするサリアナだが、エリエイアは思いのほか強い力でガートランドにしがみついていた。

 その結果として、ガートランドから離すことを諦めたのか、ガートランドごとエリエイアをベッドに押し込む手に出た。その際、ガートランドが何か反論しようとしていたのだが、それはサリアナが笑顔で黙らせた。


「サ、サリアナ?」

「あら、なぁに? ガート」

「俺は、今日、することが………」

「だって、ガートから離れないんだもの。なら、一緒に寝てちょうだい」

「父様、一緒に寝る?」

「ほら、エリィも望んでるでしょ」


 そうしてサリアナがガートランドを黙らせた結果、ガートランドはエリエイアを抱き上げてベッドに上がり、一緒に横になることになった。まぁ、ガートランドはエリエイアが寝入ってすぐに抜け出したのだが。

 ちなみに、ガートランドが抜け出したことによって、次に目を覚ましたエリエイアが心底しょんぼりとした表情を見せるのだが、その目はじとりとした目を見せたサリアナによって黙らされた。そしてガートランドはエリエイアを宥める任務を与えられることとなった。


「エ、エリィ?」

「父様、そばにいてくれなかった。しくしく」

「あああああ! すまん! すまない、エリィ! だが、ここにいるからな。な?」

「父様と、一緒に寝たかったな。………久しぶりに」


 エリエイアは六歳ごろまでガートランドやサリアナと同じ寝室で眠っていた。だが、最近はずっと一人で眠っていたからか、ガートランドと一緒に寝たかったのだ。だが、一緒に横になっていたはずのガートランドは、目を覚ますといない。それが、エリエイアを悲しませたらしい。

 結果、しょぼーんとしたエリエイアと、必死にそれを宥めるガートランド。そして二人を優しく見守るサリアナの姿が、この部屋では観測されていた。


「………母様、一緒に寝て? 父様、いなくなっちゃった。寂しい」

「いやいやいや! 父様、いるからね!?」

「ねえ、かあさまぁ」

「ふふ。いいわよ。そうね、ガートはいなくなっちゃうもんね。じゃあ、母様と寝ましょうね」

「わぁい! 母様、大好き!」

「エリィは可愛いわね。さあ、二人で、一緒に寝ましょうね」


 だが、ガートランドが必死にエリエイアを宥めるも、エリエイアは暗に父、ガートランドを無視し、母、サリアナに甘えに向かう。

 そして甘えられたサリアナも、ガートランドを無視し、二人で、を強調してエリエイアの横たわるベッドに、自身も横たわった。

 それからついでに、ガートランドに笑顔で話しかける。


「ガートは、することがあるんでしょう?」

「え? あ、いや。だが………」

「ねえ、することがあるって、言ってたわよね?」

「だ、だがな、サリアナ?」

「ねえ、ガート?」

「はい。仕事します」


 結果、暗に出て行けと訴えられ続けたガートランドはその勢いに負け、部屋を去ることとなった。

 そしてサリアナはエリエイアと共にベッドに横たわり、エリエイアはそれを笑顔で受け入れる。


「母様、好き」

「まあ、こんなときに愛の告白? でもダメよ、エリィ。そんな簡単に好きなんて言っちゃ。その言葉に勘違いする馬鹿もいるんだから」

「ばか? 何で?」

「母様やエリーゼ、リディたちにならいいけど、ほかの人には言ったらだめだからね」

「うん?」

「本当に分かってる? んもう、母様心配だわ」


 そうやって一緒に寝てくれる母が嬉しいのか、エリエイアはサリアナに抱き着いて、好きと正直に告げるが、サリアナはその言葉をそう簡単に他人に告げないよう諭す。が、エリエイアは善くわかっていないのか、返事が疑問形だった。

 ちなみに、サリアナの言ってもいいリストにガートランドは含まれていない。ガートランドにエリエイアがその言葉を告げるとどうなるか、サリアナにはよくわかっているからだ。

 そうして話している間に、エリエイアは眠たくなってきたのか、うとうととし始めた。


「エリィ、眠たくなった?」

「うん………。眠い」

「まだ調子が万全じゃないからね。ほら、おやすみなさい。母様、父様みたいにいなくなったりしないから」

「うん……、やく、そく………」

「ええ、約束するから。安心して、寝てなさい」

「ん………すぅすぅ」


 その後、サリアナからよしよしと頭を撫でられたエリエイアは、それの気持ち良さも相俟ってか、どんどんと瞼が落ちていく。

 そして、サリアナが頭を撫でるのをやめたころには、エリエイアは完全に夢の世界の住人となっていた。


「ゆっくり寝てなさいね、エリィ。ふふ、いい子いい子」

「むい………」

「―――――ところでガート? いつまでそこで覗き見するつもり?」

「ひょっ!?」

「ばれていないと思っていたの?こっそりのぞくくらいなら、部屋に入ってきてちょうだい」

「う! ………エリィは、寝たのかい?」

「ええ、見てのとおりね。起こしちゃ悪いから、静かにしててね」

「ああ。…………ぐっすり眠っているな。可愛い寝顔だ」


 そんなエリエイアを優しく見守っていたサリアナだが、あるとき、不意に声を冷たく、低く、隠れているであろうガートランドに出てくるよう告げた。そしてガートランドは言われた通り姿を現す。

 それからは、サリアナはベッドに横になったまま、ガートランドはベッドの傍にある椅子に腰かけた状態でエリエイアを見守り続けていた。


 その後、目を覚ましたエリエイアは横にサリアナがいることに喜び、傍にガートランドがいることに驚いたが、それでも嬉しそうにほほ笑みながら、退屈だからと本を読んでとねだった。


「だって、退屈だし、眠たくないもん」


 また寝るように言われたエリエイアはそう言って眠ることを拒否し、潤んだ瞳でガートランドとサリアナを見つめ、見事に二人を陥落させた。


「まったくもう、眠たくなったら、すぐに眠るんだよ。それに、調子が悪くなったら、すぐに言うこと。そして、寝ること。約束できるかい?」

「うん!」

「なら、何か本を取って来るよ。サリアナ、その間、エリィを頼むよ」

「ええ。エリィ、父様が本を取りに行っている間、エリィは母様とベッドの上で待ってましょうね」

「うん!」


 そして、本を読んでほしいというお願いを聞き届けられて嬉しいエリエイアと、その嬉しさにほほ笑むエリエイアを優しい瞳で見つめているサリアナとガートランド。

 その後、ガートランドはエリエイアからのおねだりである本を取りに向かい、その間、サリアナはエリエイアと共にベッドの上で待つこととなった。



「さて、本を取ってきたよ。エリィのベッドで読もうか?」

「うんっ!」


 そうして、本を取って戻ってきたガートランドはそう言って、空いていたエリエイアのベッドの脇に腰かけ、本を開く。そうして読みだそうとしたのだが、その役目は反対横から本を見ていたサリアナに奪われた。


「昔々、あるところに………」

「サリアナっ!?」

「なぁに、ガート。黙んなさい」

「あ、いや………」

「そう。ならいいわ。待たせてごめんね、エリィ。さ、続きを読みましょうね」


 結果、ガートランドは持っていた本のページをめくる役を押し付けられ、話自体はサリアナがどんどんと読み進めて行った。途中、エリエイアからの質問に答えようとするも、それもすべてサリアナが笑顔で答えてしまうため、ガートランドは相当退屈であった。

 結果、本をめくるという役目がなければ完全に寝付いてしまいそうな状況に陥り、…………そして、いつしか眠ってしまっていた。

 ガートランドが眠ってしまったことに気が付いたのは、サリアナだった。読んでいて、ページがめくられないからとガートランドを見てみると、眠ってしまっていたのだ。


「ふふ、父様、寝ちゃったみたいね。エリィも、父様と一緒に寝たら?」

「母様も、いる?」

「そうね。三人で、休みましょうか」


 そう告げるも、エリエイアに睡魔は襲い掛からない。そのためか、エリエイアは横にはなっているが、ただガートランドにしがみついた状態のままだった。

 ちなみにサリアナは、反対側からエリエイアを抱きしめている。


「エリィ、眠れない?」

「うん。眠たくならない」

「ふふ、ガートったら、ひどいわねぇ。我先に寝ちゃって」

「父様も、疲れてたんだよね。なら、仕方ないよ」

「あらら。エリィってば、いい子。明日、調子が悪くならなかったら、明日の夕飯はエリィの好きなものを作らせましょうね」

「ホント!?」

「ええ」

「やったぁ!!」



 そして翌日の夕飯には、見事にエリエイアの好きなものが並んでいたという。それにエリエイアが歓喜の声を上げたことは、もはや言うまでもない。


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